なんと5年ぶりの大阪公演となる。(3年前には名古屋公演のライブ・ビューイングがここウイングフィールドであったけど、あれからでも久々)今回のジャブジャブの新作はなんと川上音二郎と貞奴の評伝劇。しかも劇中劇としてシェイクスピアの『オセロ』を翻案して川上が作った『正劇オセロ』をダイジェスト版として上演する。だから一粒で2度美味しい。それを全体の上演時間は1時間10分を切るというランタイムで見せ切る大河ドラマ。
こんな無謀な芝居がありなのか? ありです。はせひろいちは平気でそんな芝居をさらりと作り上げた。前説で本人は「1時間の芝居になったから、少し足して70分まで伸ばしました」なんて言ってる。
劇中の『オセロ』はダイジェスト版だけど、全体の芝居は、これだけの話なのにダイジェストにはならない。しかも慌ただしいアップテンポでもなくのんびり飄々としている。芝居は明治35年から始まった。川上は妻の貞奴に懇願する。是非また芝居に出て欲しい、と。
36年上演されたストレートプレイ(だから正劇)の『オセロ』。はせさんは「『オセロ』ってつまんないんだよね、」なんて平気で言う。だけど敢えてその作品を川上音二郎は取り上げて公演を打った。何故か、とは問わない。淡々と事実を追いかけただけ。
主人公のふたりを演じた栗木己義と咲田とばこが素晴らしい。とばこさんなんてほとんど座っているだけなのに! ストーリーテラーを担う荘加真美が作品全体をリードする。
東京から瀬戸内海まで日本を小舟で旅するサバイバルから、なんと太平洋を渡りアメリカ横断、さらにはその先ロンドン、パリまで。芝居をするための旅に出る彼らのドラマを描く。そして後半にはちゃんと『オセロ』も見せて70分。呆れるくらいに凄いとしか言いようがない。