「あり得ない」一刻を争う急患、病院前で順番待ち 滋賀の病院「コロナ第4波」で逼迫
2021年4月26日 (月)配信京都新聞
新型コロナウイルス感染者の急増が、滋賀県の救急救命病院の現場にも影響を及ぼし始めている。県内の4月の病床使用率は比較的低かったが、25日までの数日間、県内唯一の高度救命救急センターに指定されている大津赤十字病院(大津市)にはコロナ患者が次々に搬送され、コロナ以外の急患対応を含む一般医療に影響が出かねない状況となっている。感染「第4波」のさなか、医療の最前線はどのような状況にあるのか。同病院に記者が入った。
滋賀県内の新規感染者が68人と過去最多を更新した4月23日、昼すぎの病院前には救急車3台が患者を乗せたまま止まっていた。うち1台は、県内の宿泊療養施設から50代の女性を搬送。38度台の発熱が続き血中酸素濃度が低下したため、入院となった。
コロナ患者を受け入れる際には、消毒や他の患者と接触しない動線を確保する必要がある。そのため、一刻を争う急患が病院前で順番待ちするという「あり得ない」(大津赤十字病院幹部)状況が日常化しつつある。
大津赤十字病院は当初、重篤なコロナ患者を集中治療室(ICU)8床のうち4床で受け入れてきた。しかし今冬の第3波を受け、2月からは県の要請で一般病棟の一部を軽症・中等症のコロナ専用に転換。ICUと併せ計20床で患者に対応している。
この1年で患者90人を受け入れたが、今月だけで30人を数える。「患者急増の背景にはウイルス変異株の広がりがある」。河南智晴副院長は指摘する。
変異株は感染力が強く、無症状の期間も長いとされる。河南副院長によると、交通事故で搬送された人や別の疾患で入院中の患者らの中に、精密検査の過程で感染が判明する例が相次ぐようになった。
4月23日時点で入院していたコロナ患者は19人。変異株は3人から検出されているが、県の検査が追いついておらず正確な数は把握できずにいる。ただ、多くの患者に、ウイルス量が減った感染後期に発熱症状が現れる変異株の特徴が見られるという。
「最近は40~50代の重症化が顕著。容体悪化のスピードも早く、常に緊迫感がある」。変異株の拡大に直面する看護師の表情は硬かった。コロナ用ICUは満床のため、重篤化が命の危機に直結しかねない。患者のわずかな状態の変化にも気を抜けない。
今回の第4波では毎日2~3人のコロナ患者の受け入れに加え、始まった高齢者へのワクチン接種などにも人手を割かねばならない。医療現場に求められる業務は格段に増えている。「県民の皆さんが思っている以上に県内のコロナ病床は逼迫(ひっぱく)している。これ以上感染拡大が続けば、一般医療かコロナ治療、どちらかを切り捨てざるを得ない状況を迎える」。河南副院長は警鐘を鳴らす。