Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

気象温暖化の具体的な影響

2009-11-15 | アウトドーア・環境
今年は違う。なにが違うのだろう。少なくとも、今年は一月近く紅葉が続いている。異常である。それだけ夜間の温度が低かったと言うことだろうが、2010年も特別な年になりそうである。なにも2012年を待つまでもない。

各地の醸造所から例年に無く続々と送られてくる案内や、売り物の2008年産と2009年産の状況も少し趣が違う。一つは2008年産のリースリングの売れ行きが特別悪かったということではあるまいか。自身、現在までの購入本数は限られて、その殆どが保存用である。おそらく海外にも2008年産リースリングは流れるであろう。しかし心配は不要である。その倦厭された酸が素晴らしい落ち着きを見せるのが海外市場で売り出されるときだからである。そこから大胆予想をすれば、2008年ドイツ産リースリングは海外でブレークする可能性があるだろう。つまり、最初の山が丁度瓶詰め後一年ぐらいに来る可能性があるからだ。そうなればドイツワイン法改正へと大きな弾みがつきそうだ。

秋から冬に掛けて受け取った醸造所からの便りはどれもこれもそうした背景の状況を映し出していているのだが、本日受け取ったラインガウのロバート・ヴァイル醸造所のヴァイル氏のインタヴュー記事はなかなか面白かった。シャトー・ラトュールのバリックが表紙となっているドイツ語圏向けの「ファイン誌」で語っている内容は、気象温暖化の具体的な影響と今後に向けた考え方である。次世代の2050年を見据えた経営戦略や、百年前の世代へと戻るワインのカテゴリー別けへの復帰に、現在の取り組みが詳しく述べられている。耕作地高度を高い方へとテリトリーを広げることに将来への可能性を残すことと、それだけの土壌を確保している自負とともに、一時は栽培したワインを発泡酒用に売らなければいけなかった「寒冷期」の想い出も綴られている。

具体的に表現するならば嘗ては寒い晩秋・初冬まで果実の熟成を待たなければいけなかったのが、今は気温が高い秋に如何に長く葡萄を摘み取らずにおいて、紅葉に見られる如く糖の林檎酸を介した葡萄の木のエネルギー節制への、葡萄ジュースの深み至る過程こそがそこで求められる。もし糖分や酸濃度が十分だからと言って早めに葡萄が摘み取りされたならば、昨今のその後の気温の高い状況下での腐りや黴の危険を避ける事は出来るが、それでは決して偉大なワインとはならないと言うのである。例えば今年の冬は長かったのだが、暖かくなるや否や開花して仕舞い、結局例年に比べて二週間も早い開花となったのである。80年代のように長い春は無くなったと言う。そうなると、全ては二週間早くなり、嘗ては冷蔵庫に仕舞っておいたかのような外気の中で熟成する葡萄を待った様には今は放っておけないのだ。つまり数日間のうちに沢山の葡萄を一斉に摘み取らなければいけない緊迫した摘み取り作業となっている。如何に人手を手配出来るかという、既にここでもその能力の弱小な醸造所については触れた通りなのである。これ以上はワイン醸造所経営講座になるので触れない。

我々ワインを多少なりとも嗜む者にとって関心があるのは、その嗜み方であるかも知れない。誰もが思うのは、出来る限りそうした事情を先取りして美味いワインを安く入手して、出来るならば先行投資して、来る時に素晴らしい機会に素晴らしいワインを皆で愉しみたいという希望なのである。それはなにもワインという少なからず刹那的な愉しみだけでなくて芸術や文芸にも通じる感覚かも知れない。そのためには、なにが起こっているか、なにを人は考えているのか、どのように対処するのかなど、自らの環境に思いを巡らすしかないのである。


以下に醸造所からのお知らせ内容の概要:

バッサーマン・ヨルダン醸造所 ― 期待される最高級のヴィンテージ2009年産、それでも少量。九月初めから十月末までにアイスヴァインまで収穫。新鮮で果実風味豊かなブルグンダーに繊細で印象的なリースリンク。ラインヘーレとイエズイテンガルテンで糖比重205エクスレ、215エクスレのTBA。十二月初めには2009年産ピノグリとブランを提供。一足先のクリスマス挨拶。

フォン・ブール醸造所 ― 寒い冬からの一斉の芽吹き。十年振りの霜も雹の被害のない作柄で生理学的成熟。九月十五日から十月二十二日までの収穫期間に、糖比重166エクスレの葡萄を収穫。赤ワインは、構築的でアロマに富み色も濃い。缶詰ザウマーゲンとヘアゴットザッカー摘み合わせやペリゴーのフォアグラなどの祝祭日パッケージの販売。

ゲオルク・モスバッハー醸造所 ― 2009年収穫非常に早く終える。好天で乾いた晩夏の賜物で健康且つ黄金の完熟葡萄を収穫。醸造中のワインは果実風味と、繊細でバランスの取れた酸が大変期待される。ヴァインプルスサイトで六種のワインが高評価、またファルスタッフ誌にて91点から93点獲得した2008年産は、ジューシーでミネラル風味タップリ、繊細な酸構造と適度なアルコール。化学的アナリーゼなどをHPに掲載。

A・クリストマン醸造所 ― 新醸造蔵改装完成の報告と記念して詰め合わせパッケージの販促。長く続かなかった2009年の冬と春の訪れ、適温で雨にも恵まれた間髪入れずに続いた初夏。特に七月の快晴と恵みの雨を挙げ、暑過ぎない暖かい理想的な夏と晩夏を振り返る。それによる全く健康な熟成と九月に入ってからの落ち過ぎない酸をして、あとは来年の出来上がりがそれに見合うかどうかだけと、VDP会長自らが語る。(十二月一日追記)

ミュラー・カトワール醸造所 ― 試飲会への誘い。ヴァインヴェルト誌で2008年産が最高のリースリングとして表彰される。ビュルガーカルテン・リースリングのみならずマンデルリンク・ショイレーベやリズラーナー・アウスレーゼもフランツェン親方の成果として明るい将来を展望。またヴァインプルスにて、前任者シュヴァルツ氏の陰に隠れて心配をされたフランツェン親方が「少なくとも2007年産からそうしたものを払拭した」と、表彰風景写真と共に告知される。

レープホルツ醸造所 ― 今後は赤はシュペートレーゼに専念すると言明。その試飲会への招待と、ご進物アイデアの披露。2009年を待ちに待った良年として、05、97、92の方向を予想して、08年や07年と全く異なる個性とする。酸濃度も糖比重も理想的範囲にあるので03年のようなことは避けられたと、一部にはある酸の弱さを否定している。現行の08年についてその強調される酸と低いアルコールその成長振りは偉大なワインにならないとする春の予想を越えたとしている。それが、軽くて味の薄くないワインになったと、高いミネラル風味は殆ど海水のスパイシーさを思い起こさせ尚且つ長持ちするとご満悦である。嘗てゾンネンシャインと呼ばれていた1999年産ガンスホルンがベルナルト・ブロイヤー杯で最も長持ちして熟成したリースリングとして選れたと紹介。

フォン・シューベルト醸造所 ― クリスマスに向けての奥さんが商うブルゴーニュなどの赤ワインやギフト商品の紹介。現行のワインリストに、葡萄を好色する猪肉の詰め合わせの紹介。石展示販売会への誘い。

シュロース・ザールシュタイン醸造所 ― 現行リストの送付と、軽さと繊細の優しい香りと新鮮な酸の2008年産の特徴とお試しパックの紹介。2009年産は再び販売の軽めのサマーワインのために地所を貸借したこと、ピノグリを600Lはじめて収穫したこと。冬もテラスでの試飲への誘いと来年八月の試飲会のお知らせ。

ロバート・ヴァイル醸造所 ― 上の本記事の内容を更に説明して、三つの地所を紹介。そして、2008年産グレーフェンベルクのグランクリュがファルスタッフ誌とヴァインプルスにおいて、94点、100点を獲得したことなど数々のプレス評価を披露。現行リストに、趣味で造るピノノワールが冬には良いとお勧め。



参照:
2009モーゼル収穫結果 (モーゼルだより)
同じ過ちを繰り返す危険 2009-10-08 | アウトドーア・環境
婿殿、天晴れで御座います 2009-11-04 | 試飲百景
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