■公務員のズサンな勤怠管理で多額の血税が失われていることは各地の事例で明らかですが、不祥事件が多発する前橋市の場合、やはりきちんとした職員管理ができていないことが大きな要因の一つと思われます。そこで、当会では不倫相手の職員の時間外手当を不正に認めていた前橋市役所の実態を正すべく、2018年7月2日付で、住民監査請求に踏み切りました。その後、8月1日に陳述を行い、同30日に前橋市監査委員事務局から監査結果通知が送られてきました。さらに9月8日に同じく監査委員事務局から、「住民監査結果に対する措置通知」が届きました。内容を精査した結果、当会としては、ぬるま湯体質の前橋市役所を正すためには、やはり住民訴訟を提起するしかないとの結論に達し、9月28日訴状を提出しました。その後、地裁からの指示より11月2日までに訴状訂正申立書を提出しました。すると、地裁から11月7日付で事務連絡として、第1回口頭弁論が12月12日(水)午前10時に開かれるとの通知が到来し、被告前橋市長からも11月30日付で答弁書が12月1日に当会事務局に届きました。そして12月12日の第1回弁論を経て、2019年1月21日付で被告から第1準備書面と乙号証が送られてきたあと、1月30日に前橋地裁本館2回第21号法廷で第2回口頭弁論が開かれました。2月21日に被告前橋市から第2準備書面、3月6日には不倫職員に支払われた時間外手当と病欠休暇中の給与の支給額と支給日に関する乙号証が送られてきたあと、3月8日に原告準備書面(1)を出し、3月13日(水)10時から第3回口頭弁論、さらに4月15日に原告準備書面(2)を出し、4月24日(水)10時から第4回口頭弁論で、裁判長から指揮があり編原告準備書面(2)を出し直しました。そして、7月3日(水)10時から開廷予定の第5回口頭弁論が迫る中、6月26日に被告前橋市から第3準備書面が送られてきました。
↑不倫職員や窃盗職員に加えて、ついに殺人者まで現れてしまった前橋市役所。↑
なお、この問題の経緯等は次のブログをご覧ください。
〇2018年3月29日:再発防止になるの?…印章偽造の職員に減給10分の1(1か月間)の大甘処分を決めた前橋市↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2600.html
〇2018年5月3日:前橋市役所職員による勤務不正申告の実態について前橋市長に報告書を提出↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2628.html
○2018年6月5日:前橋市職員による勤務不正申告の実態報告書の感想と見解を聴取すべく前橋市役所を訪問↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2659.html
○2018年7月2日:前橋市職員による勤務不正申告の実態報告をもとに前橋市に損害回収を求める住民監査請求書を提出↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2683.html
〇2018年7.月4日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求める住民監査請求書の内容を確認してきた前橋市監査委員↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2684.html
○2018年7月15日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求める住民監査請求書をようやく受理した前橋市監査委員↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2697.html
○2018年8月2日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求める住民監査請求手続のため監査委員の面前で陳述↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2718.html
○2018年9月3日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求める住民監査請求の結果通知が到来!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2741.html
〇2018年9月21日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求めた住民監査結果に対する措置通知到来!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2761.html
○2018年9月28日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求め住民訴訟を提起!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2765.html
〇2018年11月2日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求めた住民訴訟で訴状訂正申立書を地裁に提出↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2799.html
○2018年11月9日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求めた住民訴訟第1回弁論が12月12日(水)10時と決定!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2806.html
○2018年12月3日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収の12.12住民訴訟に向けて被告前橋市から答弁書!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2835.html
○2019年1月23日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収住民訴訟の1.30第2回口頭弁論が迫る中被告前橋市から準備書面!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2866.html
○2019年2月4日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収住民訴訟・・・1月30日の第2回口頭弁論の模様↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2877.html
○2019年2月23日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収住民訴訟・・・被告前橋市から時間外と病欠中の支払情報が到来↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2884.html
6月26日に届いた被告の裁判資料(第3準備書面と証拠説明書および乙15号証)は次のとおりです。
*****送付書兼受領書*****
前橋地方裁判所民事第1部合議係 御中
ご担当書記官 森山 様
原告
鈴木 庸 様
令和元年6月24日
前橋市大手町3丁目4番16号
被告訴訟代理人
弁護士 石 原 栄 一
弁護士 猿 谷 直 樹
弁護士 安カ川 美 貴
電話027-235-2040
送 付 書
事件の表示:御 庁 平成30年(行ウ)第12号
事件名 不倫職員時間外手当等不正支払損害賠償請求事件
当 事 者:原 告 鈴木 庸
被 告 前橋市長 山本龍
下記書類を送付致します。ご査収の程,宜しくお願い申し上げます。
1 第3準備書面 1通
2 乙第15号証 1通
3 証拠説明書(乙15)
以上
------------------ 切らずにこのままでお送り下さい ------------------
受 領 書
上記書類、本日受領致しました。
令和1年6月26日
原告 鈴木 庸 印
前橋地方裁判所民事第1部合議係(森山書記官)御中:FAX 027-233-0901
石原・関・猿谷法律事務所(弁護土 安力川美貴)行:FAX 027-230-9622
*****被告第3準備書面*****
<P1>
平成30年(行ウ)第12号 不倫職員時間外手当等不正支払損害賠償請求事件
原 告 鈴 木 庸
被 告 前橋市長 山本龍
第3準備書面
令和元年6月24日
前橋地方裁判所民事第1部合議係 御中
〒371-0026
群馬県前橋市大手町3丁目4番16号
石原・関・猿谷法律事務所(送達場所)
TEL 027-235-2040 / FAX 027-230-9622
被告訴訟代理人弁護士 石 原 栄 一
同 弁護士 猿 谷 直 樹
同 弁護士 安 力 川 美 貴
同 指定代理人 宮 坂 恵 理 子
同 指定代理人 加 藤 正 寛
同 指定代理人 吉 永 和 也
<P2>
第1 平成31年3月8日付け原告準備書面(1)に対する認否
1 「第1 請求1 について<不正その③>」について
(1) 第1段落
平成29年6月18日に地域づくりフェスタが開催されたこと,小島美帆(以下,「訴外小島」という。)が同フェスタに配偶者と子どもと参加したこと,及び訴外小島に対して同日午前10時から正午までの2時間分の時間外手当が支給されたことはいずれも認め,訴外小島の様子を南橘公民館職員が目撃していたことは不知,その余は否認する。
(2) 第2段落
訴外小島が地域づくりフェスタの担当者でなかったこと及び訴外小島の出勤が休日出勤であったことはいずれも認め,評価は争う。
(3) 第3段落
地域づくりフェスタの担当者が石田健一(以下,「訴外石田」という。)とともに出勤していたことは認め,その余は不知。
(4) 第4段落
否認ないし争う。
(5) 第5段落
争う。
(6) 第6段落
訴外小島が,時間外勤務命令簿(乙11)に自ら必要事項を記入したこと,及び同書面の確認印及び所属長の欄の押印が訴外石田のものであることはいずれも認め,その余は否認する。
(7) 第7段落
原告の畢寛独自の見解であり,認否の必要性を認めない。
2 「第2 請求2について<不正その④>」について
(1) 1項について
ア 第1段落ないし第6段落(求釈明1まで)
<P3>
不知。なお,求釈明1は,本件訴訟と関係のない事実に関する求釈明であるため,回答しない。
イ 第7段落
認める。
ウ 第8段落
7月14日付けの診断書(乙8の1)に「※本人より提出されたのは,7/1であることを確認済み。(7/18)」との記載があることは認め,その余は否認する。同筆跡は前橋市職員課の職員が,提出年月日を記載したものである。
エ 第9段落
訴外小島が謝罪をしたことについては認否の必要性を認めず,その余は,否認する。訴外小島は,診断書を訴外石田に提出していない。
オ 第10段落ないし第19段落(求釈明2まで)
否認する。詳細は被告の主張のとおり。なお,釈明2のうち,訴外小島の診断書の提出,病気休暇承認の過程については,「第3 被告の主張」を確認されたい。また,休暇等承認簿に関する求釈明に関しては,被告が原告に送付した乙9号証の写しに職員課長印が押印されていないように見える,の押は印が経年劣化により薄くなってしまったため,コピーした際に反映されなかったためである。乙第9号証原本には,職員課長印の押印がある(乙9)。
カ 第20段落及び第21段落(求釈明3まで)
不知。なお,求釈明3は,回答する必要性を認めない。
キ 第22段落
訴外小島が10月3日に清王寺クリニックを受診したこと及び同クリニック中屋みな子医師が同日付の診断書を作成したことはいずれも認め,その余は否認する。訴外小島は,訴外石田に対して,同診断書を提出していない。
ク 第23段落
休暇等承認簿(乙9)に主務部長,主務課長,主務係長・出先機関の長,職員課長の各押印がされていること及び被告が訴外小島に対して,平成29年10
<P4>
月16日から同年11月13日まで休職を命じたことはいずれも認め,その余は否認する。
ケ 第24段落
訴外小島が10月31日に清王寺クリニックを受診したこと,同クリニック中屋みな子医師が同日付の診断書を作成したこと,及び被告が訴外小島に対して,平成29年12月31日まで休職を命じたことはいずれも認め,その余は否認する。
コ 第25段落及び第26段落(求釈明4)
平成29年10月31日付け診断書(乙8の3)に,「但し,職場復帰に向けてリハビリ出勤をすることは可能です」との記載があることは認め,その余は否認する。
詳細は,「第3 被告の主張」のとおりであるが,訴外小島は,平成29年12月1日より,ならし勤務をしている。
サ 第27段落ないし第31段落(求釈明5まで)
認否及び求釈明に回答する必要性を認めない。
なお,第30段落の記載は,訴外小島の名誉またはプライバシーを侵害するおそれのある記載であり,原告の訴外小島に対する不法行為となりかねないことを付言する。
シ 第32段落ないし第35段落
原告の畢寛独自の見解であり,認否の必要性を認めない。
ス 第36段落
争う。
(2) 2項について
被告の主張の引用箇所については認否せず,病気休暇の期間が連続して90日を超えてはいけないこと,及び被告が,訴外小島に対し,平成29年7月18日から同年10月15日まで病気休暇を承認したことは認め,その余の原告の評価,推測は争う。
<P5>
被告が,訴外小島に対し,平成29年7月18日から同年10月15日まで病気休暇を承認したことに何ら違法はない。
また,求釈明6に関しては,「第3 被告の主張」を確認されたい。
(3) 3項について
被告の主張の引用箇所については認否せず,その余は認否の必要性を認めない。
また,求釈明7ないし求釈明9については,回答の必要性を認めない 。
(4) 4項について
本件訴訟と関係のない主張であるため,認否しない。
3 「第3 まとめ」について
認否の必要性を認めない。
第2 平成31年4月15日付け原告準備書面(2)及び令和元年5月28日付け原告準備書面(2)に対する認否
原告の主張は争う。詳細は,以下に述べる「第3 被告の主張」のとおり。
第3 被告の主張
1 本件時間外手当について
以下に述べるとおり,訴外小島及び訴外石田には,訴外小島が本件時間外手当を受給したことにつき,故意または過失が認められない。
(1) 時間外勤務命令の一般的な処理方法について
南橘市民サービスセンターでの時間外勤務命令の処理については,通常,以下のとおりの手順で行われていた。
まず,前提として,時間外勤務命令は,出先機関の長であった訴外石田の単独の判断で出すことができた乙(15,前橋市事務決裁規定第4条,同別表2)。
訴外石田は,時間外勤務命令を行う職員に対し,事前に,口頭で,時間外勤務命令を出していた。そして,時間外勤務を命じられた職員は,時間外勤務の前に,時間外勤務命令簿に日付,曜日,用務内容,予定時間等の所定事項を記入し, 命令権
<P6>
者である訴外石田の確認印をもらうこととなっていた。もっとも,時間外勤務命令簿に所定事項を記入するのは,常に,時間外勤務を命じられた当該職員というわけではなく,時間外勤務が命じられた当該業務の責任者が時間外勤務命令簿を記入することもあった。そのため,当該業務の責任者が石田である場合には,石田が,当該業務にかかる職員についての時間外勤務命令簿に所定事項を記入した上で,確認印を押すこともあった。
時間外勤務が終了すると,時間外勤務をした職員または当該業務の責任者は,時間外勤務命令簿の終了時間を記入した上で,時間外勤務命令簿を訴外石田に提出し,訴外石田が確認印を押していた。
そして,月末になると,給与計算等を行う担当職員は,各職員の時間外勤務命令簿に基づいて時間外勤務の総時間等を計算し(以下,「月例処理」という。),時間外勤務手当は,当該時間外勤務のあった翌月の給与に反映される流れになっていた。
(2) 本件時間外手当が支給されるまでの事実経過について
ア 訴外石田が訴外小島に対し,時間外勤務命令を発した際の状況
訴外石田は,小島に対し,平成29年6月16日(金)に同月18日(日)に行われる地域づくりフェスタに参加するよう命じた(以下,「本件命令」という。)。
この点,訴外小島は,地域づくりフェスタの担当者ではなかった。しかし,南橘市民サービスセンターでは,地域づくり業務の担当者の人員不足のため,地域づくり業務に従事できる職員を増やす必要があったところ,訴外石田は,仕事への意欲の高かった訴外小島が適任であると考え,訴外小島に対して,地域づくり業務の一つである地域づくりフェスタに業務補助のため参加を命じた。
そして,訴外石田は,小島に対して,本件命令として,勤務時間及び業務内容を指示した。具体的に,は勤務時間が午前1 0 時から正午までであること, 及び業務内容として,参加している地域の方への挨拶回りや南橘地区のブースの手伝い, その他 他ブースの様子を含めた地域づくりフェスタ全体の視察をすること命じた。なお,地域 づくりフェスタは,午後3時まで行われるところ,訴外石田
<P7>
が訴外小島に,午前10時から正午までの勤務を命じた理由は,正午以降は,来場客が減少するとともに地域の要人が帰宅してしまうため,地域づくり業務を学ぶためには,午前中の参加のみで十分であると考えたからであった。
また, 地域づくりフェスタの責任者は,訴外石田であったことから,訴外小島の時間外勤務命令簿の所定事項は,訴外石田が記入した。これをもって,訴外小島についての地域づくりフェスタにおける時間外勤務申請がなされた。
イ 地域づくりフェスタ参加時の訴外小島の子様について
訴外小島は,訴外石田に命じられたとおり,地域づくりフェスタ会場に午前10時に来場した。なお,このとき,訴外小島は,家族とともに来場した。
訴外石田は,訴外小島が家族とともに地域づくりフェスタに来場していたことを認識していたが,地域づくりフェスタが広く市民に開かれた催し物であったことから,訴外小島が,本件命令に従って職務を行ってさえいれば,家族と一緒に来場したとしても特段間題ないと考えていた。
訴外石田は,訴外小島に対し,地域づくりフェスタ当日においても,業務内容の指示を出した。具体的には, 南橘地区のブースにて業務手伝いをすること,周りの地区の活動を視察すること及び他の地区の人たちに挨拶し,南橘市民サービスセンターの職員として認識してもらうことを指示した。
訴外小島は,イベント中は,家族と離れて,本件命令に従い,南橘地区のブースの手伝いや他地区のブースの視察,要人への挨拶を行っていた。そして,訴外小島は,本件命令のとおり,正午まで上記業務をこなした後,家族と合流して帰宅した。また,訴外石田も,イベント中に,訴外小島が本件命令に従って業務をしていることを現認した。
ウ 地域づくりフェスタ後の訴外小島の時間外勤務命令簿の処理について
訴外石田は,上記のとおり,訴外小島が,地域づくりフェスタに参加し,業務を行っていることを確認したため,地域作りフェスタ終了後に,訴外小島の時間外勤務命令簿に確認印を押印し,月例処理に回した。訴外石田は,地域づくりフェスタの責任者であったため,訴外石田が所定事項を記入することは,一般的に
<P8>
行われていた方法であるし,訴外石田は,所属長として確認印を押印する権限も有していた。そのため,訴外石田が,訴外小島の確認なく同人の時間外勤務命令簿が作成したとしても特段間題はなく,訴外小島の平成29年6月分の時間外勤務命令簿は,適法に作成されたものであった。
ところが,平成29年6月末頃,訴外小島と月例処理担当の職員が,勤務時間中に諍いを起こした。諍いの内容は,訴外小島の平成29年6月分の時間外勤務命令簿に,田口町のほたる祭りに参加したこと及び地域づくりフェスタに参加したことに関し,時間外勤務申請がされていることについてであった。
そこで,月例処理担当職員とこれ以上もめたくないと考えた訴外小島は,訴外石田に対して,田口町のほたる祭り及び地域づくりフェスタの時間外勤務申請を取り消したい旨の相談をした。すると,訴外石田は,訴外小島に対し,少なくとも,地域づくりフェスタについては,業務命令として参加を求め,訴外小島も実際に業務を行っていたものであり,時間外勤務であったことは明らかであることから,地域づくりフェスタの参加について時間外勤務手当の申請を取り消すことは認められないことを伝えた。
そこで,訴外小島は,訴外石田の指示に基づき,田口町のほたる祭りについてのみ時間外勤務申請を取り消すため,時間外勤務命令簿を自ら書き直し,その上で,訴外石田に対して,時間外勤務命令簿を渡して確認印の押印を求めた。
訴外石田は,上記のとおり,田口町のほたる祭りについても時間外勤務命令を取り消す必要はないと考えていたが,訴外小島から強い要請があったため,取消を承認して,訴外小島が書き直した時間外勤務命令簿に確認印を押印し,月例処理に回した。
その後,本件時間外手当は,平成29年7月20日に訴外小島に支給された。
(3) 訴外石田の主観面について
本件命令の命令権者である訴外石田は,上記のとおり,訴外小島を地域づくり業務の担当者にするために,業務時間内容等を特定した上で,本件命令を発している。そのため,訴外石田は,訴外小島に不正な利益を得させようとする目的を持っ
<P9>
ておらず,本件時間外命令について正当な業務命令と認識していた。
したがって,時間外勤務命令を発した際の訴外石田には,故意はおろか,過失も認められない。
また,訴外石田は,地域づくりフェスタ後,訴外小島が本件命令に従って業務を行っていたことを確認の上,時間外勤務命令簿に確認印を押したものである。このように訴外石田が訴外小島の業務を時間外勤務として確認をしたことについても故意・過失は認められない。
よって,訴外石田には,訴外小島に対し,本件時間外手当が支給されたことにつき,何ら故意過失がなく,原告の主張は認められない。
(4) 訴外小島の主観面について
訴外小島は,命令権者である訴外石田の本件命令に基づいて地域づくりフェスタに参加し,訴外石田の指示どおりの業務を行ったのであるから,時間的にも場所的にも一定時間拘束されており, 客観的に業務性が肯定できる。
また,訴外小島は,訴外石田との間で地域づくりフェスタについての時間外勤務申請の取り下げのやりとりをした際に,訴外石田から業務命令として参加を命じた旨を改めて告げられ,訴外石田の指示に従って,時間外勤務申請を改めて行っている。
命令権者が時間外勤務だと承認すれば,被命令者は,命令権者の指示どおりに時間外 勤務手当を申請するのが通常であるといえることから,したがって,訴外小島が,時間外勤務の申請をしたことについて故意はおろか過失も認められない。
なお,訴外小島は,地域づくりフェスタに参加した際には,明確に,業務性の認識があったわけではなかったが,命令権者である訴外石田の指摘により,業務性があったことを認識するに至った。そのため,訴外小島が事後的に業務性を認識し,本件時間外手当を申請したとしても,業務性について,時間外命令の命令権者の承認を得ているのであるから,訴外小島には,やはり,故意過失がなかったといえる。
よって,本件時間外手当の申請について,訴外小島に故意・過失は認められず,原告の主張は認められない。
3 病気休暇及び病気休職中の給与について
<P9>
(1) 訴外小島が病気休暇・病気休職を取得するに至った経緯
ア 訴外小島は,上述した時間外勤務手当を巡って月例処理担当職員と諍いを起こしてしまったことをきっかけに,南橘市民サービスセンターの職員との関係が悪化してしまった。
その結果訴外小島は心身の不調を訴えるようになり,出勤しても業務が手に付かず,次第に,外出すらままならない状態になった。
イ そこで,訴外小島は,平成29年7月14日(金)に夏期休暇を取得し,清王寺クリニックを受診したところ,適応障害であり,自宅療養が必要であると診断された(乙8の1)。そのため,訴外小島は,病気休暇を取得しようと考え,同院院長の中屋みな子医師に診断書を作成してもらった。
その後,訴外小島は,外出できるような状態でなかったため,訴外小島の夫に対し,訴外小島を代理して病気休暇申請するよう依頼した。そして,訴外小島の夫は,7月14日に,南橘市民サービスセンターではなく,前橋市役所職員課を訪れ,訴外小島の診断書を提出し,訴外小島を代理して病気休暇申請を提出した。同申請は,本来,所属先に提出される必要があるところ,訴外小島の申請は,職員課に提出されてしまったことから,連休明け(7月17日(月)は祝日である。)の7月18 日(火)に訴外小島の所属先である南橘市民サービスセンターに回送された上で改めて病気休暇申請がなされ,同日中に所定の手続を経て決裁された(乙15)。
なお,病気休暇は,時間単位での取得ができない(乙5,休暇規則第12条第1項本文)ため,被告では,診断日当日は,年次有給休暇やその他休暇で対応していた。そのため,診断日を夏期休暇その翌営業日以降を病気休暇とした被告の対応には,何ら違法はない。
なお,このとき訴外小島は,訴外石田に対して病気休暇取得を訴外石田に相談しなかった。そのため,訴外石田は,訴外小島が病気休暇を取得しようとしていたことにつき,病気休暇申請が提出されるまで全く知らなかった。
ウ その後,訴外小島の病気休暇申請は,病院での診断書を提出の上で申請され
<P11>
たものであったことから,被告は,訴外小島の病気休暇の申請を受理し,訴外小島は,平成29年7月18日から病気休暇を取得することになった。
エ 病気休暇期間は,90日以内(休暇規則第12条表第2号,乙5)であるところ,訴外小島は,平成29年7月18日から同年10月15日までの90日間の病気休暇を取得した。
なお,平成29年7月14日付け診断書には,「H29.7.14~H29,10,13までの3 ヶ月間自宅安静療養を要します」(乙8の1)との記載があり,同診断書の記載は,訴外小島の病気休暇期間と一致していない。
しかし,病気休暇の開始日については,上記のとおり,平成29年7月18日を開始日としても何ら違法はない。
また,前橋市は,職員の病気休養期間が90日間を超えるときは,90日間を病気休暇その後の期間を病気休職として取り扱っていたところ,訴外小島は,平成29年10月3日付け診断書にて「ひき続きH29.10.14~H29.11.13の1ヶ月間安静療養を要します」(乙8の2)と診断され,病気休暇の開始日から90日を経過した平成29年10月16日以降においても病気休養が必要な状態であった。
そのため,訴外小島の病気休暇期間が平成29年7月18日から同年10月15日までとなっているのは前橋市の病気休暇取得の運用に従ったものであり,診断書の記載の期間と訴外小島の病気休暇期間とに食い違いがあったとしても 特段の問題はない。
そして,病気休暇期間内において,訴外小島の症状は職場復帰できる程度に回復しなかったこと(乙8の2)から,訴外小島は,被告より,同年10月16日から病気休職を命じられた(乙10の1)。
オ そして,訴外小島は,病気休職中も定期的に清王寺クリニックを受診し,症状が快方に向かっていたところ,平成29年12月5日からならし勤務を開始することとなった。訴外小島のならし勤務は,同日から同月12月31日まで続けられ,訴外小島はこの間ならし勤務を無事にこなせたことから,訴外小島は
<P12>
被告より,平成30年1月1日付けで復職を命じられ,年末年始休暇が開けてから職場復帰することができた。
なお,訴外小島の病気休暇・病気休職期間中,訴外小島と訴外石田は特段やり取りをしていない。
(2) 訴外小島及び訴外石田の主観面について
上記のとおり,訴外小島は,医師の診断書に基づき滴法に病気休暇を取得し,被告から病気休職を命じられていることから,病気休暇の取得につき,当然に故意・過失は認められない。
また,訴外石田は,訴外小島が病気休暇を取得したこと,病気休職を命じられたことに関して, 病気休暇申請段階で認識していなかったことから,明らかに故意過失は認められない 。
よって,原告の主張は認められない。
以 上
*****証拠説明書(乙15)*****
平成30年(行ウ)第12号 不倫職員時間外手当等不正支払損害賠償請求事件
原 告 鈴 木 庸
被 告 前橋市長 山本龍
証 拠 説 明 書(乙15)
令和元年6月24日
前橋地方裁判所 民事第1部合議係 御中
被告訴訟代理人
弁護士 石 原 栄 一
記
●号証:乙15
○標目(原本・写しの別):前橋市事務決裁規定(全文)(写し)
○作成:H6. 3. 30
○作成者:前橋市
○立証趣旨:訴外石田が南橘市民サービスセンター職員に対し,時間外勤務命令を出せたこと等。
以 上
*****乙15号*****
○前橋市事務決裁規程
https://www1.g-reiki.net/maebashi/reiki_honbun/e202RG00000070.html
**********
■しかし、これでは原告の準備書面との対比がわかりませんので、この後、対比させた形での、被告前橋市の反論を見比べてみましょう。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項続く】
↑不倫職員や窃盗職員に加えて、ついに殺人者まで現れてしまった前橋市役所。↑
なお、この問題の経緯等は次のブログをご覧ください。
〇2018年3月29日:再発防止になるの?…印章偽造の職員に減給10分の1(1か月間)の大甘処分を決めた前橋市↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2600.html
〇2018年5月3日:前橋市役所職員による勤務不正申告の実態について前橋市長に報告書を提出↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2628.html
○2018年6月5日:前橋市職員による勤務不正申告の実態報告書の感想と見解を聴取すべく前橋市役所を訪問↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2659.html
○2018年7月2日:前橋市職員による勤務不正申告の実態報告をもとに前橋市に損害回収を求める住民監査請求書を提出↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2683.html
〇2018年7.月4日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求める住民監査請求書の内容を確認してきた前橋市監査委員↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2684.html
○2018年7月15日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求める住民監査請求書をようやく受理した前橋市監査委員↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2697.html
○2018年8月2日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求める住民監査請求手続のため監査委員の面前で陳述↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2718.html
○2018年9月3日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求める住民監査請求の結果通知が到来!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2741.html
〇2018年9月21日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求めた住民監査結果に対する措置通知到来!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2761.html
○2018年9月28日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求め住民訴訟を提起!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2765.html
〇2018年11月2日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求めた住民訴訟で訴状訂正申立書を地裁に提出↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2799.html
○2018年11月9日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収を求めた住民訴訟第1回弁論が12月12日(水)10時と決定!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2806.html
○2018年12月3日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収の12.12住民訴訟に向けて被告前橋市から答弁書!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2835.html
○2019年1月23日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収住民訴訟の1.30第2回口頭弁論が迫る中被告前橋市から準備書面!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2866.html
○2019年2月4日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収住民訴訟・・・1月30日の第2回口頭弁論の模様↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2877.html
○2019年2月23日:前橋市職員の勤務不正申告による損害回収住民訴訟・・・被告前橋市から時間外と病欠中の支払情報が到来↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2884.html
6月26日に届いた被告の裁判資料(第3準備書面と証拠説明書および乙15号証)は次のとおりです。
*****送付書兼受領書*****
前橋地方裁判所民事第1部合議係 御中
ご担当書記官 森山 様
原告
鈴木 庸 様
令和元年6月24日
前橋市大手町3丁目4番16号
被告訴訟代理人
弁護士 石 原 栄 一
弁護士 猿 谷 直 樹
弁護士 安カ川 美 貴
電話027-235-2040
送 付 書
事件の表示:御 庁 平成30年(行ウ)第12号
事件名 不倫職員時間外手当等不正支払損害賠償請求事件
当 事 者:原 告 鈴木 庸
被 告 前橋市長 山本龍
下記書類を送付致します。ご査収の程,宜しくお願い申し上げます。
1 第3準備書面 1通
2 乙第15号証 1通
3 証拠説明書(乙15)
以上
------------------ 切らずにこのままでお送り下さい ------------------
受 領 書
上記書類、本日受領致しました。
令和1年6月26日
原告 鈴木 庸 印
前橋地方裁判所民事第1部合議係(森山書記官)御中:FAX 027-233-0901
石原・関・猿谷法律事務所(弁護土 安力川美貴)行:FAX 027-230-9622
*****被告第3準備書面*****
<P1>
平成30年(行ウ)第12号 不倫職員時間外手当等不正支払損害賠償請求事件
原 告 鈴 木 庸
被 告 前橋市長 山本龍
第3準備書面
令和元年6月24日
前橋地方裁判所民事第1部合議係 御中
〒371-0026
群馬県前橋市大手町3丁目4番16号
石原・関・猿谷法律事務所(送達場所)
TEL 027-235-2040 / FAX 027-230-9622
被告訴訟代理人弁護士 石 原 栄 一
同 弁護士 猿 谷 直 樹
同 弁護士 安 力 川 美 貴
同 指定代理人 宮 坂 恵 理 子
同 指定代理人 加 藤 正 寛
同 指定代理人 吉 永 和 也
<P2>
第1 平成31年3月8日付け原告準備書面(1)に対する認否
1 「第1 請求1 について<不正その③>」について
(1) 第1段落
平成29年6月18日に地域づくりフェスタが開催されたこと,小島美帆(以下,「訴外小島」という。)が同フェスタに配偶者と子どもと参加したこと,及び訴外小島に対して同日午前10時から正午までの2時間分の時間外手当が支給されたことはいずれも認め,訴外小島の様子を南橘公民館職員が目撃していたことは不知,その余は否認する。
(2) 第2段落
訴外小島が地域づくりフェスタの担当者でなかったこと及び訴外小島の出勤が休日出勤であったことはいずれも認め,評価は争う。
(3) 第3段落
地域づくりフェスタの担当者が石田健一(以下,「訴外石田」という。)とともに出勤していたことは認め,その余は不知。
(4) 第4段落
否認ないし争う。
(5) 第5段落
争う。
(6) 第6段落
訴外小島が,時間外勤務命令簿(乙11)に自ら必要事項を記入したこと,及び同書面の確認印及び所属長の欄の押印が訴外石田のものであることはいずれも認め,その余は否認する。
(7) 第7段落
原告の畢寛独自の見解であり,認否の必要性を認めない。
2 「第2 請求2について<不正その④>」について
(1) 1項について
ア 第1段落ないし第6段落(求釈明1まで)
<P3>
不知。なお,求釈明1は,本件訴訟と関係のない事実に関する求釈明であるため,回答しない。
イ 第7段落
認める。
ウ 第8段落
7月14日付けの診断書(乙8の1)に「※本人より提出されたのは,7/1であることを確認済み。(7/18)」との記載があることは認め,その余は否認する。同筆跡は前橋市職員課の職員が,提出年月日を記載したものである。
エ 第9段落
訴外小島が謝罪をしたことについては認否の必要性を認めず,その余は,否認する。訴外小島は,診断書を訴外石田に提出していない。
オ 第10段落ないし第19段落(求釈明2まで)
否認する。詳細は被告の主張のとおり。なお,釈明2のうち,訴外小島の診断書の提出,病気休暇承認の過程については,「第3 被告の主張」を確認されたい。また,休暇等承認簿に関する求釈明に関しては,被告が原告に送付した乙9号証の写しに職員課長印が押印されていないように見える,の押は印が経年劣化により薄くなってしまったため,コピーした際に反映されなかったためである。乙第9号証原本には,職員課長印の押印がある(乙9)。
カ 第20段落及び第21段落(求釈明3まで)
不知。なお,求釈明3は,回答する必要性を認めない。
キ 第22段落
訴外小島が10月3日に清王寺クリニックを受診したこと及び同クリニック中屋みな子医師が同日付の診断書を作成したことはいずれも認め,その余は否認する。訴外小島は,訴外石田に対して,同診断書を提出していない。
ク 第23段落
休暇等承認簿(乙9)に主務部長,主務課長,主務係長・出先機関の長,職員課長の各押印がされていること及び被告が訴外小島に対して,平成29年10
<P4>
月16日から同年11月13日まで休職を命じたことはいずれも認め,その余は否認する。
ケ 第24段落
訴外小島が10月31日に清王寺クリニックを受診したこと,同クリニック中屋みな子医師が同日付の診断書を作成したこと,及び被告が訴外小島に対して,平成29年12月31日まで休職を命じたことはいずれも認め,その余は否認する。
コ 第25段落及び第26段落(求釈明4)
平成29年10月31日付け診断書(乙8の3)に,「但し,職場復帰に向けてリハビリ出勤をすることは可能です」との記載があることは認め,その余は否認する。
詳細は,「第3 被告の主張」のとおりであるが,訴外小島は,平成29年12月1日より,ならし勤務をしている。
サ 第27段落ないし第31段落(求釈明5まで)
認否及び求釈明に回答する必要性を認めない。
なお,第30段落の記載は,訴外小島の名誉またはプライバシーを侵害するおそれのある記載であり,原告の訴外小島に対する不法行為となりかねないことを付言する。
シ 第32段落ないし第35段落
原告の畢寛独自の見解であり,認否の必要性を認めない。
ス 第36段落
争う。
(2) 2項について
被告の主張の引用箇所については認否せず,病気休暇の期間が連続して90日を超えてはいけないこと,及び被告が,訴外小島に対し,平成29年7月18日から同年10月15日まで病気休暇を承認したことは認め,その余の原告の評価,推測は争う。
<P5>
被告が,訴外小島に対し,平成29年7月18日から同年10月15日まで病気休暇を承認したことに何ら違法はない。
また,求釈明6に関しては,「第3 被告の主張」を確認されたい。
(3) 3項について
被告の主張の引用箇所については認否せず,その余は認否の必要性を認めない。
また,求釈明7ないし求釈明9については,回答の必要性を認めない 。
(4) 4項について
本件訴訟と関係のない主張であるため,認否しない。
3 「第3 まとめ」について
認否の必要性を認めない。
第2 平成31年4月15日付け原告準備書面(2)及び令和元年5月28日付け原告準備書面(2)に対する認否
原告の主張は争う。詳細は,以下に述べる「第3 被告の主張」のとおり。
第3 被告の主張
1 本件時間外手当について
以下に述べるとおり,訴外小島及び訴外石田には,訴外小島が本件時間外手当を受給したことにつき,故意または過失が認められない。
(1) 時間外勤務命令の一般的な処理方法について
南橘市民サービスセンターでの時間外勤務命令の処理については,通常,以下のとおりの手順で行われていた。
まず,前提として,時間外勤務命令は,出先機関の長であった訴外石田の単独の判断で出すことができた乙(15,前橋市事務決裁規定第4条,同別表2)。
訴外石田は,時間外勤務命令を行う職員に対し,事前に,口頭で,時間外勤務命令を出していた。そして,時間外勤務を命じられた職員は,時間外勤務の前に,時間外勤務命令簿に日付,曜日,用務内容,予定時間等の所定事項を記入し, 命令権
<P6>
者である訴外石田の確認印をもらうこととなっていた。もっとも,時間外勤務命令簿に所定事項を記入するのは,常に,時間外勤務を命じられた当該職員というわけではなく,時間外勤務が命じられた当該業務の責任者が時間外勤務命令簿を記入することもあった。そのため,当該業務の責任者が石田である場合には,石田が,当該業務にかかる職員についての時間外勤務命令簿に所定事項を記入した上で,確認印を押すこともあった。
時間外勤務が終了すると,時間外勤務をした職員または当該業務の責任者は,時間外勤務命令簿の終了時間を記入した上で,時間外勤務命令簿を訴外石田に提出し,訴外石田が確認印を押していた。
そして,月末になると,給与計算等を行う担当職員は,各職員の時間外勤務命令簿に基づいて時間外勤務の総時間等を計算し(以下,「月例処理」という。),時間外勤務手当は,当該時間外勤務のあった翌月の給与に反映される流れになっていた。
(2) 本件時間外手当が支給されるまでの事実経過について
ア 訴外石田が訴外小島に対し,時間外勤務命令を発した際の状況
訴外石田は,小島に対し,平成29年6月16日(金)に同月18日(日)に行われる地域づくりフェスタに参加するよう命じた(以下,「本件命令」という。)。
この点,訴外小島は,地域づくりフェスタの担当者ではなかった。しかし,南橘市民サービスセンターでは,地域づくり業務の担当者の人員不足のため,地域づくり業務に従事できる職員を増やす必要があったところ,訴外石田は,仕事への意欲の高かった訴外小島が適任であると考え,訴外小島に対して,地域づくり業務の一つである地域づくりフェスタに業務補助のため参加を命じた。
そして,訴外石田は,小島に対して,本件命令として,勤務時間及び業務内容を指示した。具体的に,は勤務時間が午前1 0 時から正午までであること, 及び業務内容として,参加している地域の方への挨拶回りや南橘地区のブースの手伝い, その他 他ブースの様子を含めた地域づくりフェスタ全体の視察をすること命じた。なお,地域 づくりフェスタは,午後3時まで行われるところ,訴外石田
<P7>
が訴外小島に,午前10時から正午までの勤務を命じた理由は,正午以降は,来場客が減少するとともに地域の要人が帰宅してしまうため,地域づくり業務を学ぶためには,午前中の参加のみで十分であると考えたからであった。
また, 地域づくりフェスタの責任者は,訴外石田であったことから,訴外小島の時間外勤務命令簿の所定事項は,訴外石田が記入した。これをもって,訴外小島についての地域づくりフェスタにおける時間外勤務申請がなされた。
イ 地域づくりフェスタ参加時の訴外小島の子様について
訴外小島は,訴外石田に命じられたとおり,地域づくりフェスタ会場に午前10時に来場した。なお,このとき,訴外小島は,家族とともに来場した。
訴外石田は,訴外小島が家族とともに地域づくりフェスタに来場していたことを認識していたが,地域づくりフェスタが広く市民に開かれた催し物であったことから,訴外小島が,本件命令に従って職務を行ってさえいれば,家族と一緒に来場したとしても特段間題ないと考えていた。
訴外石田は,訴外小島に対し,地域づくりフェスタ当日においても,業務内容の指示を出した。具体的には, 南橘地区のブースにて業務手伝いをすること,周りの地区の活動を視察すること及び他の地区の人たちに挨拶し,南橘市民サービスセンターの職員として認識してもらうことを指示した。
訴外小島は,イベント中は,家族と離れて,本件命令に従い,南橘地区のブースの手伝いや他地区のブースの視察,要人への挨拶を行っていた。そして,訴外小島は,本件命令のとおり,正午まで上記業務をこなした後,家族と合流して帰宅した。また,訴外石田も,イベント中に,訴外小島が本件命令に従って業務をしていることを現認した。
ウ 地域づくりフェスタ後の訴外小島の時間外勤務命令簿の処理について
訴外石田は,上記のとおり,訴外小島が,地域づくりフェスタに参加し,業務を行っていることを確認したため,地域作りフェスタ終了後に,訴外小島の時間外勤務命令簿に確認印を押印し,月例処理に回した。訴外石田は,地域づくりフェスタの責任者であったため,訴外石田が所定事項を記入することは,一般的に
<P8>
行われていた方法であるし,訴外石田は,所属長として確認印を押印する権限も有していた。そのため,訴外石田が,訴外小島の確認なく同人の時間外勤務命令簿が作成したとしても特段間題はなく,訴外小島の平成29年6月分の時間外勤務命令簿は,適法に作成されたものであった。
ところが,平成29年6月末頃,訴外小島と月例処理担当の職員が,勤務時間中に諍いを起こした。諍いの内容は,訴外小島の平成29年6月分の時間外勤務命令簿に,田口町のほたる祭りに参加したこと及び地域づくりフェスタに参加したことに関し,時間外勤務申請がされていることについてであった。
そこで,月例処理担当職員とこれ以上もめたくないと考えた訴外小島は,訴外石田に対して,田口町のほたる祭り及び地域づくりフェスタの時間外勤務申請を取り消したい旨の相談をした。すると,訴外石田は,訴外小島に対し,少なくとも,地域づくりフェスタについては,業務命令として参加を求め,訴外小島も実際に業務を行っていたものであり,時間外勤務であったことは明らかであることから,地域づくりフェスタの参加について時間外勤務手当の申請を取り消すことは認められないことを伝えた。
そこで,訴外小島は,訴外石田の指示に基づき,田口町のほたる祭りについてのみ時間外勤務申請を取り消すため,時間外勤務命令簿を自ら書き直し,その上で,訴外石田に対して,時間外勤務命令簿を渡して確認印の押印を求めた。
訴外石田は,上記のとおり,田口町のほたる祭りについても時間外勤務命令を取り消す必要はないと考えていたが,訴外小島から強い要請があったため,取消を承認して,訴外小島が書き直した時間外勤務命令簿に確認印を押印し,月例処理に回した。
その後,本件時間外手当は,平成29年7月20日に訴外小島に支給された。
(3) 訴外石田の主観面について
本件命令の命令権者である訴外石田は,上記のとおり,訴外小島を地域づくり業務の担当者にするために,業務時間内容等を特定した上で,本件命令を発している。そのため,訴外石田は,訴外小島に不正な利益を得させようとする目的を持っ
<P9>
ておらず,本件時間外命令について正当な業務命令と認識していた。
したがって,時間外勤務命令を発した際の訴外石田には,故意はおろか,過失も認められない。
また,訴外石田は,地域づくりフェスタ後,訴外小島が本件命令に従って業務を行っていたことを確認の上,時間外勤務命令簿に確認印を押したものである。このように訴外石田が訴外小島の業務を時間外勤務として確認をしたことについても故意・過失は認められない。
よって,訴外石田には,訴外小島に対し,本件時間外手当が支給されたことにつき,何ら故意過失がなく,原告の主張は認められない。
(4) 訴外小島の主観面について
訴外小島は,命令権者である訴外石田の本件命令に基づいて地域づくりフェスタに参加し,訴外石田の指示どおりの業務を行ったのであるから,時間的にも場所的にも一定時間拘束されており, 客観的に業務性が肯定できる。
また,訴外小島は,訴外石田との間で地域づくりフェスタについての時間外勤務申請の取り下げのやりとりをした際に,訴外石田から業務命令として参加を命じた旨を改めて告げられ,訴外石田の指示に従って,時間外勤務申請を改めて行っている。
命令権者が時間外勤務だと承認すれば,被命令者は,命令権者の指示どおりに時間外 勤務手当を申請するのが通常であるといえることから,したがって,訴外小島が,時間外勤務の申請をしたことについて故意はおろか過失も認められない。
なお,訴外小島は,地域づくりフェスタに参加した際には,明確に,業務性の認識があったわけではなかったが,命令権者である訴外石田の指摘により,業務性があったことを認識するに至った。そのため,訴外小島が事後的に業務性を認識し,本件時間外手当を申請したとしても,業務性について,時間外命令の命令権者の承認を得ているのであるから,訴外小島には,やはり,故意過失がなかったといえる。
よって,本件時間外手当の申請について,訴外小島に故意・過失は認められず,原告の主張は認められない。
3 病気休暇及び病気休職中の給与について
<P9>
(1) 訴外小島が病気休暇・病気休職を取得するに至った経緯
ア 訴外小島は,上述した時間外勤務手当を巡って月例処理担当職員と諍いを起こしてしまったことをきっかけに,南橘市民サービスセンターの職員との関係が悪化してしまった。
その結果訴外小島は心身の不調を訴えるようになり,出勤しても業務が手に付かず,次第に,外出すらままならない状態になった。
イ そこで,訴外小島は,平成29年7月14日(金)に夏期休暇を取得し,清王寺クリニックを受診したところ,適応障害であり,自宅療養が必要であると診断された(乙8の1)。そのため,訴外小島は,病気休暇を取得しようと考え,同院院長の中屋みな子医師に診断書を作成してもらった。
その後,訴外小島は,外出できるような状態でなかったため,訴外小島の夫に対し,訴外小島を代理して病気休暇申請するよう依頼した。そして,訴外小島の夫は,7月14日に,南橘市民サービスセンターではなく,前橋市役所職員課を訪れ,訴外小島の診断書を提出し,訴外小島を代理して病気休暇申請を提出した。同申請は,本来,所属先に提出される必要があるところ,訴外小島の申請は,職員課に提出されてしまったことから,連休明け(7月17日(月)は祝日である。)の7月18 日(火)に訴外小島の所属先である南橘市民サービスセンターに回送された上で改めて病気休暇申請がなされ,同日中に所定の手続を経て決裁された(乙15)。
なお,病気休暇は,時間単位での取得ができない(乙5,休暇規則第12条第1項本文)ため,被告では,診断日当日は,年次有給休暇やその他休暇で対応していた。そのため,診断日を夏期休暇その翌営業日以降を病気休暇とした被告の対応には,何ら違法はない。
なお,このとき訴外小島は,訴外石田に対して病気休暇取得を訴外石田に相談しなかった。そのため,訴外石田は,訴外小島が病気休暇を取得しようとしていたことにつき,病気休暇申請が提出されるまで全く知らなかった。
ウ その後,訴外小島の病気休暇申請は,病院での診断書を提出の上で申請され
<P11>
たものであったことから,被告は,訴外小島の病気休暇の申請を受理し,訴外小島は,平成29年7月18日から病気休暇を取得することになった。
エ 病気休暇期間は,90日以内(休暇規則第12条表第2号,乙5)であるところ,訴外小島は,平成29年7月18日から同年10月15日までの90日間の病気休暇を取得した。
なお,平成29年7月14日付け診断書には,「H29.7.14~H29,10,13までの3 ヶ月間自宅安静療養を要します」(乙8の1)との記載があり,同診断書の記載は,訴外小島の病気休暇期間と一致していない。
しかし,病気休暇の開始日については,上記のとおり,平成29年7月18日を開始日としても何ら違法はない。
また,前橋市は,職員の病気休養期間が90日間を超えるときは,90日間を病気休暇その後の期間を病気休職として取り扱っていたところ,訴外小島は,平成29年10月3日付け診断書にて「ひき続きH29.10.14~H29.11.13の1ヶ月間安静療養を要します」(乙8の2)と診断され,病気休暇の開始日から90日を経過した平成29年10月16日以降においても病気休養が必要な状態であった。
そのため,訴外小島の病気休暇期間が平成29年7月18日から同年10月15日までとなっているのは前橋市の病気休暇取得の運用に従ったものであり,診断書の記載の期間と訴外小島の病気休暇期間とに食い違いがあったとしても 特段の問題はない。
そして,病気休暇期間内において,訴外小島の症状は職場復帰できる程度に回復しなかったこと(乙8の2)から,訴外小島は,被告より,同年10月16日から病気休職を命じられた(乙10の1)。
オ そして,訴外小島は,病気休職中も定期的に清王寺クリニックを受診し,症状が快方に向かっていたところ,平成29年12月5日からならし勤務を開始することとなった。訴外小島のならし勤務は,同日から同月12月31日まで続けられ,訴外小島はこの間ならし勤務を無事にこなせたことから,訴外小島は
<P12>
被告より,平成30年1月1日付けで復職を命じられ,年末年始休暇が開けてから職場復帰することができた。
なお,訴外小島の病気休暇・病気休職期間中,訴外小島と訴外石田は特段やり取りをしていない。
(2) 訴外小島及び訴外石田の主観面について
上記のとおり,訴外小島は,医師の診断書に基づき滴法に病気休暇を取得し,被告から病気休職を命じられていることから,病気休暇の取得につき,当然に故意・過失は認められない。
また,訴外石田は,訴外小島が病気休暇を取得したこと,病気休職を命じられたことに関して, 病気休暇申請段階で認識していなかったことから,明らかに故意過失は認められない 。
よって,原告の主張は認められない。
以 上
*****証拠説明書(乙15)*****
平成30年(行ウ)第12号 不倫職員時間外手当等不正支払損害賠償請求事件
原 告 鈴 木 庸
被 告 前橋市長 山本龍
証 拠 説 明 書(乙15)
令和元年6月24日
前橋地方裁判所 民事第1部合議係 御中
被告訴訟代理人
弁護士 石 原 栄 一
記
●号証:乙15
○標目(原本・写しの別):前橋市事務決裁規定(全文)(写し)
○作成:H6. 3. 30
○作成者:前橋市
○立証趣旨:訴外石田が南橘市民サービスセンター職員に対し,時間外勤務命令を出せたこと等。
以 上
*****乙15号*****
○前橋市事務決裁規程
https://www1.g-reiki.net/maebashi/reiki_honbun/e202RG00000070.html
**********
■しかし、これでは原告の準備書面との対比がわかりませんので、この後、対比させた形での、被告前橋市の反論を見比べてみましょう。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項続く】
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