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映画・演劇のレビュー

清水晴木『さよならの向こう側'90s』

2025-01-22 04:11:00 | その他
シリーズの4作目となる。今回の舞台は90年代。懐かしい歌がタイトルになっている短編連作。5作品。前作がシリーズ完結編だったが、これは新シリーズの第1作。このパターンならいくらでも作れるだろう。清水さんの前作『天国映画館』も全く同じパターンだった。彼はこの手のお話が大好きなのであろう。この本の初版発行日は2024年11月28日。僕の65歳の誕生日の翌日である。まぁだからどうした?ってことだが、この手のお話にピッタリの運命的なつながりをそこに感じたりして(笑)

選ばれた歌はあまりにポピュラーすぎて、安っぽい印象を与える。だからいい。これはみんなが喜ぶようなベタな大衆小説なのだ。定番の展開に涙を流せ。

2話から3話は話が続いている。2話の主人公が会いに行った引きこもりの男は、3話の主人公の女性に会いに行く。彼女は亡くなった祖父密かに好きだった人だ。死者がつなぐ想いがひとりの男をよみがえらせる。そんなさりげないお話は素敵だ。

舞台となる90年代アイテムがすでに懐かしい。携帯電話が登場するがまだ公衆電話が町中にあった時代。個人経営の喫茶店もまだまだある。最初の喫茶店って3話の店だった、と気づく。案内人さんの秘密も含めて5つのお話はひとつにつながり完結する長編スタイルになっていることにも気づくことになる。見事につないだというよりもかなりあざといけど、まぁこれはこれでいいと考える。めでたしめでたしの幕切れである。



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