Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

お得意さん向けの壁

2005-04-14 | 雑感
観光客向けにパッケージされたベルリンの壁ではない。自動車運転絡みの自動車保険の壁である。自動車運転のための強制保険も全て民間保険会社との契約となる。数多くのオファーの中から選択出来る一方、そこから必ず一つを選び出さなければならない。当然の様でもあるが、ここに強制保険の自由競争の問題があった。

ドイツ国内におけるトルコ人労働者の問題と東からの難民流入が毎日のように扱われていた当時である。自動車保険は、免許歴によってその危険性が測られて掛け金が計算される。つまり、乗車歴を証明出来ない限りは割り増しの掛け金が徴収される。これだけならば公平なのだが、当時は「対トルコ人の壁」というのが存在していて、明らかな外国人差別が存在した。

ある名門のドイツの総合保険会社は、自動車保険の契約件数でも五傑に入っていたと思う。だがこの会社は、外国人に対しては一種類のオファーしか用意していなかった。つまり、事故の際の賠償限度額が制限されていた。一人当たりの死亡者に対する補償額は、どの保険でも制限がある。しかしここでは、複数人を死亡させた場合もそれ以上の総額が支払われない。もしそのような事故が起これば、複数の被害者が保障を十分に受けられないことになったのだろう。もちろん保険会社にとっては、大きな損失となる。そのような制限を設けることによって、この保険会社の一般向きへの条件は若干有利になっていた。

自由競争の中で、独自の商品の開発と販売が試みられる。有利なオファーや商品には、対象を絞って販売効率を上げたりする物が多い。上の例でも一般の被保険者は、差別によって利益を貪っていたことになる。予期していた通り、この条項は数年後に憲法判断に諮られて全て無効となりその過去は謝罪された。差別の根拠とその経済効果が不明確であった。その後、その保険会社の一般の被保険者の掛け金が幾分高くなったかどうかは知らない。

最近の差別は、モスリム教徒に向けられたものが多い。その差別からどこかで利益が生じているような様子があれば、その経済的不公平に厳しい目を向ける必要がある。差別による不公平に対しては、憲法で謳われる公平を求め是正すべきである。しかし自己の権利を獲得するためには自らの手で壁を叩き壊さねばならない。憲法の理念の中で、自動的に与えられるものはない。
コメント (2)
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