習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

酔族館『サイタ、サイタ、サクラガサイタ』

2008-05-18 20:31:34 | 演劇
 とてもストレートな芝居だ。渾身の力作でもある。重いテーマを真正面から正攻法でぶつけてくる。主人公をどこまで追い詰めていくのか。死の床にやって来る過去の亡霊たち。戦後40年が経っても意識から消え去ることなく、ずっと心のかたすみで、こだわり続けてきた悔恨。73歳の老人が初めて妻に胸の内を語る。死ぬべきだったのに、今まで生き続けてきたのはなぜか。死に切れなかった生き残りが見たその後の日本の姿。視野とし . . . 本文を読む
コメント

谷村志穂『みにくいあひる』

2008-05-18 20:12:40 | その他
 これはかなり落ち込む。6つの女たちのお話。これも(『主題歌』同様)ストーリーではなく、彼女たちの今の気分が綴られている。「ひとりの女がたどってきた、この愚かな道のり」というコピーがついている。ただ、彼女たちなりに一生懸命に生きてきたのだと思う。必ずしも安直に生きたわけではない。しかし、気付くとどうしようもない行き止まりにいる。  失った恋。母への愛憎。いつまでも続く男との馴れ合いの関係。つまら . . . 本文を読む
コメント

柴崎友香『主題歌』

2008-05-18 19:02:26 | その他
 女の子についてのお喋りが、ただ綴られていく。かわいい女の子を見ていると幸せな気分になり、そんな女の子たちのことを話し合っているだけで楽しいという(オヤジではなく)同じようにまだ若い女性たちの話である。  レズではない。ただ、かわいい女の子が好きだ、というだけのこと。不思議な話というほどの事でもない。そんなことを雑談している、ただのおしゃべりがだらだらと続いていく。そんな女たちの、今の気分が描か . . . 本文を読む
コメント

ロンダート・ナビ次回分の言い訳

2008-05-18 18:36:14 | 演劇
 関西の小劇場演劇が疲弊している。特に若手劇団が伸びてこない。中堅も力尽きている。そんな現状の中で今一度初心に戻って、演劇の裾野にいるこれから芝居をやろうとする集団に注目してみたいと思った。  今回ロンダート・ナビで演劇ユニット「爆風」を取り上げたのはそれが理由だ。この1ヶ月で、この芝居が一番面白かったわけでは当然ない。ただ、この作品は、彼らが本格的に芝居に取り組んだ最初の作品だったということに . . . 本文を読む
コメント

ヴァンカラバッカ『部屋と二人』

2008-05-18 09:52:27 | 演劇
E・ イヨネスコの『二人で狂う』を原作として再構成した作品。昔、遊劇体が扇町公園の野外特設劇場でこの芝居をやったことがある。開かれた野外で閉じた空間を表現した斬新な芝居だった。もちろん、今回のこちらは、ウイング・フィールドの閉じた空間での芝居だ。  閉ざされた部屋の中で息を潜めて生きている2人の男女の姿を追い詰めていく。スタイリッシュな空間構築。シンプルなのにきちんと作りこまれた世界。部屋とその . . . 本文を読む
コメント

瀬尾まいこ『戸村飯店青春100連発』

2008-05-18 09:27:12 | その他
 よくもまぁ、こんなインチキ臭いタイトルが平気でつけたものだ。正直言って読む気をなくさせるような安っぽさである。しかし、それを瀬尾まいこがしたと聞かされると事情は変わる。反対に期待度倍増である。彼女がわざとこういうタイトルを付けるのなら、きっとそこにはなんらかのたくらみがある。それを思うとワクワクする。必ず何らかの勝算と打算があるはずなのだ。何が用意されているか、ドキドキしながら読む。  第1章 . . . 本文を読む
コメント

円城塔『オブ・ザ・ベースボール』

2008-05-18 08:50:28 | その他
 島田雅彦がいかにも好きそうな小説。こういう薀蓄をたれたような作品ってあまり好きではない。表題作のほうは短い章立てをしていて、どんどん先に話が進んでいくから読みやすかったが、もうひとつの『つぎの著書に続く』は後半もうどうでもよくなってしまった。自分の書いた書物が批評家から幻の作家リチャード・ジェイムスの作品と酷似していると指摘された主人公が、今まで名前すら知らず、その著書を読んだこともなかったその . . . 本文を読む
コメント