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映画・演劇のレビュー

劇団往来『あした天使になぁれ』

2012-06-26 23:06:03 | 演劇
 2時間40分の大作である。でも、この時期の往来の円形劇場公演はいつも3時間近い大作ばかりなので、驚かない。それよりも、今回、題材があまりに、日常的なもので、このスケッチを大作仕立てにするのは、ちょっとしんどかったようだ。映画と連携した企画で、この小さな話をミュージカル仕立てにする。でも、歌って踊るのではなく、いきなりマイク持って歌い出すのだ。上演時間が長くなったのは、その歌謡ショー・スタイルが原因だ。劇中劇としての劇団による公演シーンもないし、芝居自体はまるで、ミュージカルしていない。

 これはミュージカル劇団の話で、そこに集う様々な人たちの群像劇でしかない。もちろん、別にミュージカルが見たいのではない。だが、あんな歌謡ショーは見たくない。どんな題材を得ても、それをちゃんと自分たちのものとしてアレンジ出来るのが、この劇団の強みだと、思ったが、器用は、必ずしも、作品の力にはならない。今回のように小手先で作ることも出来る素材はあまり劇団にとってもよくないのではないか。ブレヒトをやった時のような覚悟がここにはない。安易に題材と向き合い、簡単に仕立てる。台本がありきたりで、つまらない。でも、そこそこのレベルにはなる。別にそれで満足しているわけではないだろうが、こういうルーティーン・ワークは、自分たちにとっても、意味をなさないのではないか。

 作品解説にはこうある。ちょっと長いけど、そのまま引用する。

 ミュージカル劇団「アップル・パンチ」の劇団員たちはみんな仕事を持ちながら活動している。「日常こそがドラマだ」をモットーに等身大の自分たちの物語を作り、上演し続けている。新人女優であり新人看護婦でもある「照屋真央」は忙しいながらも充実した日々を送っていた。そんな中、次回公演の題材に「看護師」が選ばれる。タイトルは「あした天使になあれ」等身大の自分をどう演じるのだろうか。

 ここにあるようなことが、ちゃんと描けていたなら、もう少し面白いものに出来たのではないか。「日常こそがドラマだ」と言いながらまるで、ここにはリアリティのある日常は描かれていない。「等身大」でもない。看護師の日常がまるでリアルとは程遠いものとして、描かれる。描くべきものは、まず、そこから、であろう。

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