■スラグ報道は、依然として連日のようにヒートアップしていますが、さすがに仕事納めが済んだら収まるかと思いきや、年の瀬も押し迫った12月29日にも新聞紙面にスラグの3文字が踊りました。この年の瀬の報道は、年末年始休みに入り社会の関心が薄いであろうことを見越したうえでの姑息な思惑をもとに、関係行政機関が公表したとの印象を強く読者に与える結果となっています。早速、報道内容を見ていきましょう。
**********2015年12月29日上毛新聞
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前橋の国合同庁舎 大同スラグ使用 フッ素は基準値以下
鉄鋼メーカー、大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場から出た鉄鋼スラグが公共工事に使われ、一部から基準値を超える有害物質が検出された問題で、国土交通省関東地方整備局は28日、同工場から出た鉄鋼スラグを含む砕石が、前橋地方合同庁舎(前橋市大手町)の基礎工事に使われていたと公表した。
県からの情報提供で分かった。砕石は地表に露出しておらず、フッ素が検出されたが基準値以下だった。砕石は撤去しない。庁舎は以前の建物の老朽化に伴い新築され、関係機関が6月から業務を始めた。
同局は同工場がスラグの出荷を始めた1991年度以降の工事について、スラグが使われたか確認する方針。
**********2015年12月29日毎日新聞・群馬
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前橋合同庁舎の基礎にもスラグ 当時の基準クリア
大同特殊鋼渋川工場から出た鉄鋼スラグの砕石が、前橋市大手町の前橋地方合同庁舎の基礎工事でも使用されていたことが分かった。当時の検査で環境基準をクリアしていたため、対策は講じないという。国土交通省関東地方整備局が28日発表した。
庁舎ビルは2013年2月に着工し、今年6月以降、前橋地方法務局、前橋税務署、前橋地方気象台、前橋労働基準監督署などが移転した。
【尾崎修二】
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■年末の仕事納めのタイミングに合わせて、国土交通省はホームページで次のように公表を行いました
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/kyoku_00000761.html
**********(赤字は当会が着色)
平成27年 12月28日
鉄鋼スラグを含む砕石を使用した工事が新たに確認されたことについて
関東地方整備局
国土交通省関東地方整備局では、大同特殊鋼(株)渋川工場が鉄鋼スラグを出荷した記録があることが判明した工事の施工箇所等において、有害物質の含有量等について分析試験を実施し、その調査結果をお知らせしてきたところです。
このたび、群馬県環境森林部からの情報提供により、新たに群馬県内で関東地方整備局が発注した官庁施設の営繕工事の1工事において、大同特殊鋼(株)渋川工場の鉄鋼スラグを含む砕石の使用の疑いが判明しました。
当整備局で工事書類を確認したところ、大同特殊鋼(株)渋川工場の鉄鋼スラグを含む砕石が建物の基礎下に使用されているものの、都道府県知事の登録を受けた試験機関の品質規格証明書により環境基準に適合していることが確認できました。
また、過去5年間に遡り、群馬県内で当整備局が発注した官庁施設の営繕工事について工事書類を確認した結果、当該工事以外で大同特殊鋼(株)渋川工場の鉄鋼スラグを含む砕石の使用は工事書類からは確認されませんでした。
今後、官庁施設の営繕工事についてもこれまでの土木関係の工事の場合と同様に、大同特殊鋼(株)渋川工場が鉄鋼スラグの出荷を開始した平成3年度以降に施工された群馬県内で当整備局が発注した工事現場については、工事完成図書等および現場の確認を通じて、大同特殊鋼(株)渋川工場の鉄鋼スラグの使用の有無を確認していきます。
新たに大同特殊鋼(株)渋川工場の鉄鋼スラグの使用が確認された場合、群馬県環境森林部に報告し、助言を得ながら、適切に対応していきます。
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■それでは、いつものようにポイントを整理していきましょう。
①大同のスラグが国の機関が入る合同庁舎の建設工事に使用されていたこと
②群馬県からの情報提供で分かったこと
③フッ素が検出されたが基準値以下または、当時の検査で環境基準をクリアしていたので撤去しないこと
◆ポイント①「大同のスラグが国の機関が入る合同庁舎の建設工事に使用されていたこと」について
2013年2月に着工された国の前橋合同調査に大同特殊鋼の有害物質が含まれ、しかも膨張する性質を有する危険スラグが使用されていたとの報道です。発表したのが国土交通省関東地方整備局であることから、建設に関わる監督官庁は国土交通省であると考えられます。
国土交通省関東地方整備局は建設を進める上武国道においても危険スラグを大量に使用させていました。逆有償取引で発生した多額なスラグマネーが、大量に国土交通省に還元されていることが疑われます。
その疑わしい国土交通省関東地方整備局が建設を進めた建物の基礎工事にも、やはり危険スラグが使用されていたことが明るみに出ました。タダ同然、というかマイナスの価値しかないサンパイの危険スラグを、再生砕石として高く積算した基礎工事に使わせて、浮いた差額は業者から役人様にキックバックされたかもしれません。
それよりもなによりも、国の機関が入る合同庁舎の基礎に、有毒物質を含有し、膨張性という時限爆弾を抱えた危険スラグを使用して、平然としていられる役人様のジョーシキというのが、当会のような民間人の常識では、到底測り切れません。やはり、優秀なはずの国の職員の頭脳が、有毒スラグにやられているとしか思えません。
◆ポイント②「群馬県からの情報提供で分かったこと」について
この報道から、国土交通省としては積極的にスラグを片付ける気など更々ないが、群馬県から情報提供があったので、黙っているわけにはいかないので渋々、年末年始休み期間に乗じて発表した?という事情がうかがえます。
当会では、これまで上武国道をはじめ、八ッ場ダム工事など国交省関東地方整備局が主管する公共事業で、大同の危険スラグの不法投棄の実際を調査して来ておりますが今回の報道記事でも「当時の検査で環境基準をクリアしていたため、対策は講じない」と国交省は一方的に宣言していることから、国土交通省はスラグを綺麗に片付けさせる考えなど、初めから毛頭なかったことが強く疑われます。優秀な頭脳集団のはずの国家公務員の方々が、ことごとく危険スラグの有毒物質に頭がやられてしまい、またしても、消極的な姿勢をとるつもりなのではないでしょうか?
群馬県からせっかく情報提供をもらったのに、このように
◆ポイント③「フッ素が検出されたが基準値以下または、当時の検査で環境基準をクリアしていたので撤去しないこと」について
上毛新聞では「砕石は地表に露出しておらず、フッ素が検出されたが基準値以下だった」と報じ、毎日新聞では「当時の検査で環境基準をクリアしていたため、対策は講じない」と報道されています。
毎日新聞の記事にある「当時の検査」という国交省の言い分を言葉通り受け止めると、“では今の検査ではダメなのか?”と読者に訴えかけてきます。当会のブログでもこれまで一貫してお伝えしています通り、大同特殊鋼の内部資料を読むと、スラグには基準値以上のフッ素が含まれており、今現在も過去も、環境基準をクリアしていたことはありません。
なによりもこの報道から危惧されるのは、国土交通省が依然としてスラグ問題を「環境基準をクリア」“するか否か”の問題にすり替えていることです。大同の危険スラグは群馬県によって“産業廃棄物”に認定されました。にもかかわらず、国土交通省として、不法投棄された産業廃棄物をどう取り扱うのか、未だに意思表示がありません。我々住民としては次の大原則しか受け入れることはできません。
不法投棄された産業廃棄物・スラグは撤去する。
当会では微力ながら全力を挙げて、国土交通省に対して、不法投棄された産業廃棄物をどう取り扱うのか、強く問い続ける所存です。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
※参考資料1「大同特殊鋼の内部資料」
大同特殊鋼の内部資料に「環境基準の10倍までのフッ素が含まれている」ことについては当会ブログを参照して下さい
○2015年9月9日:大同スラグを斬る!・・・スラグ混合路盤材の製造及び販売管理に関する大同マニュアルで問われる企業モラル↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1715.html
※参考資料2「有害物質の希釈という禁じ手」
大同特殊鋼は土壌汚染対策法で予定される分析方法を悪用して、今回の不法投棄犯罪を計画しています。その分析方法とは、天然石とスラグを現場から均等混合しながら採取し、これを粉にし、水に浸けて分析調査することです。固形の塊を粉にすることで、液体と土を擬態した調査方法といえます。この点、環境省は、「有害スラグと天然石は希釈されない」、つまり「混ざり合うことはなく、有害物質は薄まらない」と話しています。次の国会質疑を参照ください。
◆第187回国会 経済産業委員会 第8号 平成26年11月12日(水曜日)
塩川鉄也衆院議員(共産)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009818720141112008.htm
○鎌形政府参考人 御指摘は、廃棄物と認識されるものを廃棄物でないものと混合するという行為についてということだと解釈いたしますけれども、廃棄物につきまして処理という行為がございますが、廃棄物の処理につきましては、物理的、化学的または生物学的な手段によって形態、外観、内容等について変化させるということでございますので、御指摘のようなスラグを希釈目的で自然砕石と混合する、このような行為は廃棄物の処理には当たらないということでございまして、混合されたものにつきましては、廃棄物と廃棄物でないものを混合したものとして取り扱っていくべきもの、こういうことと解釈してございます。
※参考資料3
【9月11日】大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について(廃棄物・リサイクル課)
《大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について》
http://www.pref.gunma.jp/houdou/e1700084.html
(7)ふっ素の土壌環境基準等が設定されて以降、大同特殊鋼(株)渋川工場から製鋼過程の副産物として排出された鉄鋼スラグは、土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性があり、また、平成14年4月から平成26年1月までの間、関係者の間で逆有償取引等が行われていたことなどから、当該スラグは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案し、廃棄物と認定される。
詳しくはこちらを参照ください↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1723.html#readmore
※参考資料4
「環境省から各都道府県サンパイ所管部署長あて通知」
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https://www.google.com/url?q=https://www.env.go.jp/hourei/add/k040.pdf&sa=U&ved=0CBoQFjAIOApqFQoTCJ3Pj8iflMkCFSPapgodv3gNSQ&client=internal-uds-cse&usg=AFQjCNHn8XQ6PWIG5LSQflPDNx5098ua_g
産発第1303299号
平成25年3月29日
各都道府県・各政令市産業廃棄物行政主管部(局)長 殿
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長
行政処分の指針について(通知)
第8 措置命令(法第19条の5)
1 趣旨
(1) 都道府県知事は、処理基準又は保管基準(以下「処理基準等」という。)に適合しない産業廃棄物の処理が行われた場合において、生活環境の保全上の支障を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、必要な限度においてその支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずるように命ずることができることから、これらの者による不適正な処分を把握した場合には、速やかに命令を行い、生活環境の保全上の支障の発生を防止し、又は除去されたいこと。なお、この場合において、処理基準等に違反する状態が継続している(不法投棄の場合であれば、廃棄物が投棄されたままの状態が継続している。)以上、いつでも必要に応じ命令を発出することができること。
(2) 法第19条の5は、「命ずることができる」と規定されているところ、同条は生活環境の保全を図るため都道府県知事に与えられた権限を定める趣旨であるから、不適正処理された産業廃棄物の種類、数量、それによる生活環境の保全上の支障の程度、その発生の危険性など客観的事情から都道府県知事による命令の発出が必要であるにも関わらず、合理的な根拠がなく権限の行使を怠っている場合には、違法とされる余地があること。
2 要件
(1) 生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるとき
①「生活環境」とは、環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項に規定する「生活環境」と同義であり、社会通念に従って一般的に理解される生活環境に加え、人の生活に密接な関係のある財産又は人の生活に密接な関係のある動植物若しくはその生育環境を含むものであること。また、「生活環境の保全」には当然に人の健康の保護も含まれること。
②「おそれ」とは「危険」と同意義で、実害としての支障の生ずる可能性ないし蓋然性のある状態をいうこと。しかし、高度の蓋然性や切迫性までは要求されておらず、通常人をして支障の生ずるおそれがあると思わせるに相当な状態をもって足りること。
③このように「生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがある」とは、人の生活に密接な関係がある環境に何らかの支障が現実に生じ、又は通常人をしてそのおそれがあると思わせるに相当な状態が生ずることをいい、例えば、安定型産業廃棄物が道路、鉄道など公共用の区域や他人の所有地に飛散、流出するおそれがある場合、最終処分場以外の場所に埋め立てられた場合なども当然に対象となること。
----中略-----
3 内容
(1) 命令は「必要な限度において」とされており、支障の程度及び状況に応じ、その支障を除去し又は発生を防止するために必要であり、かつ経済的にも技術的にも最も合理的な手段を選択して措置を講ずるように命じなくてはならないこと。具体的には、例えば、最終処分場において、浸出液により公共の水域を汚染するおそれが生じている場合には、遮蔽工事や浸出液処理施設の維持管理によって支障の発生を防止できるときは、まずその措置を講ずるように命ずるべきであって、これらの方法によっては支障の発生を防止できないときに初めて、処分された廃棄物の撤去を命ずるべきであること。
当会注:“極悪”佐藤建設工業は有害スラグを成分が異なるのに天然盛り土材と偽装して不法投棄していました。盛り土材に混入されているので接する直下の土壌にフッ素が流失し土壌を汚染してしまいます。上記3内容(1)にあるように広域に施工された毒入り盛り土を全部いったん撤去して遮蔽工事することは対象が広すぎ不可能なのではないでしょうか、ましてや浸出液処理施設を造りの維持管理によって支障の発生を防止することなども不可能です、であれば撤去しかないのではないでしょうか?つまりこれらの方法では支障の発生を防止できないと考えられ、廃棄物の撤去を命ずるべきと結論づけられると考えます。
環境問題に一言ありの方が入っているならば、オンブズマンさんの言うことに対して、疑義を持つけどね。
オンブズマンさんが調べて紹介してください。
コメントありがとうございます。
ご指摘のとおり、鐵鋼スラグ協会は、鉄鋼協会の傘下にあり、常勤の幹部は全て鉄鋼業界のOBや経産省の天下り役人たちです。
市民オンブズンマン群馬では、2014年10月に鐵鋼スラグ協会の内田靖人常務理事に対して、大同スラグ問題に関連して、環境面のことで確認を求めようとしたことがありますが、ことごとく回答を拒否されたうえ、今後面談等にも一切応じないとする公式見解を突き付けられました。
したがって、直接鐵鋼スラグ協会を訪問して、調査をすることはできませんが、引き続き大同スラグ問題については、鐵鋼スラグ協会の関与に関して、間接的な手法で調べていくことにしております。
今後とも、当会のブログ記事をご愛読いただくと共に、当会の活動にご注目ください。
市民オンブズマン群馬事務局より