■筆者の居住する安中市北野殿地区には、4カ所の共同墓地が有り、それぞれのマケごとに所有地が分かれています。マケというのは、本家とその親族分家や奉公人分家,また直接分家だけでなく間接分家(分家の分家,すなわち孫分家とか又分家と呼ばれた家)をも含む組織集団のことで、農山漁村社会でマキ、マケ、マツイ、カブウチ、イッケ、クルワなどとも称されており、商人社会ではノーレンウチなどとも呼ばれていたもので、社会学、民族学、民俗学、社会人類学によっては同族団(同族集団、同族団体、同族組織)と呼ばれています。
筆者の所属する小川マケが保有する墓地は、村の北側の北浦地区に所在しており、東邦亜鉛安中製錬所との境界から僅か50mの地点にあります。毎年お盆前の8月の第1日曜日の早朝に墓地清掃のための共同作業が行われています。
年々猛暑となるため、以前から作業開始時間が朝6時と決められており、筆者が10分前に現場に行くと、既に過半数のメンバーが作業を始めていました。
↑昇り始めた朝日を背に進入路の清掃作業をする住民ら↑
↑中央部の三叉路から右側(東側)に伸びた道路の先に見える小区画が共同墓地↑
Google Mapでもお分かりのとおり、中央部に見える白い2つの点付近にある安中製錬所の主排気塔(煙突)から120mしか離れておらず、製錬所の境界フェンスからは50mの距離にあります。したがって、煙突から排出される重金属を含む降下ばいじんに長年晒されているため、土壌中のカドミウム等の重金属の含有量は極めて高く、現在、汚染土壌の排客土と合わせた工場周辺の農地(畑)の区画整理方式による事業が、公害裁判和解後の平成7年度から行政主導で進められていますが、26年が経過した今も、遅々として進捗していません。そのため、周辺で栽培した作物の可食部中のカドミウム量が高いままで、耕作したくても安全な作物の栽培が困難だとして、耕作をあきらめる土地所有者も多く、荒れ放題の土地も少なくありません。
東邦亜鉛はそうした農地を所有者から二束三文で買い上げて、周辺に土地を広げて来ており、現在は55ヘクタールにまで拡大しています。小川マケの墓地も、村の北西部にある大塚マケの墓地も、その周辺は、東邦亜鉛の子会社の安中運輸の名義で買収が進んでおり、このままですと、ますます周囲が荒れ放題になり、東邦亜鉛側の思うつぼとなるため、早期に排客土と区画整理の事業を進める必要がありますが、コロナ禍を理由に、行政の取り組みはますます腰が引けている状況です。
■さて、そうした周辺状況のなかで今年も行われた共同作業ですが、主な作業は、東邦亜鉛安中製錬所のフェンスから墓地迄の進入路の両側に繁る笹薮や雑草の除去と、墓地周辺の笹薮や灌木と、墓地の南側の駐車スペースの確保のためのコサ切りや草刈りです。
↑両側から張り出した笹薮や雑草を除去する。↑
↑年々、未知の両側の笹薮や雑草が繁茂してくる。道路の右手に見えるのはゴミの不法投棄禁止の看板など。↑
↑右奥の木立の間から安中製錬所の主排気塔の先端部が見える。朝のうち、うっすらと灰色の排ガスが立ち上っていたのが見えた。↑
↑東邦亜鉛安中製錬所のフェンス沿いの墓地進入路。↑
2時間ほどの作業で、見違えるほど整備されましたが、年々路面の劣化や道路脇の笹薮の拡大により、作業の難度が増しており、それに逆比例して、参加者の高齢化が進んでおりますが、毎年、お盆で帰省する親族らのことを思うと、草刈り機を持つ手にも力が入ります。
もっとも、今年も昨年に引き続きコロナ禍にあるため、遠くからわざわざ帰省してくれる親族が果たしてどれほど期待できるのかは未知数ですが、いずれお世話になる場所ですので、可能な限り、墓地の維持に必要なこの作業に参加し続けることになりそうです。
↑すっかりきれいになった墓地への進入路。東邦亜鉛のフェンスからはみ出したコサ切りも行った。東邦亜鉛から、あとでクレームが来るかもしれない。↑
↑木立の影の部分は落ち葉や湿気で親友路の中央部に苔が分厚く繁茂しており、路面の劣化が進む。↑
↑重車両が通ったためか、路面が一部陥没したり、亀裂が入っており、そこに泥や土が堆積して雑草が路面に繁茂しつつある。こうした道路が、ごみの不法投棄を助長しかねず、頭の痛いところだ。↑
↑道路の路面の亀裂に繁茂していた雑草は、紐を使った草刈り機で対応した。↑
↑墓地周辺の樹木がどんどん成長し、日影が増える。猛暑の中での墓地参拝時には涼しいが、落ち葉や湿気で路面の劣化が促進されてしまう。↑
↑毎年笹薮を伐採しても、次々に笹が茂ってくる。道路の亀裂も年々酷くなっている。↑
↑午前8時を過ぎると、気温もどんどん上昇した為か、主排気煙突からの煙も目立たなくなった。↑
↑さきほどの路面陥没による損傷個所。窪んだ箇所に泥が堆積して雑草が茂るようになり、作業の負担が年々増している。↑
↑ゴミの不法投棄を禁止する看板。↑
↑犬の散歩時のマナー啓発看板もある。↑
↑お盆が迫る中、すっかり整備された墓地への進入路。コロナ禍の中であっても、やはりお盆のお墓参りは季節の節目として欠かせない行事だ。↑
【ひらく会情報部】
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