Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

受け継がれるモラール

2008-07-23 | 文学・思想
オバマ候補が選出されてから、その現場が見える記事「会えなかった・・・(涙)」が面白い。常連コメンテーターのヘルメスさんが伝える選挙戦の熱気は広範囲な読者に興味を抱かせる。

男性が多数のフェミニスト達のヒラリーからオバマへの乗換えがインタヴューされている。

「今の若者はなんだ。我々が若いときは、ベトナム反戦、公民権運動、ウーマンリブ、セックス革命、五月革命と学生が中心になって運動で社会を変革していった。しかし、今の若者には、パッションが感じられない。」

このように始まる活動的な米68世代の現状がそこに伝えれていて興味深い。

更に、

「団塊世代フェミニストは、驚くべきことに徴兵制度を復活されるべきだと言いました。とても極右的な発言だったので、驚いてしまいました」、

とあるように世代間の乖離では説明出来ないほどの政治的主張の差異が示されていく。一体、これは民主党支持者の中に見られるもしくはその世代のリベラルなグループに見られるどのような現象なのかと目が離せない。

「コミュニティーの奉仕ということで、公民権運動に携わって来て、デモとかに参加してきた。あの時の若者は、誇りを持っていたんだ。社会正義のために社会を変えようとする運動は、愛国心、またはコミュニティー精神から来るものだったんだ」

そして、このように60年代の解放への動きへの評価と共に、「自分のレガシーにしがみつく」歳を重ねた者の「最近の若いのは」への「回帰」を、一般的な評価として捉えられていく。

詳しくは、原文を読んで頂くとして、偶々机の傍らにあった先週の新聞の書評欄が目に入った。それはまさにそうした解放を運動した超一流の社会学者の言葉で始まっている。

「自分自身、歳を重ねれば信心深くなる疑いがある」

折りにふれこうコメントしているのは、ユルゲン・ハーバーマスである。そうした「疑い」は、彼の解放された主観的視点を持ったポスト形而上学的思考においても解かれる訳でもなく、世界認知と啓示認知の断裂が不可逆となるものではないと記事は続く。

批評されている書物は、ハーバーマス本人が後付けをするもので、イエズス教徒や有名なラッティンガー教授との議論を扱っている。そこでは、上記した米国の現状を十分に説明するだけの討議がされているようだ。

「宗教の理性」と「世俗の理性」の対照において、ハーバーマスは、「宗教を不可知論と学習の可能性として見る行為は宗教を道具化した敵対吸収行為とする事が出来るが、同時に世俗のポストモダーンの啓蒙的弁証法や自然主義的科学信仰としての理性敗北主義」をもって、自らの主観主義の立場を正当化する。

それは、現代哲学における新たな地平線へと至る「行為の反照」によって齎される世俗的理性への言及であり、同時にプロテスタンティズムにおいての、敗北が自立した自己肯定意識を目覚めと自己意識を先行する超越的存在を語る。

しかし、「戒律を離れた宗教学的理性」と「キリスト教的に伝達されるポスト形而上学的思考」とを明確に別けて考える事で、モラルの道具化した宗教がその世俗における行為である政治的結果として、「現実的世俗理性」が表れるのを外部の立場から観察している。

そうした世俗における理性が、歴史的視点を持たないところでは自己発展の力を失い、天人とも許さぬものにより覚醒されてこそ、また欠けるものによってこそ自意識を目覚めさせるとする構造が浮かび上がる。

そこにおいて意味論によって世俗的理性の限界が例示されるのは必然であり、不可知論者マックス・フレッシュの非宗教的葬儀の有名な経緯が挙げられる。

この辺りまでおぼろげながら、繰り返しあれやこれやと想像しながら読み進むと、ここ数年米国で生じていた社会現象がある構造を持って認識されてくるかもしれない。

そうして紹介した上のBLOG「虹コンのサウダージ日記」の記事に再び眼を移すと、なるほど「オバマの肖像画です。なんか、政治家というより、宗教家ですね、こんな絵だと。」と、その印象が綴られているではないか。



参照:
ハーバーマスと宗教 (Von TK)
教皇無用論のアカデミスト [ マスメディア批評 ] / 2007-05-10
教皇の信仰病理学講座 [ 文学・思想 ] / 2006-09-18
68年への総括の道程 [ 歴史・時事 ] / 2008-02-20
近代物理教の使徒の死 [ 文化一般 ] / 2007-05-02
誤りの自覚と認識 [ マスメディア批評 ] / 2008-06-29
楽天主義が支配する時代 [ 歴史・時事 ] / 2008-02-21
ブレッツェルピーの脚質 [ 生活 ] / 2008-02-07
Change! Yes, we can! [ マスメディア批評 ] / 2008-01-27
希望へ誘うオバマ候補 [ 雑感 ] / 2008-01-15
どやしの宇宙の摂理 [ アウトドーア・環境 ] / 2008-07-19
コメント (6)
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