劇団大阪らしい作品で、まじめで正直。とても気持ちのいい作品に仕上がっていた。だけど、それはあまりに直球すぎて、見ていて少ししんどいところもある。痛し痒しだ。見る前僕はこれはもっとコミカルな作品なのかと勝手に想像していた。笑っているうちにやがて背筋がゾッとしてくる、という感じ、を。でも、そうではなかった。この芝居は観客である我々の胸のド真ん中に差し込んでくる。ドストライクなのである。
主人公の上田啓輔が舞台中央で真正面向いて心情を吐露するシーンには少し、気後れする。眩しすぎるのだ。正しいことを正しいと言い切ることは立派だし、世の中の不正に断固としてNOというのは大事だ。だけど、そうはいかないことだらけ。この作品が描くのもそこなのだ。
ある報道番組のスタッフが局側の理不尽に右往左往して、でも、なんとかして自分たちの主張を通そうとする姿が描かれる。本番直前に上層部からの圧力がかかり、放送内容の変更を余儀なくされる。それに抵抗してなんとかして自分たちの伝えたいことを守ろうとする。105分の作品は常に緊張を強いる。なのに、芝居自体はいささか単調なので、不覚にも途中何度かウトウトしてしまった。(ごめんなさい!)作り手の真面目さについていけてない自分が恥ずかしい。演出の熊本一を初めとするスタッフ、キャストの渾身の1作である。コロナ禍で、困難な状況の中、今、自分たちが演劇で訴えかけたいことを突き詰める作品としてこれを取り上げた。作り手側の熱い想いは確かに伝わってくる。
ラストの2年後を描くエピローグ、そのエピソードも胸に痛い。それでも守ろうとした彼らの想いがそこには込められてある。静かな力作である。