Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

芸術的に配慮したarte新動画

2017-08-03 | マスメディア批評
久方ぶりに夜更かしした。arteにカステルッチ演出「タンホイザー」がアップされているというのを知ったので、ダウンロードしに行った。7月9日の公演に限っても、劇場のストリーミング約13GB並びにarteの生放送直後にDLしたものの二種類の映像を保存してあり、更に音声は生で24Bit4800kHz約3GBで録音してあるので、先ずは障りを観てみる。直ぐにカットも異なりカメラアングルも未知の部分が続々出てきた。

今回の演出は乳房丸出しなので、arteは、半分は仏国営でカトリック圏のTV放送がそうであるように殆んど裸体自主規制は無いが、それでもZDFが半分であることを考えるとやはり配慮されるものと想定していた ― だから出来ることならば劇場の生放送を鑑賞したかったのだ。それでも生放送分に関しては殆んど配慮は感じられなかったのだが、こうしてアップロードするまでに時間が掛かったのは「芸術的な配慮」によるものと思われる。

実際に序曲からの「乳房祭り」部分では必要最小限にピット内の指揮ぶりと演奏風景が映されて綺麗にカメラのカットが差し入れられる。arteのディレクターは同じ人であるが、まさしく「芸術的配慮」が施されていて、このカメラ扱いならば劇場でいらいらした乳房とその間の無駄な間隙が無くなって音楽に集中できる。その一方序曲部分だけを観てもバレリーナの脇腹の黒子が分かるなどとんでもないHDになっている ― ただし音声の質は悪く、到底生放送時のそれとは比較できない。画質に比較してここまで音質を落としている理由は分からない。

兎に角、オンデマンドからダウンロードするが最初にドイツ語字幕版をクリックしてしまったので、それから映像だけのものと二回続けてダウンロードした。TV局のものなので安定はしているがとても速度は遅く、3.47GBを三時間づつほど掛かった。プロクシを使わないでも海外から落とせるのではないだろうか ― いずれにしてもダウンロードはストリーミングと異なって時間を掛けて後でゆっくりと鑑賞できる。月末まで置いてあるので時間を掛ければいずれにしても観れるだろう。このタンホイザーは、特に演出を更に詳しく観て行く。

高画質TV放送として、arteでは昨年の「サウスポール」世界初演があり、ARDで五月に再放送された「影の無い女」も永久保存版の記録であるが、今回の映像も素晴らしい。こうした非コマーシャルな映像記録制作が可能ならば、バイロイト音楽祭でカストルフ演出「指輪」の中継を認めつつ製品化を拒絶したキリル・ペトレンコの真意は明白だろう ― 要するに本当のイヴェントには公の資材が投入さる。なるほどバイエルン放送協会の予算を計上して準備していた訳であるが、恐らくユニヴァーサルとバイロイト音楽祭の契約に縛られたのだろう。

バイロイト音楽祭と言えば ― パンクラトーヴァや、ツェッペンフェルト、グールドの歌唱の評判が良いが ―、先日の「トリスタン」での遅速で始まり急加速の演奏などについて伝えられている初代音楽監督ティーレマンのことが、フィリップ・ジョルダンがヴィーンの歌劇場の音楽監督に決まったことを伝える記事で言及されていた。それによると、クリスチャン・ティーレマンは、そのヴィーンのポストを狙っていたということらしい。そして数週間前にドレスデンのシュターツカペレの音楽監督の契約延長が発表された際に、「これで、全く問題は無くなった。」とそれを暗示していたというのである。つまりその時点で再びティーレマン就任は消えていたということだろう。なるほどその才は二人とも似たり寄ったりで、そのオペラにおける実力も経験程に差はないと思われるが、マネージャーとしてはジョルダンの方が優れているのかもしれない。そしてなによりもソニーが映像を中心として売り込むにはティーレマンでは困ったのだろう。

ペトレンコ指揮の記録といえば、この間先日のバート・キッシンゲンの二曲も良かった。ラロの交響曲を再び録音してレーピンの音に気が付いた。嘗ては子供のような軽い感じだったがとても良い音を奏でていると感じた。調べてみるとガルネリのデルジェスだったようだ。一曲目も含めて更に良い音で聞き返すと、既に放送交響楽団はヤンソンスが振っていたので仕方がなかったかもしれないが、バイエルン放送協会内ではペトレンコとの関係で今でも複雑な心理があるのではなかろうかと感じさせる。

その他、2003年2月12日にバロセロナでの公演からのセクエンツがあった。ペトレンコ指揮の「ピケダーメ」はヴィーンでの小澤に代わって指揮した放送録音があるようだが、これはそれ以前の指揮者31歳の時の演奏で私が知る限り最も古い録音録画の一つである。その秋からコーミッシェオパーの指揮者になっている。質の悪い映像ではあまり変わらないようで、音楽だけ聞いていてもまた歌手の視線などを見ていても今と変わらぬ厳しい指揮をしているのは間違いない。
PIKOVAIA DAMA de Piotr I. Txaikovski (2002-03)

Escolania de Montserrat : P. I. Tchaikovsky - Pikovaya Dama


参照:
延々と続く乳房祭り 2017-07-10 | 文化一般
「笛を吹けども踊らず」 2017-07-29 | 文化一般
39.99ユーロという額 2017-07-30 | 生活
感動したメーデーの女の影 2017-05-03 | 文化一般
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする