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香山リカのココロの万華鏡:「発信休業」あってもよい /東京

2017年08月30日 19時30分31秒 | カメラ
香山リカのココロの万華鏡:「発信休業」あってもよい /東京
2017年8月29日 (火)配信毎日新聞社

 「インスタ映え」という言葉が流行しているそうだ。スマホなどで見られる画像やコメントの情報発信メディアの一つが写真共有アプリ「インスタグラム」。通称インスタ。そこに、より印象的な写真を載せたいと思う人たちが「この風景をバックに写真を撮ったら“インスタ映え”しそう」と使うらしい。
 「いろいろな言葉があるな」と思っていたら、先日、知人から来たパーティーのお知らせメールに「会場はすてきなレストランなので、“インスタ映え”する写真が撮れますよ!」と書かれていた。私はそのサービスを使っていないのだが、そう言われて「よし、それなら出席しよう」と思う人もいるのだろうか。「そんな理由で出席してもらって主催者はうれしいのだろうか。いや、自分でそういうお知らせメールを出しているのだから、きっとそれでいいのだ」などとちょっと考え込んでしまった。
 ときどき診察室でも似たような話を聞く。うつ病などで意欲や活気が低下しているのに、日記形式の情報発信メディアに載せる写真を撮るために外出したり、活動したりしてさらに疲れる、という人がいるのだ。
 話を聞いたときは私も驚き、「スマホでみんなが見るあなたの写真は笑顔でも、実際には気持ちが落ち込んでるわけでしょう。それはおかしいですよ」などと言っていた。しかし「一日でも発信を中止すると友人に怪しまれる」「お弁当の写真を毎日、載せないと子どもが学校で何を言われるか分からない」といった必死の訴えを聴いて、「毎日何かを発信するのは、現代社会では避けられない義務になっているんだな」と思うようになった。
 でも、とくにうつ病などの人にとってはこれは大変なストレスだ。もちろん、写真を撮るために無理してでも外出することがリハビリとなる場合もあるが、それはかなり回復してからの話。初期で症状も重いときは、誰とも連絡せずに何もしないでゆっくり寝ているのがいちばん、ということが多い。
 さらに、うつ病の人に限らず、誰だって「今日は誰にも会いたくない」「そっとしておいてほしい」というときがある。「何がなんでも“インスタ映え”する写真を撮らなければ」と思うこと自体、心の重荷になることもあるだろう。
 私たちの毎日を楽しいものにしてくれる情報発信メディアだが、「今日は休業」があってもよい。新しい技術とは、もっとゆるくつき合っていきたいものだ。(精神科医)

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