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南西ドイツで愛飲されているエクスポートビーアは、ホップ苦みも薄くアルコール度もピルツナーに比べて低い。通常は室温で、場合によっては暖めて飲まれるビールである。この地方では、ヴァイツェン、ピルツナーと並ぶ三大ビールの種類である。
ベルナーオーバーランド観光で有名なスイスのインテルラーケンには、リュゥゲンという地場ビールがある。山麓の地元のスーパーで其の瓶パックを見付けた。そこには日本語で「輸出用ビール」と書いてあった。免税品のように響いた。よく見ると他の言語ではエクスポートビーアとなっていた。下面発酵のため上面発酵に比べ発酵させる時間が長く、寝かせる事から名が付いたのがラガー(倉庫)ビールである。実はエクスポートビーアというのはこのラガーをさらに発酵を長く仕上げて輸出にも耐えるようにしたという。
ラガーを「倉庫ビール」とは言わないように、「輸出用ビール」は翻訳としては誤りである。この谷の奥の町グリンデルヴァルトは、槙有恒氏がアイガーの東山綾を初登(1921)して以来日本との繋がりが深い。誰が訳したのかは知らないが、計らずしも真実を伝えて妙である。