ものがたりいのちゃんの夏
ぼくは、いのしし年に生まれたので、「いのちゃん」と、おかあさんはいう。
だいたい、一番ぼくの味方でないといけないのに、どうしてそんな!?
といつも思うのだが、おかあさんもいのしし年生まれなので、
自分のことを「おいのちゃん」という。
「おいのにまかせとけ」
とか
「おいのにまかせろ」
とか言っていつもぼくを助けてくれるから、
文句が言えない。
だからぼくは「おい、いの」といってやる。
そうするとかならずおかあさんは「おいのちゃん」でしょ。
といって、かならずかならず言い換えさせる。
そのときのおかあさんは、
それはそれはかわいい声だ!
いのししってそんな声ださないよって思うけど。
そんなおかあさんでも
ひとつだけどうしてもできないことがある。
これだけはどうしてもぼくができなくても、助けられない。
もうすぐ夏がくる。
夏が来るとプールが始まる。
今年来るとぼくは3年生だから、3回目だ。
今までは、まだ、泳げない友達がいたので、
ぼくは、気が楽だった。
でも、その友達もスイミングスクールに行って、泳げるようになった。
でもぼくはスクール行っていない。
おかあさんは、「泳げなくったって平気、だって、おかあさんも泳げないんだから」
といって、スクールに通えと言わない。
ぼくはいやだ、もし、通えといわれても、ぼくはいやだ。
「いやだいやだ、こわいこわい。」
これにはわけがある。
ぼくが、2歳のとき、海にみんなで遊びに行った。
その時、ぼくはおかあさんの背中におんぶされて、船を待っていた。
海まわりの観光船に乗るため、海に突き出た船着場で待っていた。
ぼくは安心してきょろきょろまわりを見渡していた。
すると突然、ぼくは水の中、ぶくぶくぶくぶく、
「つめたーい、」
「息ができなーい!」
なにがなんだかわからなかった、
まわりは青くぼーとして、
ぼくは一人ぼっちになった。
気がついたら、ぼくはお父さんにだっこされて、
息ができるようになった。
近くにおかあさんがいて、「わーーー」と言っていた。
みんなはなにもなかったように船に乗り、
船底から海を見ていた。
おかあさんもにこにこしていた。
ぼくはなんにもいえなかったし笑えなかった。
だからぼくはそれから水の中に入れなくなったのだ。
「あーーー、いやだいやだ。」
でもだれも、ぼくが、水がどうしてきらいか知らない。
だって、おかあさんの失敗で
おんぶしていたぼくを海のなかに落としたのだから。
おかあさんは1度だけ、
おばあちゃんにぼくが落ちたことを話したことがあった。
「するっと背中からすべって落ちたのよ!」
(まるでぼくが悪いみたい)
「そしたら、港でしょ、5メートルぐらいはあったでしょ、あれよあれよと
沈んでいったんよ。」
それからぼくは
水に入れなくなったんだ。
プールが近づく、プールが近づく・・・・
どうしよう、どうしよう・・・・
ぼくはいつもイメージしながら、寝る。
広い海に一人、すいすいと泳いでいるぼく、わーい泳げたぞ!!
でもその日はなぜかこいでもこいでも先に進まない、
おかあさんの声が聞こる。
「いの、いの、がんばって、がんばって」
その時だ、おおきな黒い魚が近づいてぼくをおしあげた
やっと、海の上にあがって息ができた。
でも、それからまた、すすすーーーと沈んでいく、
たいへんたいへん、ばたばたばたばた、
いや、すいすい
いつものイメージトレーニングのクロールをする。
でも、だめ
くるしいーーーー
気が遠くなりかけたとき、ぼくの鼻の頭にふうせんができて
すっと息ができる。
あれっと目をあけると、黒いいのししが旗をふっている
すると、小魚たちが沢山集まってくる。
ぼくの鼻のさきには、すでに小魚が集まって、口から泡を出している。
ぶくぶく、聞こえる
そうか、わかった ぼくは小魚がつくった空気をすっているのか
そうするたくさん集まった小魚たちで、
空気のふうせんは大きくなった
ぼくがばたばたしてもこわれない
やったーと思った
ぼくはふうせんからもらった空気をふっとはいた
ふっとはいたら、ふっとすいたくなった
はいたらすっと沈む
そのとき、イメージした顔つけをしてみた
顔を横にしたら、鼻がふうせんにでた、
もっと横にしたら口も出た
そこで、はっと息をすった
あ、これ、はじめて!!
こんなふうにはいてすうのか
ぼくはうれしくなった。
そして、泳ぐのを止めて、
いつも、せんせいが言っている、
顔をつけたら、息をはいて、、、、、
顔を横にしたら、口をとがらせ、
魚のようにはっとすった。
そうすると自然にからだが横になって浮いてきた。
小魚たちは一生懸命に海の上の空気をすっとすって、
まるい風船のなかに空気をはいた。
ぼくが手を動かして前に進むと
ふうせんも前に動いた。
前のほうに黒いいのししがいる。
笑っているように見える。
黒いいのししは旗を持って、小魚たちをリードしていた。
ぼくはもう夢中になってすってはいてのクロールをした。
すっと軽くすって、ゆっくりはくと
ちっともせつくならない。
そうするぼくは海の上にでた。
もうふうせんはいらない。
しょっぱい水がときどき口の中に入ってくる
ごくんとのむ
でももうしずまない
ちかくに旗を持ったいのししは?と思って見渡すと
旗をくわえたイルカがいた
下のほうに足と毛が残っている
あ、いのししがイルカなった!!!!
そうか、イルカの祖先はいのししだったんだ?
そんなことがこころに浮かぶほど
ぼくは余裕だった。
「いのちゃん、よくやったね」
イルカがいった
ぼくも大きくなったらイルカになるのかな
だって、いのししどし生まれだから?
すいすいおよげる
ぼく。
たのしい いのちゃんの 夏
(おわり)
ぼくは、いのしし年に生まれたので、「いのちゃん」と、おかあさんはいう。
だいたい、一番ぼくの味方でないといけないのに、どうしてそんな!?
といつも思うのだが、おかあさんもいのしし年生まれなので、
自分のことを「おいのちゃん」という。
「おいのにまかせとけ」
とか
「おいのにまかせろ」
とか言っていつもぼくを助けてくれるから、
文句が言えない。
だからぼくは「おい、いの」といってやる。
そうするとかならずおかあさんは「おいのちゃん」でしょ。
といって、かならずかならず言い換えさせる。
そのときのおかあさんは、
それはそれはかわいい声だ!
いのししってそんな声ださないよって思うけど。
そんなおかあさんでも
ひとつだけどうしてもできないことがある。
これだけはどうしてもぼくができなくても、助けられない。
もうすぐ夏がくる。
夏が来るとプールが始まる。
今年来るとぼくは3年生だから、3回目だ。
今までは、まだ、泳げない友達がいたので、
ぼくは、気が楽だった。
でも、その友達もスイミングスクールに行って、泳げるようになった。
でもぼくはスクール行っていない。
おかあさんは、「泳げなくったって平気、だって、おかあさんも泳げないんだから」
といって、スクールに通えと言わない。
ぼくはいやだ、もし、通えといわれても、ぼくはいやだ。
「いやだいやだ、こわいこわい。」
これにはわけがある。
ぼくが、2歳のとき、海にみんなで遊びに行った。
その時、ぼくはおかあさんの背中におんぶされて、船を待っていた。
海まわりの観光船に乗るため、海に突き出た船着場で待っていた。
ぼくは安心してきょろきょろまわりを見渡していた。
すると突然、ぼくは水の中、ぶくぶくぶくぶく、
「つめたーい、」
「息ができなーい!」
なにがなんだかわからなかった、
まわりは青くぼーとして、
ぼくは一人ぼっちになった。
気がついたら、ぼくはお父さんにだっこされて、
息ができるようになった。
近くにおかあさんがいて、「わーーー」と言っていた。
みんなはなにもなかったように船に乗り、
船底から海を見ていた。
おかあさんもにこにこしていた。
ぼくはなんにもいえなかったし笑えなかった。
だからぼくはそれから水の中に入れなくなったのだ。
「あーーー、いやだいやだ。」
でもだれも、ぼくが、水がどうしてきらいか知らない。
だって、おかあさんの失敗で
おんぶしていたぼくを海のなかに落としたのだから。
おかあさんは1度だけ、
おばあちゃんにぼくが落ちたことを話したことがあった。
「するっと背中からすべって落ちたのよ!」
(まるでぼくが悪いみたい)
「そしたら、港でしょ、5メートルぐらいはあったでしょ、あれよあれよと
沈んでいったんよ。」
それからぼくは
水に入れなくなったんだ。
プールが近づく、プールが近づく・・・・
どうしよう、どうしよう・・・・
ぼくはいつもイメージしながら、寝る。
広い海に一人、すいすいと泳いでいるぼく、わーい泳げたぞ!!
でもその日はなぜかこいでもこいでも先に進まない、
おかあさんの声が聞こる。
「いの、いの、がんばって、がんばって」
その時だ、おおきな黒い魚が近づいてぼくをおしあげた
やっと、海の上にあがって息ができた。
でも、それからまた、すすすーーーと沈んでいく、
たいへんたいへん、ばたばたばたばた、
いや、すいすい
いつものイメージトレーニングのクロールをする。
でも、だめ
くるしいーーーー
気が遠くなりかけたとき、ぼくの鼻の頭にふうせんができて
すっと息ができる。
あれっと目をあけると、黒いいのししが旗をふっている
すると、小魚たちが沢山集まってくる。
ぼくの鼻のさきには、すでに小魚が集まって、口から泡を出している。
ぶくぶく、聞こえる
そうか、わかった ぼくは小魚がつくった空気をすっているのか
そうするたくさん集まった小魚たちで、
空気のふうせんは大きくなった
ぼくがばたばたしてもこわれない
やったーと思った
ぼくはふうせんからもらった空気をふっとはいた
ふっとはいたら、ふっとすいたくなった
はいたらすっと沈む
そのとき、イメージした顔つけをしてみた
顔を横にしたら、鼻がふうせんにでた、
もっと横にしたら口も出た
そこで、はっと息をすった
あ、これ、はじめて!!
こんなふうにはいてすうのか
ぼくはうれしくなった。
そして、泳ぐのを止めて、
いつも、せんせいが言っている、
顔をつけたら、息をはいて、、、、、
顔を横にしたら、口をとがらせ、
魚のようにはっとすった。
そうすると自然にからだが横になって浮いてきた。
小魚たちは一生懸命に海の上の空気をすっとすって、
まるい風船のなかに空気をはいた。
ぼくが手を動かして前に進むと
ふうせんも前に動いた。
前のほうに黒いいのししがいる。
笑っているように見える。
黒いいのししは旗を持って、小魚たちをリードしていた。
ぼくはもう夢中になってすってはいてのクロールをした。
すっと軽くすって、ゆっくりはくと
ちっともせつくならない。
そうするぼくは海の上にでた。
もうふうせんはいらない。
しょっぱい水がときどき口の中に入ってくる
ごくんとのむ
でももうしずまない
ちかくに旗を持ったいのししは?と思って見渡すと
旗をくわえたイルカがいた
下のほうに足と毛が残っている
あ、いのししがイルカなった!!!!
そうか、イルカの祖先はいのししだったんだ?
そんなことがこころに浮かぶほど
ぼくは余裕だった。
「いのちゃん、よくやったね」
イルカがいった
ぼくも大きくなったらイルカになるのかな
だって、いのししどし生まれだから?
すいすいおよげる
ぼく。
たのしい いのちゃんの 夏
(おわり)