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映画・演劇のレビュー

私見感『並行戯曲』

2013-10-31 22:25:52 | 演劇
 前作『進化戯曲』に続いて、今回も基本的には同じスタイルだ。円盤型のスタイリッシュで、おしゃれなチラシ同様、本編もスタイリッシュでおしゃれな舞台だ。とても素晴らしい。今回は2人1組になり、4組8名の役者たちがアトランダムにセットになって、いくつかもパターンの対話劇を繰り返す。スポットの当たった2人以外の6名も同じようにそのシチュエーションを行う。舞台では並行して4つの芝居が同時進行していることになる。

 いくつかの心に残る風景が、何度となく繰り返されていく。それらが微妙にずれを見せながら描かれていく。ベースとなるイメージは『銀河鉄道の夜』だ。ジョバンニとカンパネルラの旅。よくあるパターンなのだが、このベースとなる基本イメージは悪くはない。そこに男女の恋物語や、男同士の友情をからませて全体が形作られていく。男ばかり8人の役者が、女の子も演じることになるのだがそれも上手く機能している。そこでは男女の恋の風景も、きちんと描きこまれる。役者たちはある種の記号として、機能するから、男たちが女を演じてもあまり気にならないのだ。

 生と死について、考える。男ばかりが、4人が車に乗っている。女はこない。試験後、どうだった? と聞く。勉強を教えてもらってたり。そんなこんなのなにげない風景が、彼らにとってとても大事なものとして心に残っている。ささやかな時間の記憶。繰り返し、繰り返し再生していくうちに、そこに生じる齟齬が、記憶を美化したり、劣化させたりすることになる。

 とても美しい芝居だ。つなぎの場面では維新派のような言葉遊びで見せる。繰り返されるひとつひとつの小さなドラマはとても切ない。ただ、この2人は平行線をたどる。どこかにたどりつかないまま、ずっとループ状の状態を維持するばかりで。そこもまたいい。

 だが、そんなよく出来た芝居なのに、そのうち、少しずつ退屈してくる。たった70分ほどの作品なのだ。勢いで一気にラストまで突っ走ってくれたならいいのだが、そうはいかない。しかも、もうひとひねりが欲しいのに、それがない。

 このいくつもの物語の切れ端がある方向性を持ち、その結果どうなっていくのか。気になる。そこに何らかの思いがけない化学変化があればいいのだが、それすらないまま、終わって行く。それってなんかもったいないではないか。残念だが、これでは意味をなさない。



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1 コメント

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ご来場ありがとうございました。 (緑川岳良)
2013-11-07 13:09:40
こんにちは。
私見感主宰の緑川と申します。
ご観劇いただき、感想まで書いてくださりありがとうございます。
今出来る精一杯は出しているのですが、おっしゃる通りもうひとひねり、後一歩踏み込みが欲しい(いえ、もっと必要なのでしょうけれども)と自分でも思いながら、力の及ばなさを感じています。
まだまだ脚本・演出の勉強をしてより良いものをつくれるよう精進して参ります。
ご来場本当にありがとうございました。
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