↑昨年度まで毎年発行され、一般販売されていた群馬県職員録↑
■当会は、毎年6月になると、県庁の地下1階にある生協のカウンターで当該年度の「群馬県職員録」を購入しています。これまでの購入履歴をチェックしたところ、平成30年度は税込みで900円でしたが、その後、令和2年度、3年度、4年度は950円となり、令和5年度は1050円となりました。値上げラッシュの今年度は1150円になるのかな、と思いつつ、1,000円札と小銭を用意して、6月3日の昼休みに県庁の地下1階を訪れました。
↑例年、6月の営業初日に当該年度の群馬県職員録を販売開始している群馬生協生活協同組合のカウンター。群馬県庁の地下1階にある↑
いつもなら、生協のカウンターに、当該年度の「群馬県職員録」が山積みされていて、生協の販売担当者が威勢よく声がけをしているのですが、今回は、誰もいないし、カウンターの机の上はガランとしています。近くにいた女性の担当と思しきかたに、「あのう、今年度の群馬県職員録はどこで売っていますか?」と尋ねたところ、思いもよらない返事がありました。
「今年度から職員録は販売中止となりました」
■当会は仰天して、「いったいどうしたわけですか?」と訊くと、「こちらもなぜだかわかりませんが、私たちも困ってしまっているんです」とのこと。そこで「誰が販売取りやめを決めたのですか?」と重ねて訊いたところ、「人事課です」という返事でした。
さっそく、昼休み時間も終わったので、県庁8階にある人事課に向かいました。応対してくれたのは、人事課企画係の久保塚直樹係長と、高橋風子副主幹でした。
なぜ県職員録を今年度から販売中止としたのか、理由を尋ねたところ、「職員の安全確保」ということで、「きちんとした使い方をする人ばかりでなく、そうでない使い方をする県民がいるため、こうした措置をとった」とのことです。例としては、「営業電話から職員を安全に隔離する」ということが挙げられました。
当会からは、「かつて20年ほど前までは、群馬県職員録は自宅の住所や電話番号も記載されていたが、その後、プライバシーの観点から記載をやめるようになった。県の職員の氏名と所属部署と職位は、行政サービスの基本情報なので、従来通りで何ら支障はない筈。電子化の流れで、ホームページに掲載しているのであれば、そのURLを教えてほしい」と申し入れました。
↑当会が保存している平成14年度(2002年度)の群馬県職員録。当時は、職員の自宅住所や電話番号まで掲載されていた。印刷は朝日印刷工業㈱。↑
しかし、群馬県人事課によると、そうした措置はしておらず、そもそも職員録の製本版の販売中止すら、プレスリリースをしておらず、こうして問い合わせがあった場合には、「今年度から職員録は販売しませんので、ご理解をお願いします」と伝えることにしているのだそうです。
なお、人事課によれば、今年度以降も、県内の市町村や、県の外郭団体向けには、群馬県職員録を配布するようです。しかし、一般の納税者・県民には販売しないわけで、この線引きの範囲についても質問しましたが、明確な回答は得られませんでした。
■確かに、紙の「職員録」の廃止については、いくつかの自治体で実施されています。
例えば、山形県では、事務事業の見直しの一環として、2023年度から、紙の職員録を廃止し、データ化による経費削減を図っています。
**********山形新聞2023年7月30日10:48
紙の「職員録」廃止 県、事務事業見直しの一環・データ化し経費削減図る
↑県は紙の職員録の発行を止めた。最後となった2022年度版(右)と、県人事課に残る1912~14(大正元~3)年度版(左上)と43年(昭和18)年度版↑
県は明治時代から発行してきた紙の「職員録」を本年度から廃止した。事務事業の見直しの一環で、県人事課は職員の作業時間約320時間、経費約170万円の削減につながるとみている。一般販売もしていたため、企業や個人から「今年は出ないのか」と問い合わせが40件程度寄せられており、県人事課は「趣旨を説明し、理解してもらっている」としている。
同課によると、職員録には病院など一部部局を除きほぼ全ての正職員の氏名と役職、担当などを記載していた。2022年度は約3100部を作り、約1400部を庁内や出先機関に配布した。約1220部は関係団体が購入し、残りは県庁の売店で1冊2400円で販売していた。各部局による掲載内容確認など製作に要する職員の負担が大きく、昨年度から廃止を検討してきた。
全国でも同様の動きがあり、神奈川県や愛媛県などは既に紙の職員録の刊行をやめている。東北の他県は、県や県庁生協が発行・販売を続けているが、福島県は省力化と経費削減を目的に19年度から庁内向けを電子データ化した。宮城県の担当者は「紙での発行の是非については毎年予算要求の段階で話題に上る」と話す。
県は本年度の職員録については内容を簡略化・データ化し庁内のネットワークで閲覧できるようにしており、業務に支障はないという。また、外部向けに代替策として幹部職員名簿を県ホームページに公開している。
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千葉県も同様に、2024年度からインターネットの普及やペーパーレス化の推進、コスト削減のために職員録の作成を終了しています。
**********千葉県HP 2024年5月16日
印刷報道発表案件 更新日:令和6(2024)年5月16日 ページ番号:665395
「千葉県職員録」の作成終了について
発表日:令和6年5月16日 総務部人事課
これまで毎年作成していた「千葉県職員録」については、インターネットの普及による問い合わせ手段の充実、ペーパーレス化の推進やコスト削減などの観点を踏まえ、本年度以降、作成は行いません。
<職員名簿の閲覧について>
県職員や市町村などの関係機関における業務用として、簡易な「職員名簿」を作成します。
職員名簿は文書館・地域振興事務所において閲覧が可能です。
(文書館では有償による複写も可能です。)
なお、「千葉県幹部職員一覧」については、引き続き千葉県ホームページに掲載しています。
<お問い合わせ>
所属課室:総務部人事課人材育成班
電話番号:043-223-2082
ファックス番号:043-224-2212
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このほか、神奈川県では、2021年度から職員録を廃止しましたが、その理由は、群馬県人事課と同じく「職員録を使った職員への営業電話が後を絶たず、業務に支障が生じている」というものです。
**********神奈川新聞2021年6月16日(水)21:30
「営業電話が後絶たず、業務に支障」 神奈川県が明治期から続く職員録廃止へ
↑廃止される方針が決まった神奈川県の職員録。左は1928(昭和3年)のもの↑
神奈川県が明治期から発行を続けてきた「職員録」を2021年度発行分から廃止することが16日、県への取材で分かった。職員録を使った職員への営業電話が後を絶たず、業務に支障が生じていることなどから廃止に踏み切る考えだ。
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他方、一度、紙の職員録の廃止を決めたのに、1年後の今年度から、電子版と併用の形であるにせよ、復活した自治体もあります。愛媛県です。
**********時事通信社2024年05月18日03:50
紙の職員録、希望多数で復活=廃止1年、電子版と併用―愛媛県
↑紙冊子で発行された2018~22年度版の愛媛県職員録=16日、松山市↑
自治体職員の名前や所属、内線番号を網羅した「職員録」。近年電子化する取り組みが各地で進む中、愛媛県は今年度、一度廃止した紙版を電子版と併用する形で復活させることにした。ペーパーレスの時代にも、すぐに使える紙冊子を求める多くの職員の要望に応えた。
県は昨年度、紙冊子の発行をやめ、電子版を庁内ポータルサイトに掲載。年間180万円ほどの印刷費を削減した。しかし、人事課と県職員消費生活協同組合(生協)によると、一部職員が紙版を要望。生協が職員アンケートを行ったところ、1311人のうち約6割の771人が「紙での販売を希望する」と答えたため、復活を決めた。
紙版はこれまで各部署や報道機関に無償で配り、さらに必要なら生協で購入を促していた。今年度からは無償配布せず全て有料に。価格は生協員が1000円、外部は1800円と以前と同額。2022年度は約4400部を発行したが、今年度は2000部ほどに減らす。庁内で希望を募り、5月下旬から販売する予定。
人事課は電子版の導入の際、検索や索引の機能を取り入れ、利便性向上に努めた。担当者は、要望が多かった理由を「紙で保管したい人もいるのでは」とみる。紙冊子は毎年400ページほどと決して薄くはないが、庁内からは「職員の過去の所属を知りたいときに便利」(40代男性)、「紙は見たいときにすぐ開ける」(50代男性)との意見が聞かれる。一方で「検索できるから電子でいい」(20代女性)との声も。
県が21年に策定したデジタル総合戦略では「ペーパーレス化の推進」が明記された。県はこれに沿って報道資料や議案書などを完全電子化してきたが、職員録は現時点で難しいようだ。ある幹部は「本当にアンケートの結果なのか。信じたくない」と落胆。別の幹部は「電子書籍がありながら紙の本があるのと同じ。紙も良しあしある」と評価していた。
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■こうした紙の職員録を巡る廃止の動きは、デジタル化の進展と環境への配慮、また経費削減の必要性から、全国的に見られる傾向であることは事実です。その代替方法として、職員録の情報は、必要に応じて電子データで提供されることが多くなっており、一部の情報は自治体のホームページで公開されることもあります。このような変更は、業務の効率化と公共資源の節約に寄与する側面を有していると考えられます
しかし、群馬県の場合、「職員の安全」という理由が、職員録廃止の大義名分となっています。これは、一体何を意味するのでしょうか?
事務に支障をきたすほど、業者からの営業電話の攻勢に悩むのであれば、電話口に業者が出たら、用件を聴き、単なる営業活動であれば、「窓口に名刺箱を置いてあるので、そこに名刺を入れておいてください」とぴしゃりと言えば済むのであって、「電話に出ることすら、煩わしい」ということになると、「単に静かに仕事場にいたい」ということと同じことではないでしょうか。
しかも、群馬県の場合、人事課の説明によると、記者発表もせず、ホームページでも公表していないし、そうした予定もないとのことです。また、紙の職員録に代えて、電子版の職員録をホームページ上で公開すれば、何の問題もありませんが、その予定もなさそうです。
となると、「職員の安全」というのは単なる名目で、当会のような市民団体からの追及をかわすために、職員に係る情報を最大限に秘匿しようという魂胆も見え隠れするという疑惑の念も湧いてきます。
■いずれにしても、群馬県人事課の説明はもどかしいので、情報開示請求をすることにし、午後1時40分からの県警本部での打ち合わせを済ませた後、土砂降りで雷鳴が轟く中、午後4時50分に県庁に移動して、定刻の5時15分までに公文書開示請求書を提出することが出来ました。
群馬県総務部人事課から、どのような説明資料が出て来るのか、待ちたいと思います。
ちなみに、公務員の氏名について、平成17年8月3日付の総務省の見解は「特段の支障の生ずるおそれがあ る場合を除き、公にするものとする。なお、特段の支障の生ずるおそれがある場合とは、 以下の場合をいう。 ① 氏名を公にすることにより、情報公開法第5条第2号から第6号までに掲げる不開 示情報を公にすることとなるような場合 ② 氏名を公にすることにより、個人の権利利益を害することとなるような場合」となっています。
そして、ここでいう「公にする」とは、職務遂行に係る公務員の氏名を求められれば応じるとの趣旨であり、対外的に積極的に周知することまで義務付けるものではなく、また、上記取扱方針に基づき行政機関が公にするものとした職務遂行に係る公務員の氏名については、今後は、情報公開法に基づく開示請求がなされた場合には、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(第5条第1号ただし書イ)に該当することとなり、開示されることとなる、としています。
なので、今回の情報開示請求では、職員録も含めているので、予断は許されないものの、何らかの形で開示されるのではないか、と予測されます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
https://www.naraken-gojyokai.or.jp/oshirase/oshirase23287.html
こちらも突然で 説明もなく また電子版の提供もありません
見たければ情報公開窓口に足を運んで 目的を言え コピーしたければコピー代払え という対応です