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映画・演劇のレビュー

『ミッドナイト・イン・パリ』

2012-06-26 23:22:22 | 映画
 このウディ・アレンの最新作は、とてもわかりやすくて、楽しい映画だ。まるで登場人物である彼らと一緒に、今、パリの街角を旅する気分にさせられる。名所観光案内のような映画で、ふつうならそういうのってつまらない、と思うはずなのだが、ウディ・アレンの手にかかればそれさえ楽しい。先日見た『ホタルノヒカリ』とはまるで違う。この2本を並べて語るのは映画の質が違うのだから、もちろん較べる方がおかしいのだろうが、それでも同じ時期に見た観光映画だから、ついつい比較してしまう。仕事で、今日、久々に『ローマの休日』を見たのだが、これも楽しい観光映画だった。うちのクラスの文化祭の出し物に決定したから、参考上映で、みんなで見た。こんな古い昔のモノクロ映画なのに、みんな最後まで、のめりこんで見てくれたのが嬉しい。

 さて、本題は『ミッドナイト・イン・パリ』である。昼間の観光も楽しいが、夜の街を散歩していると、なんだかウキウキしてくる。いろんな所を歩いて、店に入り、食事を楽しむ。そして、主人公は夢の世界にいざなわれることになる。そこには、もう死んでしまったはずの歴史上の人物が、リアルタイムで存在する。そして彼らとともに、同じ夜の時間を過ごすことになる。

 これを別段、すごい映画だ、とか言うつもりは僕にはない。ウディ・アレンはただただ楽しそうにこの映画を作っている。小難しいことなんかここには一切ない。ただ、無邪気に1920年代の夢のパリで、主人公は、時代を代表する小説家やら、画家、という文化人たちと出会い、友だちのように接して、会話する。そんな夢の時間を、毎夜満喫することになる。思い返すと、これは、映画の中に入る映画『カイロの紫のバラ』と同じパターンだ。

 外国での夜の時間、見たことのないような場所、人々の中で、まるで、現実ではないような気分になり、フラフラする。そんな気分を更にグレード・アップさせただけである。フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、ダリにマン・レイ、ルイス・ブニュエル。錚々たる面々とすれ違い、言葉を交わす。夢だけど、夢じゃない。そんな至福の時間を無邪気に見せてくれる。ただそれだけの映画だ。でも、それで十分なのだ。

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