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映画・演劇のレビュー

ザ・ブロードキャストショウ『Sagittarius』

2013-10-31 22:00:46 | 演劇
『Paradise Lost』シリーズの3作目、ということらしい。エピソード1から始まり、時間はどんどん遡行していく。これはこの物語のすべての始まりを描く前奏曲ということらしい。ちょっとした大河ドラマだ。スケールの大きなサーガなのだが、単独でこの作品を見た場合、少し物足りない。このスケールの大きな話を立ち上げるだけのダイナミズムが感じられないからだ。

 人間とドール(アンドロイド)とが共存する世界を舞台にした連作のプロローグ。前作の300年前、1作目のなんと600年前が舞台だ。だが、それがドールの誕生秘話にまで遡るのではなく、両者の蜜月の終わりから、この後に続く壮大なドラマへの橋渡しとしてのお話。

 長く続いた戦争の終わり。新しい国家の立ち上げ。対立する両陣営。革新と保守の対立というありきたりな図式。若き政治家ルークの理想は実現するのか。彼のかつての恋人で、ドールと人間の進化形であるSagittariusを研究するメフィスト。人間はどこまで進化するのか。この2人のそれぞれの話が並行して描かれる。そして、その先、この国の未来はどこにあるのか。世界はどうなっていくのか。壮大なお話のはずなのだ。これだけでも充分に。だが、それだけではない。ドクと呼ばれるドールや、ルークを操る男。それらが複雑に絡み合う。

 確かにとてもスケールの大きな大河ドラマなのだが、それらのエピソードがあまりに細切れ過ぎて、そこに大きな流れを作りきれていないのが気になる。バラバラに進行する話が一つになることで「何か」が見えてくるはずなのだが、表層的なストーリーはあるけど、その背後にある政治的なドラマが弱すぎて、緊張感は生まれない。話があまりにパターンすぎる。ヒトラーのような独裁者による恐怖政治とそれを阻止する戦いとか。そういうことじゃなくて、ドールと人間の共存する未来にどんな可能性があるのか、そちらのほうが気になるのだ。だが、その一番大切なことを描き切れない。

 来年にはシリーズ完結編が公開される。そこですべてを1本に繋いで、このサーガをどう収めるのか。挽回はきっと可能だ。

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