■2017年1月20日(金)午前11時から前橋地裁2階第21号法廷で開催される第8回口頭弁論期日まであと4日足らずと迫りましたが、1月13日付で被告群馬県の訴訟代理人弁護士から当会あてに、原告が2016年11月30日付で提出していた鑑定申立てに対する被告の意見書が1月16日に郵送で届きました。さっそく、内容を見てみましょう。
*****原告の鑑定申立に対する被告の意見書*****PDF ⇒ pdf.pdf
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平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原 告 小川賢,外1名
被 告 群馬県知事 大澤正明
鑑定申立に対する意見書
平成29年1月13日
前橋地方裁判所民事第2部合議係 御中
被告訴訟代理人弁護士 関 夕 三 郎
同 弁護士 笠 本 秀 一
同 指定代理人 福 島 計 之
同 指定代理人 松 井 秀 夫
同 指定代理人 阿 野 光 志
同 指定代理人 篠 原 孝 幸
同 指定代理人 油 井 祐 紀
同 指定代理人 安 藤 敏
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原告らの平成28年11月30日付け鑑定申立てに対する被告の意見は,下記のとおりである。
記
第1 意見の趣旨
鑑定の必要を認めない。
第2 意見の理由
1 はじめに
原告らの鑑定申立ては,鑑定方法の点において不適切であるという問題があるが,その問題は後述することにして,まず,本性長道の下層路盤材率その下の土壌を鑑定することの要否について説明する。
2 原告らの申立てに係る鑑定は原告らの請求を何ら基礎付けないこと
(1)被告の平成28年12月27日付け第8準備書面の第2・5項(6頁以下)で明らかにしたとおり,仮に本件農道に下層路盤材として敷設されているブレンド骨材やその下の土壌から土壌汚染対策法所定の基準値を超える六価クロムやフツ素が検出された場合,以下のようになる。
① 地下水を経由した摂取リスクの観点から,本件農道から概ね500メートルの範囲における飲用の井戸の存否を確認し,飲用の井戸が存在する場合は,その範囲に存在する適当な井戸(この井戸は飲用に限らない。)から採取した地下水の水質測定を行い,その結果が地下水に係る基準値を超過していなかったときは,「汚染の除去等のための措置」として,継続的に地下水の水質測定を行うことになる(土壌汚染対策法施行規則別表5・1)。
② 人体に直接触れるリスクの観点から,舗装等を行うことになるが,これは本件農道舗装工事により,既に施工されている。
(2)以上の説明では若干分かりにくいと思われるので,以下,鑑定を実施した場合に,その結果によって明らかになることや,論理的に帰結されることについ
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て,場合を分けながら整理する。
ア まず,鑑定の結果,土壌汚染対策法所定の基準値を超えていなかった場合は,その時点で,原告らの請求に理由がないことが明らかになる。
イ 他方,鑑定の結果,土壌汚染対策法所定の基準値を超過していた場合は,次に概ね500メートルの範囲に飲用の井戸があるかを調査することになる。
(ア)概ね500メートルの範囲に飲用の井戸が存在しない場合は,地下水を経由した摂取リスクの観点からの措置は求められず,求められるのは,人体に直接触れるリスクを除去するための舗装等の措置のみとなる。したがって,この場合は,結果的に本件農道舗装工事の正当性を裏付ける帰結となり,原告らの請求に理由がないことが明らかになる。
(イ)他方,概ね500メートルの範囲に飲用の井戸が存在する場合は,更に適当な井戸を選定して地下水の水質測定を行うことになる。
i 水質測定の結果,地下水に係る基準値を超過していなかった場合は,地下水を経由した摂取リスクを除去するための水質測定を継続することになる一方,人体に直接触れるリスクを除去するために舗装等が求められることになる。すなわち,この場合も,結果的に本件農道舗装工事の正当吐が裏付けられることになり,原告らの請求には理由がないことが明らかになる(なお,水質測定を継続するか否かは,原告らの本件請求とは関連性がなく,本件訴訟の審理の対象外である。原告らの請求を離れて継続的な水質測定の要否の判断に踏み込むことは,住民訴訟の制度趣旨を逸脱するものであり,許されない。)。
ii 他方,水質測定の結果,地下水に係る基準値を超過していた場合は,遮水工封じ込めや土壌汚染の除去等の措置(乙21・5頁以下参照)が求められることになる。この場合に限って,本件農道舗装工事の正当性に疑義が生ずる。
(3)要するに原告らの請求が基礎付けられるのは,上記2(2)イ(イ)iiの場合に限られるから,結局,①下層路盤打率その下の土壌が土壌汚染防止法上の基準
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値を超えていること,②概ね500メートルの範囲に飲用の井戸が存在すること,③概ね500メートルの範囲から選定した適当な井戸から採取した地下水が地下水に係る基準値を超過していることの3つが全て証明されなければならない。
しかるに被告は,大同特殊鋼株式会社から排出された鉄鋼スラブが用いられた群馬県内の地点について,土壌汚染対策法所定の手順に従って水質測定を実施しているところ,平成28年9月末現在,地下水に係る基準値を超過した結果が出た地点はない(添付資料参照)。したがって,現時点で鑑定を進めても,上記③の事実が証明される可古仏すなわち,本件農道から概ね500メートルの範囲から選定した適当な井戸から採取した地下水が地下水に係る基準値を超過している可能性は,極めて低い。
(4) 以上の次第であるから,原告らの申立てに係る鑑定によりどのような結果がでても,それによって原告らの請求が基礎付けられる見込は極めて乏しいから,鑑定の必要性はないと言わざるを得ない。
なお,現時点で,地下水に係る基準値を超過している可能性が皆無と言い切れるものではないので,原告らにおいて,私的に測定を実施するなどして地下水に係る基準値を超過している可能性があることを疎明した場合(例えば,基準値は超過していないが,相当程度の有害物質が検出された場合など)は,別途検討する余地はある。
3 鑑定の方法について
以上のとおり,そもそも鑑定の必要性は認められないが,念のため,原告らが提案する鑑定の方法について意見を述べておく。
原告らは,ブレンド骨材の中から鉄鋼スラブのみを抽出して検査を行う方法を提案している。
しかし,地下水を経由した摂取のリスクの除去の観点からは,一定の広がりのある範囲内に有害物質がどの程度含有されているかが環境に与える影響の程度を左右するから,鉄鋼スラブを抽出して検査することには全く合理性がない。むしろ,環境負荷の程度を判断する上で誤りを生ずる恐れが高く,不合理な検査方
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法である。
以上
****添付資料******PDF ⇒ ytpdf.pdf
http://www.pref.gunma.jp/houdou/e1700096.html
最終更新日:2016年12月15日
【12月15日】大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する使用箇所の解明等の状況について(廃棄物・リサイクル課)
大同特殊鋼株式会社渋川工場から排出された鉄鋼スラグについて、平成27年9月11日に廃棄物処理法に基づく調査結果を公表後、使用箇所の解明及び環境調査を進めてきたところですが、現在の状況は次のとおりです。
1.使用箇所の解明及び環境調査
(1)公共工事について
<1> 平成27年9月11日に県から県内全市町村、及びスラグ再生路盤材の出荷記録があった国関係機関に対して調査を要請したところ、平成28年3月末時点では、使用が確認された工事は325箇所であった。
その後、別表のとおり林野庁関東森林管理局、渋川市及び東吾妻町から新たに12箇所の報告があり、平成28年9月末現在、使用箇所の合計は337箇所となった。
<2> 改めて、県では、環境調査が終了していない工事実施主体に対して、迅速な実施と結果の報告を要請した。
(2)民間工事について
<1> 平成27年9月12日、県から大同特殊鋼(株)に対して、民間工事における鉄鋼スラグの使用箇所の解明及び環境調査を指示したところ、平成28年9月末現在、70箇所の報告があった。
<2> 県では、同社に対して、引き続き使用箇所の全容解明に当たるとともに、判明した使用箇所における環境調査の加速化と結果の報告を指示した。
(3)環境への影響調査について
調査の結果、土壌汚染が確認された場合には、県が直接周辺地下水の調査を実施し、環境への影響を確認してきている。これまでの調査の結果では、地下水への影響は認められない。
2.今後の対応[従前のとおり]
<1> 今後とも鉄鋼スラグの使用箇所の解明を進め、新たに使用箇所が判明した場合は、これまでと同様の方法で環境調査を行い、その結果を速やかに公表する。
<2> 判明した使用箇所はすべて県がリスト化し、環境への影響について監視を行っていく。
【別表】
大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグの使用箇所等 調査状況
平成28年9月末現在
1.公共工事
工事実施主体:施工箇所数(計=H28.3.31時点の箇所数+新たに判明した個所数)/環境調査実施箇所数/土壌環境基準等の超過箇所数(スラグ・土壌・周辺地下水)
国土交通省(関東地方整備局):66=66+0/66/27・5・0
林野庁(関東森林管理局):26=17+9/5/0・-・-
防衛省(北関東防衛局):1=1+0/1/0・-・-
(独)水資源機構:16=16+0/16/8・1・0
群 馬 県:58=58+0/58/1・0・-
前 橋 市:14=14+0/14/8・7・0
渋 川 市:80=78+2/78/52・42・0
榛 東 村:5=5+0/5/5・3・0
吉 岡 町:17=17+0/15/3・6・0
中之条町:3=3+0/1/1・1・0
長野原町:2=2+0/2/0・1・0
東吾妻町:18=17+1/14/0・-・-
昭 和 村:7=7+0/1/1・1・0
みなかみ町:24=24+0/0/-・-・-
計 :337=325+12/276/106・67・0
(注)本表は、平成28年9月末現在の工事実施主体からの報告または工事実施主体ごとの公表資料を整理したものである。
2.民間工事
民間工事:施工箇所数(計=H28.3.31時点の箇所数+新たに判明した箇所数)/環境調査実施個所数/土壌環境基準等の超過個所数(スラグ・土 壌・周辺地下水)
民間工事:70=48+22/42/28・19・0
(注)本表は、平成28年9月末現在の大同特殊鋼(株)からの報告を整理したものである。
○このページについてのお問い合わせ
環境森林部廃棄物・リサイクル課
〒371-8570 前橋市大手町1-1-1
電話 027-226-2851
FAX 027-223-7292
E-mail haikirisaka@pref.gunma.lg.jp
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■ご覧いただいた通り、これまであれほど「敷砂利ではない」という釈明に使っていた「ステージコンストラクション」は全く影を潜め、土壌汚染対策法の「地下水の環境基準」一本やりです。土壌汚染対策法は土壌の汚染について規定しているはずですが、被告はなぜか地下水に係る環境基準値だけにこだわっています。
それも、有毒スラグを天然砕石で薄めたから、周辺の地下水の環境基準値はこれまでい一度も超過したことがないので、地下水への影響は認められない、という論理です。であれば、なぜ農道を舗装したのでしょうか?
被告のこの論理の矛盾について、来る1月20日(金)午前11時00分から前橋地裁2階21号法廷で開催される第8回口頭弁論期日で徹底的に追及したいと思います。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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