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映画・演劇のレビュー

大阪新撰組『夜毎の鳩』

2024-10-13 17:08:00 | 演劇

今回の大阪新撰組は深津篤史の戯曲に挑戦する。深津戯曲は手強い。表面的なストーリーを追っても意味はない。淡々とした会話劇だが、謎だらけ。掴みどころがない。演出は栖参蔵。敢えてメリハリをつけずフラットな芝居を作る。「演出補佐として野口知沙さんが入ってくれたから、よかった」と栖さんが言う。女性の視点から見るという発見が芝居に奥行きを与えた。1時間程の中編作品だけど豊かな膨らみを持つ佳作に仕上がっている。

もう31歳になるけどマクドナルドでアルバイトする風采の上がらない男。同じアルバイト仲間の年上の女性のアパートで同居させてもらっている。同棲ではなく居候。彼女のアパートではふたりの女とひとりの男、その3人も暮らしている。この4人は家族だけど、苗字が違うし年齢もバラバラ。どういう関係なのか,わからない。しかも自分たちは宇宙人だと言う。男は6本指の手を見せる。

基本はこのふたりの恋話。ふたりの関係は対等に描かれる。これを男の側から描くと芝居はわかりやすくなるけど、そうはしない。見ながら最初はこれが何を描こうとするのかも見えてこない。なんでもない会話が続く。不安になる。この不安を男の側から描くとわかりやすい芝居になるがそうはしないのがこの作品の魅力だ。掴みどころのないお話だが、ラストまで来たらわかりやすいオチはある。だけど描きたいことはそこにはない。

微妙な立ち位置から何も起きない不思議な出来事が描かれる。しかもそれが新撰組らしい軽やかさで描かれる。謎の擬似家族を新撰組の古参である3人がガッチリスクラムを組んで演じる。そこには不思議な連帯感が生まれる。ルーデルマン大地演じる男はこの家族の輪に入りながらも違和感を拭えない。リードオフマンを担う古川智子の異様な可愛さは不気味だ。まるで少女のような中年女性(40歳の誕生日を迎える)を演じ切った。


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