市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【一太県政】県職員の士気を損なう不明朗人事の温床を絶つべく提訴した住民訴訟に9月7日敗訴判決!

2022-09-11 00:57:51 | 県内の税金無駄使い実態

■群馬県庁に4月に入庁したフレッシュマンの職員の皆さんは1・2・3類合計で200名以上に上ると思いますが、半年が経過した現在、公務員としてのモチベーションは依然として強く維持されておられるでしょうか。

 公務員は国や自治体に従事する職業で、その活動資金(給与等)は税金で賄われており、営利を目的とせず、社会への奉仕が仕事となっています。一方で民間は、営利を活動の目的としており、所属する企業の営利のために仕事をしています。そのため、民間に比べると、公務員の仕事は定型的で、可もなく不可もなく、そつなくこなしていれば、一定の評価が得られるようです(筆者の感想です)。

 ところが、群馬県庁内では、いわゆる高学歴で入庁した「上級職員」と呼ばれる一部エリート職員らがおり、彼らはその特権意識から強い結束を誇っていますが、それが行政の効率化に活かされるのであればともかく、私物化に走り、とくに人事面でエコ贔屓を生む温床になっています。

 こうした、群馬県行政の歪んだ人事管理について、当会は、2019年度から着目してきました。とくに当時、県庁3階で起きていた不透明な実態に着目し、独自の調査を重ねました。そして、2020年2月28日に住民監査請求を群馬県監査委員に提出したところ、いつもの補正命令もないまま、突然同年3月17日に門前払い同然の却下通知が送られてきたため、同年4月16日に訴状を前橋地裁に提出しました。以来、コロナ禍の中、9回の弁論を重ねて、令和4年4月13日の第10回弁論で人証尋問が行われ、結審し、当初8月10日13時30分に判決言渡しの予定でした。

 しかし、その前に裁判所から「都合で判決期日を延期する」と連絡があり、その後「判決日は9月14日とする」旨の連絡を受けたと思っていました。ところが、実際には9月7日に判決言渡しとなっていたことを、9月6日にオンブズマン事務局に届いた判決書で知りました。

 なお、この問題については、以下のブログ記事も参照ください。

○2020年2月28日:【一太県政】一部職員が私物化する群馬県庁の不明朗人事の弊害と、障害をもつ特定職員への過度な優遇実態
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/02c48c763d5cd4ea043a8796ec6942eb

○2020年3月18日:【一太県政】一部職員が私物化する県庁不明朗人事にノーを突き付けた住民監査請求に対し監査委員が却下!
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/39f79caea3a76eda4612e9e87bb4d622

○2020年4月23日:【一太県政】一部職員が私物化する県庁不明朗人事にノーを突き付けた住民監査請求棄却で住民訴訟提起!
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/f13d77ade5c839a3b64a4987dbb320c2

○2020年9月21日:【一太県政】一部職員が私物化する県庁不明朗人事を巡る9.30住民訴訟初公判を前に届いた県の答弁書
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/6a6e13b9ea8f6c5160c8d12b62108479

○2021年10月22日:【一太県政】一部エリート上級職員が私物化する県庁不明朗人事を巡る住民訴訟のその後の顛末報告
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/41591e867b0705c353d9531c0f681b23

■では、9月9日に当会事務局に届いた前橋地裁からの判決文を見てみましょう。

*****判決文*****
令和4年9月7日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 橋本勇一
令和2年(行ウ)第5号 損害賠償請求事件
口頭弁論の終結の日 令和4年4月13日
              判         決
   前橋市文京町一丁目15-10
       原        告    市民オンブズマン群馬
       同 代 表 者 代 表      小  川     賢
   前橋市大手町一丁目1番1号
       被        告    群馬県知事 山本一太
       同訴訟代理人弁護士     新  井     博
       同 指 定 代 理 人      中  島  高  志(当会注:人事課長)
       同                高  橋  智  之(当会注:人事課次長)
       同              佐  藤     裕(当会注:人事課企画係長)
       同            柿  沼  輝  信(当会注:教育委員会総務課長)
       同            角  田  毅  弘(当会注:教育委員会総務課次長)
       同            本  山     晃(当会注:教育委員会総務課秘書人事係長)
              主         文
    1 本件訴えのうち、福島金夫が平成21年度に松本高志を教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命したことについて、同人に対し、1020万円及びこれに対する平成22年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求するよう求める部分を却下する。
    2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
    3 訴訟費用は原告の負担とする。
              事 実 及 び 理 由
第1 請求
 1 被告は、福島金夫(以下「福島」という。)、吉野勉(以下「吉野」という。)及び笠原寛(以下「笠原」という。)に対し、1億0200万円及びうち1020万円に対する平成22年3月31日から、うち1020万円に対する平成23年3月31日から、うち1020万円に対する平成24年3月31日から、うち1020万円に対する平成25年3月31日から、うち1020万円に対する平成26年3月31日から、うち1020万円に対する平成27年3月31日から、うち1020万円に対する平成28年3月31日から、うち1020万円に対する平成29年3月31日から、うち1020万円に対する平成30年3月31日から、うち1020万円に対する平成31年3月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払うよう請求せよ。
 2 被告は、堀越正勝(以下「堀越」という。)に対し、200万円を支払うよう請求せよ。
第2 事案の概要
 松本高志(以下「松本」という。)は、昭和58年4月、群馬県に任用され、平成31年3月31日に定年退職した後、同年4月1日、群馬県に再任用された。 群馬県の住民である権利能力のない社団である原告は、松本が、平成20年6月23日に発症した脳内出血により右上下肢に機能障害が残り(身体障害者障害程度等級2級)、かつ、平成31年に高次脳機能障害と診断されたにもかかわらず、①当時の教育委員会教育長(以下「教育長」という。)である福島が、平成21年度に松本を教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命したこと(以下「本件行為1」という。)、②当時の教育長である福島が、平成21年度から平成23年度までの間、松本の給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(以下「本件行為2」という。)、③当時の教育長である吉野が、平成24年度から平成27年度までの間、松本の給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(以下「本件行為3」という。)、④当時の教育長である笠原が、平成28年度から平成30年度までの間、松本の給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(以下「本件行為4」という。)、⑤当時の総務部人事課長である堀越が、平成31年4月1日に松本を会計局審査課の主幹専門員として再任用したこと(以下「本件行為5」という。)、⑥当時の総務部人事課長である堀越が、平成31年4月以降、松本の給与を、通切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(以下「本件行為6」といい、本件行為1から6までを「本件各行為」という。)が違法であると主張して、群馬県の執行機関である被告を相手方として、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号本文に基づき、不法行為による損害賠償として、福島、吉野及び笠原に対し、松本に対して過大に支払われた給与等相当額合計1億0200万円及び平成21年度から平成30年度までの各年度の各給与等相当額に対する各年度末から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、堀越に対し、松本に対して過大に支払われた給与等相当額合計200万円の支払を、それぞれ請求することを求めた。
 1 前提事実等
 以下の事実は、当事者間に争いがないか、本文中に掲記の証拠(以下、書証の枝番号は省略する。)及び弁論の全趣旨によって容易に認めることができる。
 (1) 松本の経歴について
 ア 松本は、昭和58年4月、群馬県に任用された。
 イ 松本は、平成20年6月23日当時、教育委員会事務局管理課の次長であったところ、同日、脳内出血を発症した。そのため、松本は、同日から同年12月19日まで病気休暇を取り、同月20日から平成21年1月16日まで休職し、同月17日、上記次長として復職した。
 松本は、上記病気休暇及び休職の間、脳内出血の治療を受けたが、右上下肢に機能障害が残り、身体障害者障害程度等級2級に認定された。
 ウ 松本は、平成21年度、教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命され、同年度から平成27年度までの間、同次長を、平成28年度から平成30年度までの間、教育委員会事務局特別支援教育課の次長を、それぞれ務めた。
 平成21年度から平成23年度までの教育長は福島であり、平成24年度から平成27年度までの教育長は吉野であり、平成28年度から平成30年度までの教育長は笠原であった。
 工 松本は、平成31年3月31日に定年退職し、同年4月1日、群馬県に再任用され、会計局審査課に主幹専門員として配属された。
 平成31年度の群馬県総務部人事課長は堀越であった。
 オ 松本は、令和2年度、会計局会計管理課に配属された。
 令和2年度の群馬県総務部人事課長は堀越であった。
 (2) 本件訴訟に至る経緯について
 ア 原告は、令和2年2月28日、群馬県監査委員に対し、松本の給与等について、住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。(甲1)
 イ 群馬県監査委員は、令和2年3月16日付けで本件監査請求を却下し、同月17日、その旨を原告に対して通知した。(甲8)
 ウ 原告は、令和2年4月16日、本件訴訟を提起した。
 2 争点及びこれに対する当事者の主張
 (1) 適法な監査請求の前置の有無(争点1)
(被告の主張)
 ア 住民監査請求に当たっては、問題とする財務会計上の行為(公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行又は債務その他の義務の負担)又は怠る事実(公金の賦課若しくは徴収又は財産の管理を怠る事実)が違法又は不当であるとする具体的な理由を摘示する必要があるところ、本件監査請求は、原告が問題としている財務会計上の行為又は怠る事実が何であるか明らかでなく、間題とする財務会計上の行為又は怠る事実が違法又は不当であるとする具体的な理由の摘示を欠いている。
 イ 本件監査請求は、専ら松本の業務配転や任命といった人事管理に関する事項を問題としており、財務会計上の行為又は怠る事実に関する問題の是正を求めるものではなく、不適法である。
 ウ 原告は、松本に対する給与等の支払を不当な公金の支出としているところ、本件監査請求は令和2年2月28日にされているから、その時点で1年を経過している平成31年2月27日以前の松本の給与等の支払に係る本件監査請求は不適法である。
(原告の主張)
 否認ないし争う。
 (2) 本件各行為の違法性の有無(争点2)
(原告の主張)
 ア 松本は、脳内出血の後遺症により、右上肢の機能に著しい障害があり、右下肢の機能が全廃している。
 したがって、上記の状態にある松本について、福島が、平成21年度、教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命したこと(本件行為1)及び福島、吉野及び笠原が、同年度から平成30年度までの間、その給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(本件行為2から4まで)は、地方公務員法23条、23条の2及び23条の3等に違反する。
 イ また、右上下肢に機能障害が残る松本は、平成31年4月1日に再任用され、会計局審査課に配属された。しかし、松本が、仕事ができず寝てばかりいたため、同課の次長及び国費 決算係長が、松本の主治医に対し、松本の健康状態を問い質したところ、主治医は、脳内出血の後遺症として高次脳機能障害があり、認知症と同じ状態であるとの診断結果を説明した。
 したがって、上記の状態にある松本について、堀越が、平成31年4月1日、再任用したこと(本件行為5)及び同月以降、その給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(本件行為6)は、地方公務員法23条、23条の2及び23条の3等に違反する。
(被告の主張)
 復職後の松本の主な業務は、所属長の補佐や所属職員の管理監督であり、多くは常時継続的に扱うものではなく、身体能力を必要としないデスクワークであった。確かに、松本には右上下肢の機能障害による不自由があり、事務作業に慣れるまでに時間を要することは否定できないが、その職務を遂行できない状態ではなく、上記機能障害に起因する職務遂行上の支障により、分限処分等を検討しなければならない状態ではなかった。
 そして、平成21年4月1日に教育委員会事務局特別支援教育室次長に任命された以降の松本の状況は上記と同様であり、松本には身体の故障はあるものの、職務の遂行に支障があり又はこれに堪えないとの事実等は認められず、給与を引き下げるような事由はない。
 したがって、本件各行為に原告主張に係る違法はない。
 (3) 損害(争点3)
(原告の主張)
 障害者雇用のための群馬県の制度であるチャレンジウィズぐんまにおいて支払われている給与(月額10万円以上15万円未満)を基準とすれば、松本が教育委員会事務局特別支援教育室及び教育委員会事務局特別支援教育課の次長を務めた10年間では、松本に対して、少なくとも年間1020万円の給与等を過大に支払い続けていたことになる。
 また、チャレンジウィズぐんまにおいて支払われている給与を基準とすれば、松本が再任用された後の1年間では、松本に対して、少なくとも年間200万円の給与等を過大に支払い続けていたことになる。
 したがって、被告には、少なくとも、上記10年間で合計1億0200円、再任用された後の1年間で200万円の損害が生じている。
(被告の主張)
 否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
 1 争点1(適法な監査請求の前置の有無)について
 (1) 財務会計上の行為又は怠る事実が違法又は不当であるとする具体的な理由の摘示について
 被告は、本件監査請求は、問題とする財務会計上の行為又は怠る事実が明らかではなく、問題とする財務会計上の行為又は怠る事実が違法又は不当であるとする具体的な理由の摘示を欠いていると主張する。
 住民監査請求においては、その対象が特定されていること、すなわち、対象とする財務会計上の行為又は怠る事実が、他の事項から区別し特定して認識することができるように、個別的、具体的に摘示されていることを要する。しかし、その特定の程度としては、監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載、監査請求人が提出したその他の資料等を総合して、住民監査請求の対象が特定の財務会計上の行為又は怠る事実であることを監査委員が認識することができる程度に摘示されているのであれば、これをもって足り、上記の程度を超えてまで財務会計上の行為又は怠る事実を個別的、具体的に摘示することを要するものではない(最高裁平成16年11月25日第一小法廷判決民集58巻8号2297頁参照)。
 本件監査請求の監査請求書に当たる群馬県職員措置請求書(甲1)には、松本について、①脳卒中で倒れ右半身に麻痺が残ったが、職場復帰し、次長として教育委員会特別支援教育課に在籍し、平成31年3月に定年退職したが、再任用され会計局審査課に配属されたこと、②他の職員はほとんど寝ている様子しか見かけておらず、誰もいないときには倒れてしまうのではないかと心配するくらい身体を倒して寝ており、よだれを垂らしている姿が目撃されていること、③その能力に応じた業務に従事し、それに見合った報酬を受け取るべきであること、④松本に対する過大な報酬の支払は、地方自治法2条14項及び地方公務員法35条に違反していること、⑤これにより、松本に過大に支払われた給与等の相当額が群馬県の損害となっていること、⑥被告に対し、原因究明、再発防止等に取り組むよう勧告するとともに、松本から上記相当額を回収したり、総務部人事課及び教育委員会の歴代幹部らに対して上記損害の賠償を請求したりするよう勧告することを求めることが記載されている。
 このような群馬県職員措置請求書の記載内容からすれば、本件監査請求は、松本に対する給与等の支払が、松本の身体状況や職務状況からすると過大であり違法であるから、必要な措置を採るよう勧告することを群馬県監査委員に求めたものであって、同監査委員において、松本の給与等に関する財務会計上の行為又は怠る事実が監査の対象となっていることを認識することができる程度に摘示されているといえる。
 また、前記のとおり、群馬県職員措置請求書には、松本の給与等に関する財務会計上の行為又は怠る事実が地方自治法2条24項及び地方公務員法35条に違反していることが具体的に摘示されており、違法とする根拠法条の摘示に欠けるところもない。
 したがって、被告の上記主張は採用することができない。
 (2) 本件監査請求は財務会計上の行為又は怠る事実に関する問題の是正を求めるものかについて
 被告は、本件監査請求は、専ら松本の業務配転や任命といった人事管理に関する事項を問題としており、財務会計上の行為又は怠る事実に関する問題の是正を求めるものではないと主張するが、前記(1)のとおり、本件監査請求は、松本の給与等に関する財務会計上の行為又は怠る事実について、その是正を求めるものといえる。
 したがって、被告の上記主張は採用することができない。
 (3) 監査請求期間について
 ア 本件各行為について監査請求期間の制限の適用があるか
 被告は、本件監査請求が令和2年2月28日にされているから、その時点で1年を経過している平成31年2月27日以前の松本の給与等の支払に係る本件監査請求は不遥法であると主張する。
 財産の管理を怠る事実を対象とする住民監査請求については、監査請求期間の制限を定める地方自治法242条2項の適用はないところ、本件行為2から4まで及び6は、いずれも、松本の給与について、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったという財産の管理を怠る事実を問題とするものであるから、監査請求期間の制限の適用はない。これに対して、本件行為1及び5は、松本を、教育委員会事務局管理課の次長に任命した、又は再任用したという財務会計上の行為を問題とするものであるから、財産の管理を怠る事実ではなく、監査請求期間の制限の適用があるというべきである。
 イ 監査請求期間の経過の有無
 前記前提事実等のとおり、松本は、平成21年度、教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命されたところ、本件監査請求は令和2年2月28日にされており、本件行為1のあった日から1年の監査請求期間を経過している。
 この点、監査請求期間の経過について「正当な理由」(地方自治法242条2項ただし書き)があれば、本件行為1に対する本件監査請求が適法になる余地があるものの、原告は、上記「正当な理由」について、何ら主張立証しない。
 ウ 小括
 以上によれば、本件行為1に対する本件監査請求は不適法であるから、本件訴えのうち、本件行為1を対象とする部分は不適法である。
 他方、本件訴えのうち、本件行為2から6までを対象とする部分は、適法な監査請求を前置したものであって、不適法とはいえない。
 2 争点2(本件各行為の違法性の有無)について
 (1) 認定事実
 前記前提事実等のほか、本文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
 ア 松本は、平成20年6月23日当時、教育委員会事務局管理課の次長であったところ、同日、脳内出血を発症した。そのため、松本は、同日から同年12月19日まで病気休暇を取り、同月20日から平成21年1月16日まで休職した。
 松本は、上記病気休暇及び休職の間、脳内出血の治療を受けたが、右上下肢に機能障害が残り、身体障害者障害程度等級2級に認定された。
 イ 松本は、平成21年1月13日、福島に対し、復職願及び「平成21年1月16日退院の予定です。退院後、軽作業であれば復職可能と思われます。」と記載された沢渡温泉病院医師作成の同月8日付け診断書を提出した。
 これを受け、教育委員会事務局管理課長は、同局総務課長に対し、「職員の復職願いについて(副申)」と題する書面を提出した。同書面には、専門医が職場復帰可能としていること及び松本の家族からの聴取によれば、療養の成果が確実に現れていることから、復職を承認されたい旨記載されている。
 上記の結果、松本は、同月17日、教育委員会から復職を命じられ、教育委員会事務局管理課の次長として復職した。(乙11~14)
 ウ 松本は、平成21年度、教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命され、同年度から平成27年度までの間、同次長を、平成28年度から平成30年度までの間、教育委員会事務局特別支援教育課の次長を、それぞれ務めた。
 松本の当時の分掌事務は、所属長の補佐、所属職員の指揮監督、男女共同参画推進責任者、情報公開・個人情報保護、広報・広聴 苦情処理、総合行政の推進、人事管理 人材育成、業務の効率的推進及び職員団体との交渉 調整であった。(乙16、17)
 エ 教育次長が総務部長人事課に対して提出した、平成30年10月17日付け「定年退職者等の再任用に係る意見書」には、松本について、「身体的障害を有するが、心身ともに健康で、勤労意欲もあることから適任である。」との意見が記載されている。(乙23)
 オ 松本は、平成31年3月31日に定年退職し、同年4月1日に再任用され、会計局審査課の国費·決算係に配属された。
 松本の当初の分掌事務は、国庫金の支出負担行為の確認に関すること、国庫金の収入  支出の審査に関すること、国庫金の債権管理に関すること、国費会計事務支援に関すること、計算証明に関すること、「国費会計事務の手引き」に関すること、国の会計事務研修に関すること及びコンピュータ管理担当者の業務に関することであり、いわゆるデスクワークであった。もっとも、松本は、そのほとんどをこなすことができない状況であった。(乙27、証人今井)
 力 平成31年4月以降、松本が時々居眠りしていることがあるとの報告がされるようになった。
 松本は、令和元年6月から7月頃、睡眠時無呼吸症候群と診断され、これに対する治療を開始した。その結果、その症状が改善し、業務の遂行に当たって障害となるような居眠りは見られなくなった。(乙32、乙34、証人今井、証人清水、証人島方)
 キ 会計局審査課の国費 決算係長と会計局審査課の次長は、松本の記憶力や理解力に何らかの障害があるのではないかと思われる出来事があったため、令和元年7月半ばから同年8月頃、松本に同行し、同人の老年病研究所附属病院のリハビリの主治医に意見を聞いたところ、同主治医は、同人の状態について、高次脳機能障害と言われればそうではないかとの意見を述べた。もっとも、松本について、高次脳機能障害の診断はされなかった。(乙32、証人今井)
 ク 会計局審査課の国費 決算係の職務は、作業内容が複雑であり、これまで次長という管理職としての業務を中心に務めてきた松本にとってなじみのないものであって、精神的及び肉体的な負担が大きい業務であったため、松本は、令和元年9月、会計局審査課の審査 指導係に係替えされた。
 松本の当時の職務内容は、群馬県庁の各課から提出される経費の支出に関する書類の審査等であり、ある程度マニュアル化された複雑ではない仕事を担当することとなり、その業務の遂行に問題は見られなくなった。 (乙3 4、証人今井)ケ 松本は、令和2年度、会計局会計管理課に配属された。
 松本の当時の分掌事務は、一般会計、特別会計の支出負担行為及び支出命令の審査確認に関すること、例月現金出納検査資料に関すること(例月検査資料の確認)であり、いわゆるデスクワークであった。また、松本の業務の遂行に問題は見られなかった。(乙28、証人清水)
 (2) 判断
 ア 原告は、松本について、脳内出血の後遺症により右上肢の機能に著しい障害があり、右下肢の機能が全廃しているから、本件行為2から6までは違法であると主張する。
 確かに、前記認定事実アのとおり、松本には、脳内出血により右上下肢に機能障害が残り、身体障害者障害程度等級2級に認定されている。
 しかし、前記認定事実イのとおり、松本が復職願とともに提出した診断書には、「平成21年1月16日退院の予定です。退院後、軽作業であれば復職可能と思われます。」と記載され、これを受けて、教育委員会事務局管理課長が、同局総務課長に対し、専門医が職場復帰可能としていること及び松本の家族からの聴取によれば、療養の成果が確実に現れていることから、復職を承認されたい旨記載された「職員の復職願いについて(副申)」と題する書面を提出しているから、松本は、復職時、軽作業であれば業務の遂行が可能な状態であったと認められる。また、前記認定事実ウ、オ、ク及びケのとおり、平成21年1月17日に復職して以降の松本の職務内容は、いわゆるデスクワークであったから、松本の右上下肢の機能障害が、同人の業務の遂行に著しい影響を生じさせていたとは認め難い。実際に、前記認定事実工のとおり、平成30年10月17日付け「定年退職者等の再任用に係る意見書」には、松本について、 「身体的障害を有するが、心身ともに健康で、勤労意欲もあることから適任である。」との意見が記載されており、松本の業務遂行能力に問題があったとは認められない。
 イ また、原告は、松本が、再任用された平成31年4月1日以降、仕事ができず寝てばかりいたところ、同人の主治医が脳内出血の後遺症として高次脳機能障害があり、認知症と同じ状態であるとの診断結果を説明したことから、本件行為6は違法であると主張する。
 確かに、前記認定事実力及びキのとおり、松本について、平成31年4月以降、時々居眠りしていることがあるとの報告がされ、令和元年7月半ばから同年8月頃、同人の老年病研究所附属病院のリハビリの主治医が、同人の状態について、高次脳機能障害と言われればそうではないかとの意見を述べている。
 しかし、前記認定事実力のとおり、松本は、令和元年6月から7月頃、睡眠時無呼吸症候群と診断され、これに対する治療を行った結果、その症状は改善し、業務の遂行に当たって障害となるような居眠りは見られなくなったこと及び前記認定事実キのとおり、松本について、高次脳機能障害の疑いが指摘されたものの、その診断まではされていなかったことからすれば、上記居眠り及び高次脳機能障害の疑いをもって、松本の業務遂行能力に重大な問題があったとはいえない。
 ウ この点、前記認定事実オのとおり、松本は、平成31年4月1日に再任用され、会計局審査課の国費 決算係に配属された当初は、その職務のほとんどをこなすことができない状況であった。
 しかし、前記認定事実ク及びケのとおり、松本について、①再任用当初に配属された会計局審査課の国費  決算係の作業内容が複雑であり、これまで次長という管理職としての業務を中心に務めてきた同人にとってなじみのないものであって、精神的及び肉体的な負担が大きい業務であったこと、②これを受けて、令和元年9月、同課の審査 指導係に係替えされ、ある程度マニュアル化された複雑ではない仕事を担当することとなったため、その業務の遂行に問題は見られなくなったこと、③令和2年度、会計局会計管理課に配属された後もその業務の遂行に問題が見られなかったことからすれば、松本が職務のほとんどをこなすことができない状況は一時的なものであって、その後に係替えされた結果、上記状況が解消され、令和2年度に入っても業務の遂行に問題は見られなかった。そうだとすれば、松本の上記状況を考慮しても、なお、松本の給与について、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったとはいえない。
 エ したがって、原告の前記各主張は、いずれも採用することができない。
第4 結論
 以上によれば、本件訴えのうち、福島が平成21年度に松本を教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命したことについて、同人に対し、1020万円及びこれに対する平成22年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求するよう求める部分は不適法であるから却下し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとする。

   前橋地方裁判所民事第1部

     裁判長裁判官  田 中 芳 樹
        裁判官  杉 浦 正 典
        裁判官  清 水 瑛 夫

これは正本である。
令和4年9月7日
  前橋地方裁判所民事第1部
    裁判所書記官 橋 本 勇 一
                 前橋20-008584
**********

 上記の通り、前橋地裁は、被告群馬県が出してきた書証や人証を全面的に採用し、当会が独自に行った内部調査の情報を全く無視してしまい、原告に対して敗訴判決を言い渡しました。この背景には、なにがなんでも、行政内の不祥事に目をつむり、屁理屈を付けてもなお、行政を勝たせなければならない、ヒラメ裁判官の存在があります。

■3年間にわたる上記の一審の結果は以上の通りです。残念ですが、現在の我が国の裁判所では、行政最優先の判決を出すのが通例であり、今回もご多分に漏れない結果となりました。控訴するかどうかは、9月17日の当会の例会で協議して決める予定です。

 これまで、この問題について、数々の情報をお寄せいただいた関係者の皆様に対してこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 今回の事件で痛感させられたのは、県庁内で不適切な人事管理がまかり通っている実態が厳然と存在しているにもかかわらず、そうした実態を是正しようと、県庁内の人事課に報告しても、取り上げてもらえないどころか、却って組織として好ましくない人物というレッテルを張られる懸念があります。

 本来、群馬県は組織内に独立機関を設置し、通報者の秘密を守りながら、庁内の不適切で不公平な人事管理を撲滅する努力をしなければならないはずです。しかし遺憾ながら、群馬県はそうしたあたりまえのことをしようとしません。ですので、今後とも、群馬県や県内自治体において、人事管理に不合理な実態が起きている場合、どこに相談してよいかわからないと迷ったら、遠慮なく当会に連絡してください。通報者・相談者の秘密は固く厳守しますので安心して情報をお寄せ下さるようお願いいたします。

■なお、松本高志氏は今年2月、発作が再発して入院されたとの情報が被告群馬県の裁判資料に記されております。そのため、今年度令和4年度は再任用職員としての契約をされていません。実際に、令和4年度群馬県職員録にも、同氏の名前は掲載されていません。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】


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