新型コロナ入院患者 半数は軽症者 全自病調査 施設の役割分担求める【田村専門委員の「まるごと医療」】
自治体病院でつくる全国自治体病院協議会(全自病)は3月、新型コロナウイルス感染症の第3波に見舞われた2020年11月~21年1月の影響等実態調査(速報値)をまとめた。それによると、新型コロナでの入院患者の重症度別の内訳で、軽症の患者が半数近くを占めていた。
国は第4波以降に備え、今冬の2倍程度の患者数の急増も想定した医療体制づくりを都道府県に求めている。3月25日に東京都内で記者会見した小熊豊会長は、公立病院として患者増に対応するのは当然だとしたうえで、急な病床の増加には難しい面があり、大規模病院でも入院患者のかなりを軽症者が占めていたとの調査結果を踏まえ、軽症者は施設で療養するなどの役割分担や、患者の急激な増加そのものを抑えることの重要性を訴えた。
500床以上の大規模病院でも軽症者が4割
調査は、速報値として役員所属の89病院を対象に行い、71病院から回答があった。精神科病院を除く一般病院68病院のうち、新型コロナ患者の入院を受け入れたのは56病院(82.4%)だった。
入院患者(4743人)の重症度別の内訳をみると、軽症47.0%、中等症32.8%、重症5.0%、死亡2.9%、不明12.2%だった。
地域の中核病院として新型コロナ以外の一般医療も中心的に担っている500床以上の大規模病院に限っても、軽症38.9%、中等症31.8%、重症5.3%、死亡4.2%、不明19.8%で、軽症の患者が4割近くに上っていた。400床台の病院では軽症43.5%、300床台では58.8%を軽症患者が占めた。
「後方支援体制がなく対応に苦慮」も3割
都道府県内で行政、医療機関と協議会を設立するなどの情報交換や患者の移送.連携体制が取れているかどうかの設問(2月末時点)では、「できている」が81.4%だったのに対し、「協議中」が4.3%、「できていない」も14.3%あった。
また、新型コロナ患者受け入れ病院における後方支援体制の状況(同)については、「後方支援体制あり」が67.9%で、「後方支援体制がなく対応に苦慮している」が32.1%だった。
100床当たりの手術件数は、前年同月比で1月は新型コロナ受け入れ病院でマイナス12.4%、未受け入れ病院でマイナス5.7%。100床当たりの救急患者数は、同じく受け入れ病院でマイナス33.4%、未受け入れ病院でマイナス33.0%だった。
現場スタッフは疲弊 病床倍増は「簡単ではない」
国は都道府県に対し、次の流行に備えた医療体制づくりを求めている中で、1日の新規感染者数が今冬のピークの2倍程度に急増する場合の対応を検討するよう示している。
小熊会長は記者会見で、「公立病院として、感染者が増えたらそれに対応するのは当然だということで一致している」と述べた。ただ、現実的には急に病床を倍増させることは「なかなか難しい面がある」として、現場のスタッフが疲弊している問題なども大きく、「決して簡単ではない」ことへの理解を求めた。
変異株に感染した患者は入院期間が長引く傾向があることや、専門家から従来型の患者と変異株の患者を分ける必要があると指摘されたことも、病床確保の新たな課題としている。
小熊会長は、病床確保に努めるうえでの前提として、入院患者の半数近くを占めている軽症の人に施設で療養してもらう体制をさらに拡大することや、感染者の急激な増加そのものを起こさせない取り組みの重要性を改めて強調した。(田村良彦 読売新聞専門委員)
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