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三重大病院のゲノム解析 一人一人に適したがん治療選択

2018年03月12日 03時18分58秒 | ガン
三重大病院のゲノム解析 一人一人に適したがん治療選択
2018年3月6日 (火)配信中日新聞

 三重大病院(津市)は、遺伝子の情報を網羅的に調べることで効果的ながん治療を選択したり、将来的ながん発症の可能性を調べたりする検査を、2017年8月から開始した。保険が利用できないため自由診療だが、標準的ながん治療を尽くした後に再発した人や、近親者にがん患者が多く不安に感じている人らを幅広く受け入れていく考えだ。
 最近は、個々の患者の遺伝子を解析する「次世代シークエンサー」という装置が使われるようになり、がんを引き起こす遺伝子の変異のタイプを調べて、それぞれの患者に効果的な抗がん剤を選ぶことができるようになってきた。国も、遺伝子の情報に基づき治療方針を決める「がんゲノム医療」を推進している。
 がん細胞などの検体を米国の検査会社に送る大学病院もあるが、三重大病院は院内の設備で解析ができるのが強みだ。「ミライ―S」と名付けた検査は、がん発症後に標準的な治療を受けたものの再発や病状が進行した患者が対象。がん発症にかかわる一般的な遺伝子約50種類の中から、該当する変異がないかを探す。
 三重県の80代女性は、大腸がんを手術で切除後、抗がん剤治療を受けたが、再発した。総合病院の主治医は積極的な治療は終了する旨を伝えたが、この検査を知った女性が三重大病院を受診した。費用は29万7000円(税別)。再発部分の組織から遺伝子を抽出して解析。遺伝子疾患や抗がん剤治療に詳しい医師らでつくる会議で遺伝子のデータを検討したところ、特定の抗がん剤が効きそうなパターンだと分かり、新たな治療に入ることになった。同病院中央検査部の中谷中(かなめ)部長は「候補の抗がん剤が出てきたことで、治療を続けていこうという意欲も出てきた」と話す。
 親族にがん患者が多く「がん家系では」と心配な人向けには「ミライ―G」検査=54万円(同)=を用意した。血液を調べ、遺伝性の腫瘍の原因となる約400の遺伝子に変異がないかを解析する。「遺伝子変異があると分かれば、精密な検査を継続的に続けて早期発見を目指すこともできる」と意義を説明する。
 難しいのは、親から受け継いだ遺伝子の異常が見つかった場合、本人だけでなく子や孫も関係する話となることだ。
 卵巣がんの手術を受け、抗がん剤治療中の40代女性は、遺伝子検査の結果、「BRCA」と呼ばれる遺伝子に生まれつき変異があり「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」だったと分かった。生涯で乳がんや卵巣がんを患う可能性が一般の人より高くなる。米俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、がんを予防するために乳房と卵巣を切除したことで知られる病気だ。女性には、10~20代の男女3人の子どもがおり、同じ遺伝子変異を持つ確率は50%。男性も、乳がんや前立腺がんを患う可能性が高くなるとされる。
 将来的にがんにかかる可能性があると分かることで就職や結婚などに不利に働くのではないかとの不安に駆られるケースもある。
 三重大病院では、遺伝子検査の際に臨床遺伝専門医と遺伝カウンセラー(臨床心理士)らが患者に「遺伝カウンセリング」を実施。病気や治療について正しく理解してもらい、家族にも影響が及んだり、別の遺伝病も見つかったりする可能性を説明し、納得の上で実施するようにしている。
 がんゲノム医療に制度が追いついていないことも課題だ。女性の子どもたちのように、遺伝子の変異を受け継いでいる可能性が高いことが分かっても、がんが発症していなければ保険適用がされず、遺伝子検査や予防的な治療を希望する場合は、自己負担となる。保険適用については今後、議論されていく予定だ。
 中谷部長は「地方でも最新の医療を提供したいと思い、自由診療で始めた。将来は、がんを患う危険性が高い人を発症前から診ることで、早期の治療につなげていきたい」と話す。
 ◇がんゲノム医療 がんは、親から受け継いだり、何らかの原因でできたりした遺伝子の変異が引き起こすため、遺伝子の塩基配列を読み取り、特定の抗がん剤が効きやすいパターンがないかなどを調べる。どんな変異が起きているかは1人1人異なり、同じ部位のがんでも遺伝子変異のタイプが違うものがある。国は2月、名古屋大や東京大、京都大などの大学病院や国立がん研究センター中央病院など11施設を「がんゲノム医療中核拠点病院」に指定した。

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