聖火リレー沿道で「密」あちこちに 会食禁止守らぬランナーも
2021年3月25日 20時34分
東京五輪の聖火リレーが25日、福島県からスタートした。7月23日の開会式まで121日間、約1万人のランナーが列島を巡る。新型コロナウイルス感染防止対策が焦点だが、観客の密集が一部で見られ、事前の会食禁止を守らなかったランナーがいたことも判明。初日から実効性が問われる事態となった。
出発式はサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)で行われ、大会組織委員会の橋本聖子会長が「日本と世界の皆さんの希望が詰まった大きな光となることを祈念する」と述べた。第1走者は、2011年サッカー女子ワールドカップで優勝した日本代表「なでしこジャパン」の元メンバー宮間あやさんらがグループで務めた。
◆「やっぱり人は出てくる」心配の声
いわき市の沿道では観客が二重三重に人垣を作り、肩が触れあうほど接近した場所があった。同市の自営業鈴木三郎さん(84)は「やっぱり人は出てきちゃう。福島でも感染者が増えているのに心配だ」と話した。
ランナーを先導するスポンサー宣伝車の上では、マスクを着けずに叫ぶDJ(ディスクジョッキー)も。鈴木さんは「見る側に対策を求めているのに、運営側ができていない」。
ランナーを先導するスポンサー宣伝車の上では、マスクを着けずに叫ぶDJ(ディスクジョッキー)も。鈴木さんは「見る側に対策を求めているのに、運営側ができていない」。
組織委は、密集をスタッフが注意しても解消されない場合、走行中止を検討するとしていたが、組織委の武藤敏郎事務総長はリレー終了後の会見で「身動きが取れないほど密な状態はなかった」との認識を示した。
◆会食は禁止、PCR検査も推奨だけど…
一方、ランナーには走行前2週間の会食禁止が求められている。ランナーを務めた男性は取材に「勤務先の少人数の送別会に参加した」と明かした。
県外から参加するランナーには、走行前72時間以内にPCRなどの検査を受けることが推奨されているが、複数のランナーが取材に未検査だと証言。検査費用は組織委が負担するが、ランナーらは「受ける時間がない」「万が一、陽性になると勤務先に迷惑をかけるから」と説明した。(原田遼)
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◆反対派の市民団体が新橋駅前でデモ
一方、東京・新橋では25日夜、東京五輪の開催に反対する市民団体「『オリンピック災害』おことわり連絡会」が抗議デモを行った。JR新橋駅前に集まった参加者は「聖火を止めろ 五輪は中止」「オリンピックより命を守れ」と書いたプラカードを掲げ、東京大会の組織委員会がある中央区晴海まで行進した。
参加した大友深雪さん(74)=神奈川県平塚市=は「復興五輪と言うが福島は復興していない。新型コロナウイルスも感染が拡大している。五輪は今すぐに中止すべきだ」と語った。(砂上麻子)