■台湾に対するアストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの提供が迅速に行われたことに拍手を送りたいと思います。台湾からの情報によれば、ワクチンを輸送した日航機を護衛するために米軍が協力をしたということです。なぜならば、中国は、東シナ海に浮かぶわが国固有の領土である尖閣諸島への恒常的な接続水域進入(さらに領海侵犯も)と同じく、台湾に対しても連日のように軍用機を台湾の防空識別圏に進入させており、不測の事態を避けるために在日米軍がワクチンを輸送する日航機を援護したというものです。
↑日台友情↑
↑台湾では、今回日本から提供された124万回分のワクチンを運んだ日航機809便が、6月4日の午後2時40分に台湾の桃園国際空港に着いたとして、天安門事件として知られる「1989年6月4日午前2時40分」に民主化を求める学生・市民らに中共政府が人民解放軍を使って武力弾圧に踏み切った時間と、フライトCodeの「809」と「6月4日」と午前と午後の違いはあるにしても「2時40分」が、いずれも数字的に一致するのは、何らかの因縁があるとして、話題になっています。実際には、ワクチンを載せた日本航空809便は6月4日午前11時に成田空港を出発し、午後1時58分(いずれも台湾時間)に桃園空港に到着したわけですが、2時40分は「?」にしても、天安門事件と奇しくも同じ6月4日に、中共のまき散らした武漢肺炎=COVID-19に対する救いの手が、日本から差し伸べられたことに、余計感慨深い思いを抱いたからこそのトピックスと言えるのではないでしょうか。↑
今回の迅速な台湾へのワクチン提供の実現は、6月3日の産経新聞の報道によれば、中国からの横槍を警戒しつつ、水面下で慎重に準備が進められてきた経緯があります。ワクチンを共同購入して途上国に分配する国際的枠組み(COVAX:コバックス)では時間がかかりすぎるため、安倍晋三前首相ら自民党議員も動き、迅速な提供が実現されたということです。以下、同報道記事を引用します。
■経緯としては、5月24日夜、東京都港区の台北駐日経済文化代表処で、台湾の謝長廷代表と米国のヤング駐日臨時代理大使の意見交換会に、薗浦健太郎元首相補佐官が招かれていました。謝長廷代表からアストラゼネカ製ワクチンの使い道を聞かれた薗浦補佐官は「日本はアストラゼネカ製のワクチンを公的接種では当面使わない。それを台湾に譲る動きもある」と答えると、ヤング大使も「グッドアイデアだ」と賛意を示しました。
台湾は、中国の武漢で未知のウイルスによる感染情報をいち早くキャッチし、中国政府の発する報道を一切信用せず、独自に厳格で迅速な水際対策を実施したことで、新型コロナウイルスの押さえ込みを実現していました。ところが、4月末にクラスターがあちこちで発生し始め、5月中旬から感染が急拡大したため、台湾政府は日本政府に5月の大型連休明け以降に、複数のルートで「100万回分ほどワクチンが融通できないか」と打診が届き、水面下での検討が進められてきました。
薗浦氏は翌5月25日、安倍氏に謝氏らとのやり取りを報告して協力を要請しました。2人は前政権で首相と、首相を支える首相補佐官や党総裁外交特別補佐として外交政策を担ってきた間柄でもあったため、安倍氏も「すぐにやろう」と応じました。
国有財産であるワクチンの譲渡は財務省の了解が必要となるため、麻生太郎副総理兼財務相に報告した上で、菅義偉首相のゴーサインを得ました。関係省庁間の調整役には加藤勝信官房長官が当たりました。
外務省は当初、コバックスを通じた提供を検討しましたが、安倍氏らから「それでは時間がかかりすぎる」との声が上がりました。台湾側からは「数量はともかく、スピード重視で対応してもらいたい」との意向が伝えられていたからでした。そのため、コバックスではなく日台間の相互援助の一環として提供する方針に転換しました。
日本が震災や新型コロナのマスク不足で困難に直面した際、台湾からは多額の義援金やマスクが届いた経緯があります。ワクチンはそのほんの一部のお返しという意味がこめられました。
懸念は中国側の動きでした。台湾はドイツのバイオ企業ビオンテックからの購入に動きましたが、契約寸前で頓挫し、蔡英文総統は「中国の介入で契約できていない」とアピールしました。中国側は妨害工作を否定していますが、もはや中国共産党一党独裁国家のいうことなど信じる者はいません。日本政府としては、中国の動向を注視しながら、情報管理には細心の注意を払い、今回のスピード重視のワクチン提供が実現したのです。
■ワクチン到着までの記事を、時間を遡りながら見てみましょう。
**********共同通信2021年6月4日20:49
日本からのワクチン、台湾到着
蔡政権が歓迎、謝意相次ぐ
↑台湾北部・桃園国際空港で、航空機から降ろされたワクチンが入ったコンテナ=4日(中央通信社=共同)↑
【台北共同】日本政府が台湾に無償提供した新型コロナウイルスワクチンが4日午後、台湾北部の桃園国際空港に到着した。日本が契約した英アストラゼネカ製で、124万回分が供与された。一部の台湾メディアは到着を実況中継。台湾人の関心は高く、党派を超えて日本への謝意表明が相次いだ。日本政府はコロナ対策支援を通じて日台関係を強化する狙い。
台湾では5月中旬から感染が拡大。防疫の鍵となるワクチンの調達が中国の妨害で遅れていただけに、蔡英文政権は日本からの提供を歓迎。ワクチン不足に不安を強めた市民の怒りに歯止めがかかり、国民党などによる政権批判も勢いをそがれるとみられる。
**********NHK News Web 2021年6月4日18:58
日本政府が無償提供のワクチン 台湾に到着
新型コロナウイルスの感染が急拡大している台湾に対し日本政府が無償で提供したワクチンが4日午後、台湾の空港に到着しました。
ワクチンは4日午前、成田空港から航空機で運ばれ、午後、台湾の桃園国際空港に到着しました。
台湾では先月中旬から新型コロナウイルスの感染が急拡大していますが、これまでに台湾に届いたワクチンはおよそ88万回分にとどまり、蔡英文総統は中国の妨害によって海外の製薬会社からのワクチンの調達が難航していると非難していました。
今回、日本政府が無償で提供したのは、アストラゼネカのワクチン124万回分です。
蔡総統は、ワクチンの到着後にオンラインで談話を発表し「奔走してくれた台湾と日本の当局と民間の人たちに感謝します。価値観を共有し互いに支え合う台日友好の真の意味が改めて示されました」と述べました。
また陳時中 衛生福利部長は、4日の記者会見で「THANK YOU」「台日友好」などと書いたパネルを掲げました。
そして、WHO=世界保健機関などが主導する国際的な分配の枠組み「COVAXファシリティ」を通じての供給は時間がかかると指摘し、日本がCOVAXではなく直接台湾に提供したことに「とても感謝する」と述べました。
★加藤官房長官「大切な友人 互いに助け合い」
加藤官房長官は、午後の記者会見で「新型コロナ感染症の収束のためには、あらゆる国、地域において、安全で効果的かつ品質が保証されたワクチンへの公平なアクセスの確保が重要だと考えている」と述べました。
そのうえで「台湾は、緊密な人的往来と経済関係を有する極めて重要なパートナーで、大切な友人でもある。東日本大震災の際に大変心温まる支援をいただくなど、大規模災害などの際にお互いに助け合ってきた。今回の供与は、こうした考え方に基づいて決定したもので、台湾における感染拡大の防止に寄与することを期待している」と述べました。
一方、記者団が中国側から外交ルートで抗議などはあったのかと質問したのに対し、加藤官房長官は「少なくとも私のところには、そうした外交ルートを通じた対応があったとは承知していない。報道では『日本はワクチンを政治的に利用している』といったコメントがあったということだが、人道的立場から行っているものであり、政治的利用といった批判は全く当たらない」と述べました。
★中国 台湾 蔡英文政権を強く非難
日本政府が台湾に対し、ワクチンを無償で提供したことについて、中国外務省の汪文斌報道官は、4日の記者会見で「台湾の民進党当局は、中国からのワクチンの提供をあらゆる手段で妨害し、さらに中国側がワクチンの調達を阻止していると偽っている。みずからの利益のために政治的な操作を続けている。これは台湾の同胞の命と健康を軽視し、人道主義の精神に反するものだ」と述べ、台湾の蔡英文政権を強く非難しました。
**********時事通信2021年06月04日18:07
天安門「忘れない」 台湾総統、犠牲者追悼
↑台湾の蔡英文総統=5月4日、台北(EPA時事)↑
【台北時事】台湾の蔡英文総統は、中国の民主化運動が武力弾圧された天安門事件から32年を迎えた4日、「天安門広場で犠牲になった若者や、ろうそくをともして毎年追悼していた香港の人たちのことを忘れない」とツイッターに投稿した。
蔡氏は「自由と民主主義を誇る全ての台湾人が、この日のことを永遠に忘れず、固く信念を守り続けると信じる」ともつづった。
一方、日本からの新型コロナウイルスワクチン支援に触れ、「自由と民主主義の価値を守るパートナーからの援助に感謝すると同時に、台湾が民主主義に対してさらに自信を持つきっかけになった」と日本の対応を称賛した。
**********東洋経済オンライン2021年06年04日12:15
日本が台湾へワクチン提供「恩返し」の重要な意味
正式な外交関係なくても世論次第でかかわれる
↑予想外の感染拡大を受けて台湾でもワクチン接種の機運が高まっている(写真:I-Hwa Cheng/Bloomberg)↑
6月3日、台湾時間の午後6時過ぎ、台湾の主要メディアは一斉に速報を出した。
「4日にも日本が台湾にワクチン提供」
日本政府は4日に、5月から新型コロナウイルスの感染が急速に拡大する台湾に新型コロナワクチンを提供すると正式に発表した。イギリス製薬大手、アストラゼネカ社製で、すでに124万回分のワクチンを載せた日本航空の飛行機は出発しており、台湾時間午後3時前に到着する予定だ。
5月末に日本から台湾へのワクチン提供案が明らかになってから、わずか1週間でのスピード決定だった。感染拡大が収まらず、ワクチンの調達にも難航していた台湾はこの朗報に沸いた。
★「3.11」から10年目の日本の動き
2011年の東日本大震災からちょうど10年目。当時、台湾が200億円以上の義援金を贈り、日台の「友情」が注目された。日台関係の節目となる今年、ワクチンを提供することで日本は「恩返し」する形だ。6月3日、茂木敏充外務大臣は「台湾は東日本大震災の際、いちはやく義援金を送ってくれた。困ったときは助け合うことが必要だ」と強調していた。
日本が台湾へワクチン提供する案が検討されていることが明らかになったのは5月27日から28日にかけてだ。台湾の陳時中・衛生福利部長(厚生労働大臣に相当)も「早ければ早いほうがいい。遅れると意味がない」と日本への期待を示していた。
そして6月4日、提供案が明らかになってから1週間でのスピード提供は正式な外交関係がない日台関係にとって異例ともいえる出来事となった。同日にはアメリカも台湾を含む世界各国にワクチンを提供すると明らかにしたが、時期は6月末になるとされ、台湾では日本のワクチン提供の早さにも注目が集まった。
台湾にとっても今回のワクチン提供はベストタイミングだった。もともと台湾は新型コロナ対策の優等生とされてきた。徹底的な水際対策や疫学調査によって4月末まで累計感染者数を1200例以下に抑えていたからだ。
ところが、5月に入り、大手航空会社のパイロットの感染やそのパイロットが自主隔離していたホテル、台北市内の風俗喫茶が立ち並ぶ繁華街でのクラスター発生がきっかけとなり、台湾全土に感染が拡大。6月3日時点で累計感染者数が9974人となっていた。
台湾国内での新型コロナ感染は起こりにくいだろうと考えていたため、多くの台湾人はワクチン接種を希望していなかった。台湾政府も今夏に台湾企業による国産ワクチンが供給される見通しだったため、海外製ワクチンの輸入をあまり優先していなかったようで、感染拡大時のワクチン摂取率は1%にも満たなかった。
だが、急速に悪化していく事態を目の当たりにして「疫苗荒(ワクチン不足によるパニック)」が問題になるほど、ワクチンへの関心が高まっていた。台湾にとっても今回のワクチン提供はベストタイミングだった。もともと台湾は新型コロナ対策の優等生とされてきた。徹底的な水際対策や疫学調査によって4月末まで累計感染者数を1200例以下に抑えていたからだ。
ところが、5月に入り、大手航空会社のパイロットの感染やそのパイロットが自主隔離していたホテル、台北市内の風俗喫茶が立ち並ぶ繁華街でのクラスター発生がきっかけとなり、台湾全土に感染が拡大。6月3日時点で累計感染者数が9974人となっていた。
台湾国内での新型コロナ感染は起こりにくいだろうと考えていたため、多くの台湾人はワクチン接種を希望していなかった。台湾政府も今夏に台湾企業による国産ワクチンが供給される見通しだったため、海外製ワクチンの輸入をあまり優先していなかったようで、感染拡大時のワクチン摂取率は1%にも満たなかった。だが、急速に悪化していく事態を目の当たりにして「疫苗荒(ワクチン不足によるパニック)」が問題になるほど、ワクチンへの関心が高まっていた。
★中国による妨害や牽制も
感染拡大が顕著になるつれ、台湾政府も海外製ワクチンの確保に向けて積極化。ワクチンメーカーや日米など各国政府にワクチンの供給や融通を水面下で打診した。しかし、ワクチンの確保は難航。台湾政府はその背景に台湾を自国の一部とみなす中国の影響があると主張する。
5月下旬、台湾の蔡英文・総統はファイザーとワクチンを共同開発しているドイツのビオンテックとワクチンの買い付けをめぐり「契約寸前までいったが、中国の介入で遅れた」と非難。中国の上海復星医薬が中華圏におけるビオンテックのワクチンの独占代理店となったことで、台湾がワクチンを入手できないというのだ。
中国側はこれを否定したが、中国外交部の趙立堅・副報道局長は「台湾は中国本土からワクチンを簡単に入手できる」と述べたほか、蔡総統の発言に対しては「われわれはこの『総統』なるものを認めていない。彼女は中国の一地区のリーダーにすぎない」と話した。台湾の陳時中・衛生福利部長はビオンテックとワクチン供給について共同発表を行う予定だったが、ビオンテック側が発表文から「国」という表記を削除するよう求めてきたことを明かしている。
さらに中国は日本によるワクチン供給案が明らかになると、日本側にも牽制をかけた。5月31日、中国外交部の汪文斌・副報道局長は「日本は現時点で自国のワクチンも十分な確保ができていない」とし、「ワクチン援助は生命を救うためだという理念に戻り、政治的な私利のための道具にしてはいけない」と語った。
実際、日本から台湾へワクチンを提供する案が浮上した際に「世論の反対が起きないかはひとつの焦点だった」と自民党外交部会の議論に参加する国会議員の1人は明かす。台湾にアストラゼネカ製のワクチンを供給しても数量は足りるものの、日本国内でワクチン接種が進んでいないなかで、他国にワクチンを供給することに批判が起きかねないとみられたからだ。5月27日から28日にかけて台湾へのワクチン提供案が浮上しているとの報道も世論の反応をみる観測気球だった。
★「台湾への恩返しをしようという後押しを感じた」
懸念は杞憂だった。台湾への提供予定が日本では接種を見合わせていたアストラゼネカのワクチンであったこともあるが、「メディアの報道姿勢やそれらへの反応から台湾への恩返しをしようという後押しを感じた」(前出議員)。台湾ではアストラゼネカのワクチンが他社製に先駆けて承認されている。
正式な外交関係がないことや中国からの圧力を回避するために、当初は国際的なワクチン共同調達の「COVAX(コバックス)」を通じて供給する方法も検討された。ただ、時間がかかることが課題となり、日本政府は緊急措置として日台間の援助の一環としてワクチンを提供する決定を下した。今後も複数回にわたり、台湾にワクチンを提供するとみられる。
今年4月に行われた日米首脳会談後の共同声明では「台湾海峡の平和と安定の重要性」という形で1969年以来、52年ぶりに「台湾」という単語が盛り込まれ、日本として正式な外交関係がない台湾とどう向き合うかが問われている。今回の迅速なワクチン提供は日本の世論が支持すれば、日本は主体的に台湾に関わることができるという実績になった。
**********共同通信2021年6月4日09:39
ワクチン提供、日本の友情証明 台湾各紙が報道
↑日本政府の新型コロナワクチン提供を1面で報じた4日付の台湾各紙=台北(共同)↑
【台北共同】4日付の台湾各紙は、日本政府が台湾に新型コロナウイルスの英アストラゼネカ製のワクチンを提供することを「日本の124万回分が今日台湾到着」との見出しで1面トップに掲載し、日台の友情を改めて証明したと報じた。米国が国際枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、台湾を含むアジアに700万回分を提供することも伝えた。
自由時報は「日本は中国の脅しに直面しながら気概を示した」とたたえた。日本政府がアストラゼネカ製を特例承認したものの、国内では当面使わない方針を決めたことを受け、蔡英文総統ら政権幹部が台湾への提供に向けて日本側と交渉を続けたとした。
**********
■ところが日台友好交流を象徴するこの快挙に対して水を差す報道もありました。早大在学中に中国政府給費留学生として2年間中国留学し卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務めたという自称「売文家」の御仁が日刊ゲンダイに寄せた記事です。
**********日刊ゲンダイ2021年6月4日09:06
友情か政治利用か 台湾にアストラ製ワクチン支援、日本政府への晴れない疑念
↑台湾の葵英文総統は感謝でも…(C)中央通信社=共同↑
コロナ対策“優等生”から一転して防戦一方となった台湾に、日本からアストラゼネカ製のワクチンの供与が検討されることになった。台湾総統・蔡英文は「深い友情に心から感謝」とツイッターに投稿、政権周辺からは感謝が連発された。
感謝を連発するのも無理はない。コロナ感染爆発を受け蔡英文政権は再選以来、最大の危機に直面しているのだ。感染爆発は“優等生”の仮面を見事に引きはがした。台湾は昨年以来、水際対策に全力を挙げる一方でワクチン争奪戦には全くの無為無策だった。
アストラゼネカ製約20万人分を備蓄するだけで、血栓の副反応の恐れがあるため誰もが接種しようとしなかった。それが感染爆発で医療関係者らへの優先接種により底をつき、支持率は急下降していたのだ。
「最大野党の国民党からは、東日本大震災の際、台湾は200億円を上回る義援金を日本に送った、日本は台湾のこの緊急事態に拱手傍観するのか、対日関係は史上空前の良好と胸を張る蔡英文政権は何している!との声が上がり、政治問題化させていましたから」(全国紙元台北支局長)
★毒を送るのと同じこと
しかし、台湾民間の受け止めは大きく異なる。アストラゼネカ製に大きな懸念が出ているのだ。台湾中立系新聞前社長は疑念を隠し得ない。
「日本はアストラゼネカ製を使っていない。それを台湾に供与するというのはゴミどころか毒を送るのと同じことだ!」
日本政府は副反応発生時の補償は供与時期、経路などと併せて早急に検討するという。一方で、台湾への自国産ワクチン無償供与を2度にわたって申し入れ、蔡英文政権に拒否された中国が、台湾はワクチンを独立のために政治利用していると強い不快感を表明した。 「大陸に隣接する台湾の金門島、馬祖島の住民は密かに大陸に渡ってワクチンを接種している。大陸製ワクチンの効力はアストラゼネカには劣るが副反応も小さいといわれているからだ」(前出の台湾中立系新聞前社長)
友情なのか、政治利用なのか――そんな議論はコロナウイルスの前では台湾海峡両岸の風前の塵。漢人が現実的であることは世界に冠たるものがある。その現実的判断は逆に政治、外交に大きな影響を及ぼすことになろう。 (売文家・甘粕代三)
**********
■賢明なる読者諸氏のバランス感覚からすれば、違和感を禁じ得なかったこととお察しします。
テレ朝台北支局開設に携わったのであれば、台湾の人々の親日ぶりは熟知しているはずですが、未だに中共側を賛美する論調が抜けないのは、2年間の中国政府官費留学中にハニートラップにかかったか、あるいは、中共に洗脳された可能性が高いのでは、と思わざるを得ません。
このように、中国共産党の毒牙にかかったジャーナリストは少なくないと思われます。また、外務省内にもチャイナスクールと呼ばれる人たちがおり、中国語を研修言語とした外交官たちが現地に語学留学した際に、中共にいろいろな手口で洗脳され篭絡され、中共賛美の考えに侵されて、平常の判断が出来なくなった輩がいるのは事実です。政治家で言えば、自民党の二階幹事長、立民党の小沢一郎が親中派の代表的な代議士です。
戦後、冷戦時代は、反共の立場から台湾(中華民国)の国民党と日本の自民党、とりわけ清和会の間に太いパイプが築かれており、清和会の起源である日本自由党の岸信介、鳩山一郎らが台湾と親交を築いていました。その後、その路線は福田赳夫や森喜朗ら、そして岸信介の孫の安倍晋三に引き継がれました。
ちなみに、群馬県出身の代議士では、福田赳夫の孫の福田達夫、尾身幸次の娘の尾身朝子、上野公成の娘婿の上野宏史が清和会に所属しています。
■一方、台湾側では、その間に国民党に替わり、本省人と呼ばれる台湾語を話す人たちで構成される民進党が政権をとるようになりましたが、それでもなお、絆は維持されてきました。
昨年7月30日に97歳で死去した李登輝氏の「偲ぶ会」(事実上の国葬)が行われた同年9月19日に森喜朗・元首相が、コロナ禍の中で、8月9日の弔問と併せて2回訪台したことからも、そのパイプの太さがうかがえます。
他方、台湾の現在の国民党は、かつて国共合作をした中国共産党との内戦に敗れ、台湾に逃げ込み、以来「大陸光復」(中国本土の統一)をスローガンに掲げて中共に対峙していたはずだったのに、いつの間にか中国共産党に同調してしまいました。そして、ついに国民党の馬英九総統が「中台サービス貿易協定」という売国的な協定を締結しようとしたその時、2014年3月18日に、台湾の多数の学生が立法院を実力で3週間占拠し、不平等な貿易協定の撤回を求めたのでした。
この「ひまわり学生運動」と呼ばれる立法院占拠事件で、台湾の政治は民主化後最大の試練を迎えましたが,王金平立法院長が事態収拾に動き,学生らは3週間に及んだ占拠を終了し立法院を退去しました。この「ひまわり学生運動」によって,「中国に呑み込まれたくない」という台湾人の感情がはっきりと示されたと言えます。
■もしこれが、中共政府だったどうでしょうか。その結果は、1989年6月4日(日)に北京で起きた天安門事件を見れば自ずと明らかです。
また、2014年当時「一国二制度」による高度な自治を標榜していた香港で、台湾のひまわり学生運動に触発されたこともあり、2017年香港特別行政区行政長官選挙から1人1票の「普通選挙」が導入される予定でした。ところが、中国の全人代大会常務委員会は2014年8月31日、「行政長官候補は指名委員会の過半数の支持が必要であり、候補は2-3人に限定する」と決定しました。その後、香港の民主化諸団体は、「指名委員会の多数は親中派で占められるため、中央政府の意に沿わない人物の立候補を事実上排除する方針だ」として、学生を動員して授業のボイコットを開始しました。
2014年9月26日から始まった香港特別行政区政府への抗議デモは、「雨傘運動」と呼ばれました。明らかに台湾の「ひまわり学生運動」に触発された行動だとみられます。結局、同年12月15日に警察が最後のデモ拠点を強制排除し、11週間余りにわたり道路が占拠された民主化要求デモは、中共によりねじ伏せられてしまいました。その結果は、現在の香港の実態でお分かりのとおりです。
■この香港における中国共産党の本質の一部始終を見ていた台湾の人々は、民主化を果たした台湾を再認識し、民主化の維持の重要性を痛感したのでした。我々も、現在当たり前に思っているこの民主化の恩恵の重要性について、台湾の人々のように、強く再認識しなければなりません。
【6月5日追記】
6月4日の夜、台北市にある台北101ビルには、日本への感謝、台日の絆を祝福するメッセージが映し出されています。その内容は以下のとおりです。
↑「台日の絆と感謝」↑
↑「合作對抗疫情」(協力して新型コロナウイルスに立ち向かおう)↑
↑「台日友誼長存」(台日は末永く友情を分かち合おう)↑
↑「台灣💛日本」(台湾♡日本)↑
↑「攜手🤝前行」(手をたずさえて前進しよう)↑
この地上101階、地下5階、高さ508mの台北101ビルは、台湾で実績豊富な熊谷組を中心としてJVにより7年間の工期を経て2004年12月31日にオープンし、2010年まで世界で最も高い建築物でした。最上階のレポートは次の記事を参照ください。
○2012年8月27日:海外食べある記・・・台湾/台北/欣葉101「食芸軒」↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/838.html
この他にも、かつて世界10大ホテルとして知られていた台北市の円山大飯店の正面の壁面に
「カンシャ」(感謝)の文字がライトアップされました。この円山大飯店は、羽田から台北の松山空港行きフライトで、左側の窓側席に座ると、松山空港への着陸直前によく見えます。
【群馬県台湾総会書記からの報告】
↑日台友情↑
↑台湾では、今回日本から提供された124万回分のワクチンを運んだ日航機809便が、6月4日の午後2時40分に台湾の桃園国際空港に着いたとして、天安門事件として知られる「1989年6月4日午前2時40分」に民主化を求める学生・市民らに中共政府が人民解放軍を使って武力弾圧に踏み切った時間と、フライトCodeの「809」と「6月4日」と午前と午後の違いはあるにしても「2時40分」が、いずれも数字的に一致するのは、何らかの因縁があるとして、話題になっています。実際には、ワクチンを載せた日本航空809便は6月4日午前11時に成田空港を出発し、午後1時58分(いずれも台湾時間)に桃園空港に到着したわけですが、2時40分は「?」にしても、天安門事件と奇しくも同じ6月4日に、中共のまき散らした武漢肺炎=COVID-19に対する救いの手が、日本から差し伸べられたことに、余計感慨深い思いを抱いたからこそのトピックスと言えるのではないでしょうか。↑
今回の迅速な台湾へのワクチン提供の実現は、6月3日の産経新聞の報道によれば、中国からの横槍を警戒しつつ、水面下で慎重に準備が進められてきた経緯があります。ワクチンを共同購入して途上国に分配する国際的枠組み(COVAX:コバックス)では時間がかかりすぎるため、安倍晋三前首相ら自民党議員も動き、迅速な提供が実現されたということです。以下、同報道記事を引用します。
■経緯としては、5月24日夜、東京都港区の台北駐日経済文化代表処で、台湾の謝長廷代表と米国のヤング駐日臨時代理大使の意見交換会に、薗浦健太郎元首相補佐官が招かれていました。謝長廷代表からアストラゼネカ製ワクチンの使い道を聞かれた薗浦補佐官は「日本はアストラゼネカ製のワクチンを公的接種では当面使わない。それを台湾に譲る動きもある」と答えると、ヤング大使も「グッドアイデアだ」と賛意を示しました。
台湾は、中国の武漢で未知のウイルスによる感染情報をいち早くキャッチし、中国政府の発する報道を一切信用せず、独自に厳格で迅速な水際対策を実施したことで、新型コロナウイルスの押さえ込みを実現していました。ところが、4月末にクラスターがあちこちで発生し始め、5月中旬から感染が急拡大したため、台湾政府は日本政府に5月の大型連休明け以降に、複数のルートで「100万回分ほどワクチンが融通できないか」と打診が届き、水面下での検討が進められてきました。
薗浦氏は翌5月25日、安倍氏に謝氏らとのやり取りを報告して協力を要請しました。2人は前政権で首相と、首相を支える首相補佐官や党総裁外交特別補佐として外交政策を担ってきた間柄でもあったため、安倍氏も「すぐにやろう」と応じました。
国有財産であるワクチンの譲渡は財務省の了解が必要となるため、麻生太郎副総理兼財務相に報告した上で、菅義偉首相のゴーサインを得ました。関係省庁間の調整役には加藤勝信官房長官が当たりました。
外務省は当初、コバックスを通じた提供を検討しましたが、安倍氏らから「それでは時間がかかりすぎる」との声が上がりました。台湾側からは「数量はともかく、スピード重視で対応してもらいたい」との意向が伝えられていたからでした。そのため、コバックスではなく日台間の相互援助の一環として提供する方針に転換しました。
日本が震災や新型コロナのマスク不足で困難に直面した際、台湾からは多額の義援金やマスクが届いた経緯があります。ワクチンはそのほんの一部のお返しという意味がこめられました。
懸念は中国側の動きでした。台湾はドイツのバイオ企業ビオンテックからの購入に動きましたが、契約寸前で頓挫し、蔡英文総統は「中国の介入で契約できていない」とアピールしました。中国側は妨害工作を否定していますが、もはや中国共産党一党独裁国家のいうことなど信じる者はいません。日本政府としては、中国の動向を注視しながら、情報管理には細心の注意を払い、今回のスピード重視のワクチン提供が実現したのです。
■ワクチン到着までの記事を、時間を遡りながら見てみましょう。
**********共同通信2021年6月4日20:49
日本からのワクチン、台湾到着
蔡政権が歓迎、謝意相次ぐ
↑台湾北部・桃園国際空港で、航空機から降ろされたワクチンが入ったコンテナ=4日(中央通信社=共同)↑
【台北共同】日本政府が台湾に無償提供した新型コロナウイルスワクチンが4日午後、台湾北部の桃園国際空港に到着した。日本が契約した英アストラゼネカ製で、124万回分が供与された。一部の台湾メディアは到着を実況中継。台湾人の関心は高く、党派を超えて日本への謝意表明が相次いだ。日本政府はコロナ対策支援を通じて日台関係を強化する狙い。
台湾では5月中旬から感染が拡大。防疫の鍵となるワクチンの調達が中国の妨害で遅れていただけに、蔡英文政権は日本からの提供を歓迎。ワクチン不足に不安を強めた市民の怒りに歯止めがかかり、国民党などによる政権批判も勢いをそがれるとみられる。
**********NHK News Web 2021年6月4日18:58
日本政府が無償提供のワクチン 台湾に到着
新型コロナウイルスの感染が急拡大している台湾に対し日本政府が無償で提供したワクチンが4日午後、台湾の空港に到着しました。
ワクチンは4日午前、成田空港から航空機で運ばれ、午後、台湾の桃園国際空港に到着しました。
台湾では先月中旬から新型コロナウイルスの感染が急拡大していますが、これまでに台湾に届いたワクチンはおよそ88万回分にとどまり、蔡英文総統は中国の妨害によって海外の製薬会社からのワクチンの調達が難航していると非難していました。
今回、日本政府が無償で提供したのは、アストラゼネカのワクチン124万回分です。
蔡総統は、ワクチンの到着後にオンラインで談話を発表し「奔走してくれた台湾と日本の当局と民間の人たちに感謝します。価値観を共有し互いに支え合う台日友好の真の意味が改めて示されました」と述べました。
また陳時中 衛生福利部長は、4日の記者会見で「THANK YOU」「台日友好」などと書いたパネルを掲げました。
そして、WHO=世界保健機関などが主導する国際的な分配の枠組み「COVAXファシリティ」を通じての供給は時間がかかると指摘し、日本がCOVAXではなく直接台湾に提供したことに「とても感謝する」と述べました。
★加藤官房長官「大切な友人 互いに助け合い」
加藤官房長官は、午後の記者会見で「新型コロナ感染症の収束のためには、あらゆる国、地域において、安全で効果的かつ品質が保証されたワクチンへの公平なアクセスの確保が重要だと考えている」と述べました。
そのうえで「台湾は、緊密な人的往来と経済関係を有する極めて重要なパートナーで、大切な友人でもある。東日本大震災の際に大変心温まる支援をいただくなど、大規模災害などの際にお互いに助け合ってきた。今回の供与は、こうした考え方に基づいて決定したもので、台湾における感染拡大の防止に寄与することを期待している」と述べました。
一方、記者団が中国側から外交ルートで抗議などはあったのかと質問したのに対し、加藤官房長官は「少なくとも私のところには、そうした外交ルートを通じた対応があったとは承知していない。報道では『日本はワクチンを政治的に利用している』といったコメントがあったということだが、人道的立場から行っているものであり、政治的利用といった批判は全く当たらない」と述べました。
★中国 台湾 蔡英文政権を強く非難
日本政府が台湾に対し、ワクチンを無償で提供したことについて、中国外務省の汪文斌報道官は、4日の記者会見で「台湾の民進党当局は、中国からのワクチンの提供をあらゆる手段で妨害し、さらに中国側がワクチンの調達を阻止していると偽っている。みずからの利益のために政治的な操作を続けている。これは台湾の同胞の命と健康を軽視し、人道主義の精神に反するものだ」と述べ、台湾の蔡英文政権を強く非難しました。
**********時事通信2021年06月04日18:07
天安門「忘れない」 台湾総統、犠牲者追悼
↑台湾の蔡英文総統=5月4日、台北(EPA時事)↑
【台北時事】台湾の蔡英文総統は、中国の民主化運動が武力弾圧された天安門事件から32年を迎えた4日、「天安門広場で犠牲になった若者や、ろうそくをともして毎年追悼していた香港の人たちのことを忘れない」とツイッターに投稿した。
蔡氏は「自由と民主主義を誇る全ての台湾人が、この日のことを永遠に忘れず、固く信念を守り続けると信じる」ともつづった。
一方、日本からの新型コロナウイルスワクチン支援に触れ、「自由と民主主義の価値を守るパートナーからの援助に感謝すると同時に、台湾が民主主義に対してさらに自信を持つきっかけになった」と日本の対応を称賛した。
**********東洋経済オンライン2021年06年04日12:15
日本が台湾へワクチン提供「恩返し」の重要な意味
正式な外交関係なくても世論次第でかかわれる
↑予想外の感染拡大を受けて台湾でもワクチン接種の機運が高まっている(写真:I-Hwa Cheng/Bloomberg)↑
6月3日、台湾時間の午後6時過ぎ、台湾の主要メディアは一斉に速報を出した。
「4日にも日本が台湾にワクチン提供」
日本政府は4日に、5月から新型コロナウイルスの感染が急速に拡大する台湾に新型コロナワクチンを提供すると正式に発表した。イギリス製薬大手、アストラゼネカ社製で、すでに124万回分のワクチンを載せた日本航空の飛行機は出発しており、台湾時間午後3時前に到着する予定だ。
5月末に日本から台湾へのワクチン提供案が明らかになってから、わずか1週間でのスピード決定だった。感染拡大が収まらず、ワクチンの調達にも難航していた台湾はこの朗報に沸いた。
★「3.11」から10年目の日本の動き
2011年の東日本大震災からちょうど10年目。当時、台湾が200億円以上の義援金を贈り、日台の「友情」が注目された。日台関係の節目となる今年、ワクチンを提供することで日本は「恩返し」する形だ。6月3日、茂木敏充外務大臣は「台湾は東日本大震災の際、いちはやく義援金を送ってくれた。困ったときは助け合うことが必要だ」と強調していた。
日本が台湾へワクチン提供する案が検討されていることが明らかになったのは5月27日から28日にかけてだ。台湾の陳時中・衛生福利部長(厚生労働大臣に相当)も「早ければ早いほうがいい。遅れると意味がない」と日本への期待を示していた。
そして6月4日、提供案が明らかになってから1週間でのスピード提供は正式な外交関係がない日台関係にとって異例ともいえる出来事となった。同日にはアメリカも台湾を含む世界各国にワクチンを提供すると明らかにしたが、時期は6月末になるとされ、台湾では日本のワクチン提供の早さにも注目が集まった。
台湾にとっても今回のワクチン提供はベストタイミングだった。もともと台湾は新型コロナ対策の優等生とされてきた。徹底的な水際対策や疫学調査によって4月末まで累計感染者数を1200例以下に抑えていたからだ。
ところが、5月に入り、大手航空会社のパイロットの感染やそのパイロットが自主隔離していたホテル、台北市内の風俗喫茶が立ち並ぶ繁華街でのクラスター発生がきっかけとなり、台湾全土に感染が拡大。6月3日時点で累計感染者数が9974人となっていた。
台湾国内での新型コロナ感染は起こりにくいだろうと考えていたため、多くの台湾人はワクチン接種を希望していなかった。台湾政府も今夏に台湾企業による国産ワクチンが供給される見通しだったため、海外製ワクチンの輸入をあまり優先していなかったようで、感染拡大時のワクチン摂取率は1%にも満たなかった。
だが、急速に悪化していく事態を目の当たりにして「疫苗荒(ワクチン不足によるパニック)」が問題になるほど、ワクチンへの関心が高まっていた。台湾にとっても今回のワクチン提供はベストタイミングだった。もともと台湾は新型コロナ対策の優等生とされてきた。徹底的な水際対策や疫学調査によって4月末まで累計感染者数を1200例以下に抑えていたからだ。
ところが、5月に入り、大手航空会社のパイロットの感染やそのパイロットが自主隔離していたホテル、台北市内の風俗喫茶が立ち並ぶ繁華街でのクラスター発生がきっかけとなり、台湾全土に感染が拡大。6月3日時点で累計感染者数が9974人となっていた。
台湾国内での新型コロナ感染は起こりにくいだろうと考えていたため、多くの台湾人はワクチン接種を希望していなかった。台湾政府も今夏に台湾企業による国産ワクチンが供給される見通しだったため、海外製ワクチンの輸入をあまり優先していなかったようで、感染拡大時のワクチン摂取率は1%にも満たなかった。だが、急速に悪化していく事態を目の当たりにして「疫苗荒(ワクチン不足によるパニック)」が問題になるほど、ワクチンへの関心が高まっていた。
★中国による妨害や牽制も
感染拡大が顕著になるつれ、台湾政府も海外製ワクチンの確保に向けて積極化。ワクチンメーカーや日米など各国政府にワクチンの供給や融通を水面下で打診した。しかし、ワクチンの確保は難航。台湾政府はその背景に台湾を自国の一部とみなす中国の影響があると主張する。
5月下旬、台湾の蔡英文・総統はファイザーとワクチンを共同開発しているドイツのビオンテックとワクチンの買い付けをめぐり「契約寸前までいったが、中国の介入で遅れた」と非難。中国の上海復星医薬が中華圏におけるビオンテックのワクチンの独占代理店となったことで、台湾がワクチンを入手できないというのだ。
中国側はこれを否定したが、中国外交部の趙立堅・副報道局長は「台湾は中国本土からワクチンを簡単に入手できる」と述べたほか、蔡総統の発言に対しては「われわれはこの『総統』なるものを認めていない。彼女は中国の一地区のリーダーにすぎない」と話した。台湾の陳時中・衛生福利部長はビオンテックとワクチン供給について共同発表を行う予定だったが、ビオンテック側が発表文から「国」という表記を削除するよう求めてきたことを明かしている。
さらに中国は日本によるワクチン供給案が明らかになると、日本側にも牽制をかけた。5月31日、中国外交部の汪文斌・副報道局長は「日本は現時点で自国のワクチンも十分な確保ができていない」とし、「ワクチン援助は生命を救うためだという理念に戻り、政治的な私利のための道具にしてはいけない」と語った。
実際、日本から台湾へワクチンを提供する案が浮上した際に「世論の反対が起きないかはひとつの焦点だった」と自民党外交部会の議論に参加する国会議員の1人は明かす。台湾にアストラゼネカ製のワクチンを供給しても数量は足りるものの、日本国内でワクチン接種が進んでいないなかで、他国にワクチンを供給することに批判が起きかねないとみられたからだ。5月27日から28日にかけて台湾へのワクチン提供案が浮上しているとの報道も世論の反応をみる観測気球だった。
★「台湾への恩返しをしようという後押しを感じた」
懸念は杞憂だった。台湾への提供予定が日本では接種を見合わせていたアストラゼネカのワクチンであったこともあるが、「メディアの報道姿勢やそれらへの反応から台湾への恩返しをしようという後押しを感じた」(前出議員)。台湾ではアストラゼネカのワクチンが他社製に先駆けて承認されている。
正式な外交関係がないことや中国からの圧力を回避するために、当初は国際的なワクチン共同調達の「COVAX(コバックス)」を通じて供給する方法も検討された。ただ、時間がかかることが課題となり、日本政府は緊急措置として日台間の援助の一環としてワクチンを提供する決定を下した。今後も複数回にわたり、台湾にワクチンを提供するとみられる。
今年4月に行われた日米首脳会談後の共同声明では「台湾海峡の平和と安定の重要性」という形で1969年以来、52年ぶりに「台湾」という単語が盛り込まれ、日本として正式な外交関係がない台湾とどう向き合うかが問われている。今回の迅速なワクチン提供は日本の世論が支持すれば、日本は主体的に台湾に関わることができるという実績になった。
**********共同通信2021年6月4日09:39
ワクチン提供、日本の友情証明 台湾各紙が報道
↑日本政府の新型コロナワクチン提供を1面で報じた4日付の台湾各紙=台北(共同)↑
【台北共同】4日付の台湾各紙は、日本政府が台湾に新型コロナウイルスの英アストラゼネカ製のワクチンを提供することを「日本の124万回分が今日台湾到着」との見出しで1面トップに掲載し、日台の友情を改めて証明したと報じた。米国が国際枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、台湾を含むアジアに700万回分を提供することも伝えた。
自由時報は「日本は中国の脅しに直面しながら気概を示した」とたたえた。日本政府がアストラゼネカ製を特例承認したものの、国内では当面使わない方針を決めたことを受け、蔡英文総統ら政権幹部が台湾への提供に向けて日本側と交渉を続けたとした。
**********
■ところが日台友好交流を象徴するこの快挙に対して水を差す報道もありました。早大在学中に中国政府給費留学生として2年間中国留学し卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務めたという自称「売文家」の御仁が日刊ゲンダイに寄せた記事です。
**********日刊ゲンダイ2021年6月4日09:06
友情か政治利用か 台湾にアストラ製ワクチン支援、日本政府への晴れない疑念
↑台湾の葵英文総統は感謝でも…(C)中央通信社=共同↑
コロナ対策“優等生”から一転して防戦一方となった台湾に、日本からアストラゼネカ製のワクチンの供与が検討されることになった。台湾総統・蔡英文は「深い友情に心から感謝」とツイッターに投稿、政権周辺からは感謝が連発された。
感謝を連発するのも無理はない。コロナ感染爆発を受け蔡英文政権は再選以来、最大の危機に直面しているのだ。感染爆発は“優等生”の仮面を見事に引きはがした。台湾は昨年以来、水際対策に全力を挙げる一方でワクチン争奪戦には全くの無為無策だった。
アストラゼネカ製約20万人分を備蓄するだけで、血栓の副反応の恐れがあるため誰もが接種しようとしなかった。それが感染爆発で医療関係者らへの優先接種により底をつき、支持率は急下降していたのだ。
「最大野党の国民党からは、東日本大震災の際、台湾は200億円を上回る義援金を日本に送った、日本は台湾のこの緊急事態に拱手傍観するのか、対日関係は史上空前の良好と胸を張る蔡英文政権は何している!との声が上がり、政治問題化させていましたから」(全国紙元台北支局長)
★毒を送るのと同じこと
しかし、台湾民間の受け止めは大きく異なる。アストラゼネカ製に大きな懸念が出ているのだ。台湾中立系新聞前社長は疑念を隠し得ない。
「日本はアストラゼネカ製を使っていない。それを台湾に供与するというのはゴミどころか毒を送るのと同じことだ!」
日本政府は副反応発生時の補償は供与時期、経路などと併せて早急に検討するという。一方で、台湾への自国産ワクチン無償供与を2度にわたって申し入れ、蔡英文政権に拒否された中国が、台湾はワクチンを独立のために政治利用していると強い不快感を表明した。 「大陸に隣接する台湾の金門島、馬祖島の住民は密かに大陸に渡ってワクチンを接種している。大陸製ワクチンの効力はアストラゼネカには劣るが副反応も小さいといわれているからだ」(前出の台湾中立系新聞前社長)
友情なのか、政治利用なのか――そんな議論はコロナウイルスの前では台湾海峡両岸の風前の塵。漢人が現実的であることは世界に冠たるものがある。その現実的判断は逆に政治、外交に大きな影響を及ぼすことになろう。 (売文家・甘粕代三)
**********
■賢明なる読者諸氏のバランス感覚からすれば、違和感を禁じ得なかったこととお察しします。
テレ朝台北支局開設に携わったのであれば、台湾の人々の親日ぶりは熟知しているはずですが、未だに中共側を賛美する論調が抜けないのは、2年間の中国政府官費留学中にハニートラップにかかったか、あるいは、中共に洗脳された可能性が高いのでは、と思わざるを得ません。
このように、中国共産党の毒牙にかかったジャーナリストは少なくないと思われます。また、外務省内にもチャイナスクールと呼ばれる人たちがおり、中国語を研修言語とした外交官たちが現地に語学留学した際に、中共にいろいろな手口で洗脳され篭絡され、中共賛美の考えに侵されて、平常の判断が出来なくなった輩がいるのは事実です。政治家で言えば、自民党の二階幹事長、立民党の小沢一郎が親中派の代表的な代議士です。
戦後、冷戦時代は、反共の立場から台湾(中華民国)の国民党と日本の自民党、とりわけ清和会の間に太いパイプが築かれており、清和会の起源である日本自由党の岸信介、鳩山一郎らが台湾と親交を築いていました。その後、その路線は福田赳夫や森喜朗ら、そして岸信介の孫の安倍晋三に引き継がれました。
ちなみに、群馬県出身の代議士では、福田赳夫の孫の福田達夫、尾身幸次の娘の尾身朝子、上野公成の娘婿の上野宏史が清和会に所属しています。
■一方、台湾側では、その間に国民党に替わり、本省人と呼ばれる台湾語を話す人たちで構成される民進党が政権をとるようになりましたが、それでもなお、絆は維持されてきました。
昨年7月30日に97歳で死去した李登輝氏の「偲ぶ会」(事実上の国葬)が行われた同年9月19日に森喜朗・元首相が、コロナ禍の中で、8月9日の弔問と併せて2回訪台したことからも、そのパイプの太さがうかがえます。
他方、台湾の現在の国民党は、かつて国共合作をした中国共産党との内戦に敗れ、台湾に逃げ込み、以来「大陸光復」(中国本土の統一)をスローガンに掲げて中共に対峙していたはずだったのに、いつの間にか中国共産党に同調してしまいました。そして、ついに国民党の馬英九総統が「中台サービス貿易協定」という売国的な協定を締結しようとしたその時、2014年3月18日に、台湾の多数の学生が立法院を実力で3週間占拠し、不平等な貿易協定の撤回を求めたのでした。
この「ひまわり学生運動」と呼ばれる立法院占拠事件で、台湾の政治は民主化後最大の試練を迎えましたが,王金平立法院長が事態収拾に動き,学生らは3週間に及んだ占拠を終了し立法院を退去しました。この「ひまわり学生運動」によって,「中国に呑み込まれたくない」という台湾人の感情がはっきりと示されたと言えます。
■もしこれが、中共政府だったどうでしょうか。その結果は、1989年6月4日(日)に北京で起きた天安門事件を見れば自ずと明らかです。
また、2014年当時「一国二制度」による高度な自治を標榜していた香港で、台湾のひまわり学生運動に触発されたこともあり、2017年香港特別行政区行政長官選挙から1人1票の「普通選挙」が導入される予定でした。ところが、中国の全人代大会常務委員会は2014年8月31日、「行政長官候補は指名委員会の過半数の支持が必要であり、候補は2-3人に限定する」と決定しました。その後、香港の民主化諸団体は、「指名委員会の多数は親中派で占められるため、中央政府の意に沿わない人物の立候補を事実上排除する方針だ」として、学生を動員して授業のボイコットを開始しました。
2014年9月26日から始まった香港特別行政区政府への抗議デモは、「雨傘運動」と呼ばれました。明らかに台湾の「ひまわり学生運動」に触発された行動だとみられます。結局、同年12月15日に警察が最後のデモ拠点を強制排除し、11週間余りにわたり道路が占拠された民主化要求デモは、中共によりねじ伏せられてしまいました。その結果は、現在の香港の実態でお分かりのとおりです。
■この香港における中国共産党の本質の一部始終を見ていた台湾の人々は、民主化を果たした台湾を再認識し、民主化の維持の重要性を痛感したのでした。我々も、現在当たり前に思っているこの民主化の恩恵の重要性について、台湾の人々のように、強く再認識しなければなりません。
【6月5日追記】
6月4日の夜、台北市にある台北101ビルには、日本への感謝、台日の絆を祝福するメッセージが映し出されています。その内容は以下のとおりです。
↑「台日の絆と感謝」↑
↑「合作對抗疫情」(協力して新型コロナウイルスに立ち向かおう)↑
↑「台日友誼長存」(台日は末永く友情を分かち合おう)↑
↑「台灣💛日本」(台湾♡日本)↑
↑「攜手🤝前行」(手をたずさえて前進しよう)↑
この地上101階、地下5階、高さ508mの台北101ビルは、台湾で実績豊富な熊谷組を中心としてJVにより7年間の工期を経て2004年12月31日にオープンし、2010年まで世界で最も高い建築物でした。最上階のレポートは次の記事を参照ください。
○2012年8月27日:海外食べある記・・・台湾/台北/欣葉101「食芸軒」↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/838.html
この他にも、かつて世界10大ホテルとして知られていた台北市の円山大飯店の正面の壁面に
「カンシャ」(感謝)の文字がライトアップされました。この円山大飯店は、羽田から台北の松山空港行きフライトで、左側の窓側席に座ると、松山空港への着陸直前によく見えます。
【群馬県台湾総会書記からの報告】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます