【奈良】カラフル病室 心癒やす
2018年11月22日 (木)配信読売新聞
◇奈良で「ホスピタルアート」展覧会
患者の心身を癒やすため、殺風景になりがちな病院内を色彩豊かな絵画などで彩る「ホスピタルアート」をテーマにした展覧会が、奈良市で開かれている。「快適性は二の次」という考えが根強かった医療現場に、独自の色彩活用の理論を導入した市民グループ代表の川西真寿実さんは、「色で患者たちの空間を居心地の良いものに変え、生きる力につながれば」としている。(鈴木彪将)
展覧会場は奈良市今辻子町の「ギャラリー・アウト・オブ・プレイス」。目に飛び込んで来たのは、中心に置かれたシングルベッドだ。全体を病室に見立て、寝転がると赤や黄色の花で飾られたカーテンに囲まれる。壁には淡い黄色の光の玉が浮かぶ絵画が掲げられる。
川西さんは「殺風景で真っ白な病室の世界に広がりができたようで、患者は新鮮な感覚になるはず」と考える。
中でも小児がんを克服した少女が描いた作品は目を引く。鮮やかな色をした笑顔の人たちが何十人も並んだ。重い病で落ち込みがちな患者に「明けない夜はない」と前向きな気持ちにさせてくれるという。ほかに車いすや病床などから見える風景を撮影した写真作品など、約40点を紹介している。
訪れた生駒市の看護師榊原民さん(54)は「職場で寝たきりの患者が、目の前のテレビをぼんやりと見る姿を目にし、彼らにとって本当の癒やしとは何なのか考えていた。展示の絵や映像はどこか温かみがあり、自然と笑顔になれ、こういうものが求められているのだと感じた」と話した。
川西さんは、小児がん患者や終末期医療患者を対象に独自に色彩を生かして患者の気持ちを前向きにする手法「リハビリカラーセッション」を提唱。生まれ持った肌や髪、瞳の色に調和する「自分の色」を探す考え方を医療現場に導入した。
52色を基本に構成し、色布を1枚ずつ患者の胸元に当て、適したものを探す。放射線治療中は色素が濃くなったり、抗がん剤治療中は血色が薄くなったりするなど、治療段階での変化も見逃さない。適した色が決まれば、その色のバンダナやスカーフを一緒に作る。月数回、依頼があるという。
カラーコーディネーターの資格を持ち、色彩に精通。約5年前、父親が胃がんを発症後、入退院を繰り返した。その後、在宅医療に転じたが、病状が進行し、首回りの骨の形が浮き出るほど痩せこけた。
父は首もとまで襟があるシャツにこだわり、爽やかな青色の洋服ばかりを選んで着たという。川西さんが茶色などダークカラーのパジャマを渡しても着なかった。「最期まで美しい姿で生きていると思われたいのだ」と感じた。父は14年に79歳で肺炎のため亡くなった。
「患者に彩りを入れることは、心を健やかにするきっかけになる」と考え、川西さんは友人らと昨年4月、市民グループ「ひといろプロジェクト」を創設した。「現代の医療に足りない部分を色彩やアートで補っていきたい」と力を込める。
展示は30日まで。無料。問い合わせは、同ギャラリー(0742・26・1001)。
【ホスピタルアート】
医療や福祉施設に絵画などの芸術を取り入れ、患者や医療従事者らにより良い環境を作る取り組み。諸説あるが、1970年代から英国などで本格的に始まり、日本でも2000年代以降、導入する病院が増えてきた。
2018年11月22日 (木)配信読売新聞
◇奈良で「ホスピタルアート」展覧会
患者の心身を癒やすため、殺風景になりがちな病院内を色彩豊かな絵画などで彩る「ホスピタルアート」をテーマにした展覧会が、奈良市で開かれている。「快適性は二の次」という考えが根強かった医療現場に、独自の色彩活用の理論を導入した市民グループ代表の川西真寿実さんは、「色で患者たちの空間を居心地の良いものに変え、生きる力につながれば」としている。(鈴木彪将)
展覧会場は奈良市今辻子町の「ギャラリー・アウト・オブ・プレイス」。目に飛び込んで来たのは、中心に置かれたシングルベッドだ。全体を病室に見立て、寝転がると赤や黄色の花で飾られたカーテンに囲まれる。壁には淡い黄色の光の玉が浮かぶ絵画が掲げられる。
川西さんは「殺風景で真っ白な病室の世界に広がりができたようで、患者は新鮮な感覚になるはず」と考える。
中でも小児がんを克服した少女が描いた作品は目を引く。鮮やかな色をした笑顔の人たちが何十人も並んだ。重い病で落ち込みがちな患者に「明けない夜はない」と前向きな気持ちにさせてくれるという。ほかに車いすや病床などから見える風景を撮影した写真作品など、約40点を紹介している。
訪れた生駒市の看護師榊原民さん(54)は「職場で寝たきりの患者が、目の前のテレビをぼんやりと見る姿を目にし、彼らにとって本当の癒やしとは何なのか考えていた。展示の絵や映像はどこか温かみがあり、自然と笑顔になれ、こういうものが求められているのだと感じた」と話した。
川西さんは、小児がん患者や終末期医療患者を対象に独自に色彩を生かして患者の気持ちを前向きにする手法「リハビリカラーセッション」を提唱。生まれ持った肌や髪、瞳の色に調和する「自分の色」を探す考え方を医療現場に導入した。
52色を基本に構成し、色布を1枚ずつ患者の胸元に当て、適したものを探す。放射線治療中は色素が濃くなったり、抗がん剤治療中は血色が薄くなったりするなど、治療段階での変化も見逃さない。適した色が決まれば、その色のバンダナやスカーフを一緒に作る。月数回、依頼があるという。
カラーコーディネーターの資格を持ち、色彩に精通。約5年前、父親が胃がんを発症後、入退院を繰り返した。その後、在宅医療に転じたが、病状が進行し、首回りの骨の形が浮き出るほど痩せこけた。
父は首もとまで襟があるシャツにこだわり、爽やかな青色の洋服ばかりを選んで着たという。川西さんが茶色などダークカラーのパジャマを渡しても着なかった。「最期まで美しい姿で生きていると思われたいのだ」と感じた。父は14年に79歳で肺炎のため亡くなった。
「患者に彩りを入れることは、心を健やかにするきっかけになる」と考え、川西さんは友人らと昨年4月、市民グループ「ひといろプロジェクト」を創設した。「現代の医療に足りない部分を色彩やアートで補っていきたい」と力を込める。
展示は30日まで。無料。問い合わせは、同ギャラリー(0742・26・1001)。
【ホスピタルアート】
医療や福祉施設に絵画などの芸術を取り入れ、患者や医療従事者らにより良い環境を作る取り組み。諸説あるが、1970年代から英国などで本格的に始まり、日本でも2000年代以降、導入する病院が増えてきた。
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