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映画・演劇のレビュー

宮崎誉子『水田マリのわだかまり』

2018-04-14 21:45:11 | その他

 

3日で高校を辞めて工場で働くことになった少女。中学時代や、高校時代(3日だけど)以上の理不尽なイジメの巣で働きながら過ごす日々。そんな中、中学時代イジメで友人を自殺に追い込んだ女と再会し、(職場の同僚がその女のお母さんで、)お誕生日会になんと自殺した女の子の姉(保険の外交をしていて彼女の工場に出入りしている)とともに呼ばれることになる。そこで彼女が祖母の介護をしているという事実を目撃。もう何が何だかの怒濤のクライマックスに突入する。

 

何が正しいとか、間違いだとか、そんなこと、もうどうでもいい。バカバカしいイジメを目にして、それを冷静に見つめることで見えてくるモノに肉迫する。中学の頃の出来事、その落とし前をつけるはずが、何が何だかわからない混沌にたたき込まれる。答えなんかここにはない。

 

そしてもう1作の『笑う門には老い来たる』。これは正面から介護に挑む短編。笑い飛ばすしかない悲惨な毎日をなんとか乗り切るには何も考えずに、認知症と向き合うことしかないのかもしれない。懸賞マニアの娘が当てものに生きがいを見いだすという倒錯した逃避(学校のイジメから)をするのを静かに受け止める母。両親の介護だけでも手一杯なのに、さらにはバカ夫の世話もあるし、それでも笑って生きている。

 

2作とも作者本人の実話をベースにした作品らしい。やけにリアルなのもそのせいか。イジメと介護というふたつの問題をセットにして描く中編短編の2作品を読み終えて、なんだか清々しい気分になっているのはなぜだ?              とても不思議な気分。


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