今しか学べないこと学ぼう 休学選んだ23歳医学生 「コロナ それぞれの1年」
「100年に一度の公衆衛生危機」と言われるコロナ禍に立ち向かうために、状況の分析や評価に尽力する感染症の専門家たち。彼らの活動を間近で見て学びたい―。長崎大医学部に在籍する山崎里紗(やまさき・りさ)さん(23)は2月から大学を休学し、国立感染症研究所などの研究者の業務支援を始めた。
昨年2月まで「春休みは海外旅行に」と思っていたほど新型コロナは全くひとごとだった。だが、コロナの集団感染例を分析する厚生労働省のクラスター対策班がボランティアを募集していると聞いたのがきっかけで、深く関わるようになる。
手伝ったのはデータ入力。専門家はデータを基に、感染がどのように拡大していくのか、議論しながら分析を進める。その姿に目を見張った。
翻って、自分のような若い世代の情報格差の深刻さを感じた。「医学部の友人でさえLINE(ライン)のニュースを見るくらいでテレビや新聞はほとんど見ない」。インターネット上の間違った情報をうのみにしてしまうリスクもある。
まずは自分が触れた正しい知識を同世代に発信しようと、動画投稿サイト「ユーチューブ」のチャンネルを開設。「新型コロナが大変なのは分かるけど、正直何をしたらよいの」「外出はどこまでOK? 犬の散歩や恋人と会うのはどう」―。インタビューに応じてくれた専門家の話を基に、さまざまなテーマを取り上げた。
ただ、著名人でもない自分では影響は限られる。流行長期化とともに人々の関心が薄れることも実感した。何をすべきなのか、見つめ直した。
コロナ禍でオンライン化が進み、医学部の病院実習では患者に接する機会が減ってしまった。一方、遠方で開催されると参加が難しかった専門学会はオンラインで格段に身近になった。「未来に向けて今しか学べないことがあるのではないか」。考えがまとまり、休学を決断した。
今関わっている研究支援業務も多くはオンラインで対応可能だ。「誰とでもいつでもつながることができるようになった。(仕事に)刺激を受けている」と山崎さん。「コロナの影響は暗いものばかりではないと思う」と話す。将来は大学に戻って医師免許を取得し、経験を生かせる仕事に携わりたいと考えている。
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