Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

時代の耳への観想

2024-04-20 | 
承前)テクノによるリズムやその感覚が述べられて、その時代のそれへの観想がある。つまり古楽においてのその奏法の研究は重要だとして、それでも作曲家が望んでいたその響きは実際に今日の耳に正しく響くかという問いかけである。これは音楽のドラマテュルギーとしてのクライマックスやアンチクライマックスのその弧の描き方等への俯瞰的な認識とも繋がる。

その実例として最近ベルリンのフィルハーモニーで演奏された「ドイツェスレクイエム」が原典主義で演奏されたのを聴いてのエンゲルの感想は、如何に演奏実践的に立派でもその演奏はその大きな空間には全く不十分だったと語っている。調べるとバルターザー楽団の演奏会のようで。同じモルティエ―門下であるが、恐らく正当な批判なのだろう。ヘンゲルブロックはフランクフルトで最初からよく知っている指揮者であり、そのやり方はよく分かっている

エンゲル自身は言及していないのだが、そこで音楽劇場のドラマテュルギーがこれまた大きな指針となるという重要なファクターがその脳裏にあったに違いない。それゆえにハース作三部作が人類の遺産ともなるという我々の主張もなり立つ。

それに関連してマイニンゲン版のブラームスツィクルスの成功から、もし会えるとしたらブラームスに質問したいとして、ルバートの使い方とヴィヴラートの掛け方をヨアヒムのそれを以って教えて貰いたいと話す。ブラームスの演奏実践に方々から関心がもたれているのはなにも偶然ではない。同時に教養もあって分かっているヨアヒムとはブラームスの協奏曲で共演したいと、ブラームスの録音を研究した結果からも語る。

ブラームス交響曲四番は上海でペトレンコ指揮で再び演奏されるが、5月にはエンゲル指揮でクラングフォールムヴィーンが新しい音楽を北京の音楽院で披露するようだ。それもこれも歴史の中での考察と実践であることに変わりない。

また知られざる作品として、2014年にフランクフルトで大成功したご当地作曲家テレマン作「オルフェリウス」の通奏低音の現代的な書き換えを自身で行ったそのテクノ的推進力、また「マスケラーデ」が好評ブルーレイ化されたニールセンの交響曲、ヴェバーでも「オベロン」など、またアルノ・リュッカー著250人の女性作曲家から新たな出合いなどを語る。

今回のインタヴューで何故エンゲル指揮の音楽劇場はバカ受けしてや演奏会も広い層へと一様に訴えかけるかの秘密が明かされたような気がする。幸いにも指揮者はホームワークで勉強する時間が持てて、素晴らしい家族と一緒にいる時間があり、東海へとヨットで水路を抜けて出れるベルリンでの生活を語り、スイスではないので冬のスキーだけが出来ないとそのライフスタイルを明かす。

年齢からしてここ十年程の活躍が今後の全てであるだろうから、やれることを全てやっておいて欲しい。ペルゴレージの名も出てきているのでまた何かやってくれそうで、クラシックなコンサートも面白そうなものが期待できる。(終わり)



参照:
痛みを分かち合う芸術 2022-05-27 | 音
歴史的に優位な音楽語法 2022-07-07 | 音
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