とても残念な出来だ。あやういところで、全体のバランスを崩してしまっている。お話は2人の少女たちの友情物語として完結しているのに、映画はそこに止まらず、世界を広げてしまう。それ自体は悪い事はない。だが、その結果まとまりの悪い作品になってしまうのが惜しいのだ。
10歳から、15歳までの5年間、2人の友情。由香(北浦愛)の死から、5年後、初めて小さな写真展を開くことになる20歳の恵美(石橋杏奈)。由香が好きだったモコモコ雲を撮った写真展。映画のラスト、空からちいさな点のように見える恵美を見守る由香の視点で捉えた俯瞰ショットが心地よい。遠くの空を見る恵美と、それを空から見守る由香。2人をつなぐものが、しっかり伝わってくる素晴らしいラストシーンだ。
ずっと彼女の死に囚われ続けてきた。自分のための写真をみんなのために提示すること。そんなこと、できなかった。だが、取材でやってきた青年との出会いで彼女は閉ざしていた心を開く。
映画自体の構成は悪くない。だから、思いっきり感動してもよかったのだ。なのに、そうはいかない。ここでは、その理由を説明していく。
恵美と由香の2人の話から、クラスメートのハナ(吉高由里子)を含めた3人の話に広げていくところまではよかった。ここまでは問題ない。だが、後半、恵美の弟、ブンのクラスメート、三好クンのエピソードにスライドしていき、ブンと彼の今の親友も含めた3人の話になり、さらにそこからブンの先輩佐藤へと、どんどん話が広がっていく。そこまで見ているうちに、これって短編連作スタイルなのか、と思わせる。だが、結局は恵美のところにに帰ってくるのだ。その時には、全体が不自然な広がりを見せ、収拾がつかなくなっている。
もちろん、それぞれのエピソードはとても胸に痛い。しかし、映画の視点が、恵美のところにあるため、とても収まりが悪くなってしまうのだ。重松清の原作は、大人である作者の視点から読者に語りかけるように子供たちの姿を描いていくというスタイルだったと記憶している。(何分ずっと前に読んだので、記憶は曖昧だ)特定の主人公も設定していなかったと、思うし、現代の地点から10年前の出会いからの5年間を振り返る、なんていうスタイルにもなっていなかったはずだ。
現在の恵美を描くエピソードがどうにも浮ついていて、リアリティーがない。障害を持った子供たちの施設でボランティァとして働く彼女のところに雑誌の取材でやって来たカメラマンの青年を通して、彼女が自分の写真に目覚めていく、というエピソードも、なんだかとても嘘くさい。
彼女が何を求めてここで働くのか。この青年との出会いで何が変わったのか、それが描けてない。由香の死から5年、どんな風に生きてきたのかも、もっとしっかり描かなくてはならなかったのではないか。高校時代をすっぽり抜かしてしまったことで、彼女の心の空白が、絵空事としてしか伝わらない。
弟の友だちの三好クンに向けた視点が、彼女の目から離れて独立したエピソードにしかならないのも辛い。あの頃の自分たちと同じ14歳の今を生きる彼のドラマが、この映画の中で浮いたエピソードになってしまっては、この映画自体が成立しないではないか。
とても惜しい映画だ。廣木隆一監督はこういう青春映画を撮らせたなら他の追随を許さない。『4TEEN』や『800』のような傑作をたくさん作っている。それだけに今回の仕上がりが残念でならない。
10歳から、15歳までの5年間、2人の友情。由香(北浦愛)の死から、5年後、初めて小さな写真展を開くことになる20歳の恵美(石橋杏奈)。由香が好きだったモコモコ雲を撮った写真展。映画のラスト、空からちいさな点のように見える恵美を見守る由香の視点で捉えた俯瞰ショットが心地よい。遠くの空を見る恵美と、それを空から見守る由香。2人をつなぐものが、しっかり伝わってくる素晴らしいラストシーンだ。
ずっと彼女の死に囚われ続けてきた。自分のための写真をみんなのために提示すること。そんなこと、できなかった。だが、取材でやってきた青年との出会いで彼女は閉ざしていた心を開く。
映画自体の構成は悪くない。だから、思いっきり感動してもよかったのだ。なのに、そうはいかない。ここでは、その理由を説明していく。
恵美と由香の2人の話から、クラスメートのハナ(吉高由里子)を含めた3人の話に広げていくところまではよかった。ここまでは問題ない。だが、後半、恵美の弟、ブンのクラスメート、三好クンのエピソードにスライドしていき、ブンと彼の今の親友も含めた3人の話になり、さらにそこからブンの先輩佐藤へと、どんどん話が広がっていく。そこまで見ているうちに、これって短編連作スタイルなのか、と思わせる。だが、結局は恵美のところにに帰ってくるのだ。その時には、全体が不自然な広がりを見せ、収拾がつかなくなっている。
もちろん、それぞれのエピソードはとても胸に痛い。しかし、映画の視点が、恵美のところにあるため、とても収まりが悪くなってしまうのだ。重松清の原作は、大人である作者の視点から読者に語りかけるように子供たちの姿を描いていくというスタイルだったと記憶している。(何分ずっと前に読んだので、記憶は曖昧だ)特定の主人公も設定していなかったと、思うし、現代の地点から10年前の出会いからの5年間を振り返る、なんていうスタイルにもなっていなかったはずだ。
現在の恵美を描くエピソードがどうにも浮ついていて、リアリティーがない。障害を持った子供たちの施設でボランティァとして働く彼女のところに雑誌の取材でやって来たカメラマンの青年を通して、彼女が自分の写真に目覚めていく、というエピソードも、なんだかとても嘘くさい。
彼女が何を求めてここで働くのか。この青年との出会いで何が変わったのか、それが描けてない。由香の死から5年、どんな風に生きてきたのかも、もっとしっかり描かなくてはならなかったのではないか。高校時代をすっぽり抜かしてしまったことで、彼女の心の空白が、絵空事としてしか伝わらない。
弟の友だちの三好クンに向けた視点が、彼女の目から離れて独立したエピソードにしかならないのも辛い。あの頃の自分たちと同じ14歳の今を生きる彼のドラマが、この映画の中で浮いたエピソードになってしまっては、この映画自体が成立しないではないか。
とても惜しい映画だ。廣木隆一監督はこういう青春映画を撮らせたなら他の追随を許さない。『4TEEN』や『800』のような傑作をたくさん作っている。それだけに今回の仕上がりが残念でならない。