今、川端康成のこの小説を映画化するという意味がまるでわからない。そこが謎だから、その理由が知りたくて見てみた。DVDにはメイキングが付いていて、30分に及ぶ丁寧なもので、そこには監督の想いがちゃんと言葉で綴られていて、彼の意図は明確になる。しかし、企画意図と仕上がった映画とは別物だ。まぁ、そんなこと、わかりきった話なのだが。
とても綺麗な映画だ。ためいきがでるほどに美しい京都の風景が見られる。そんな夢のような場所で、ふたりの女が生きる姿が描かれていく。原作の双子の姉妹のドラマの20年後が描かれる。だから、これは厳密に言うと『古都』の映画化ではなく、オリジナルによるその続編なのである。祇園祭の日に出会った2人が、その後別々の人生を生きてもう出会わない。そんなふたりのその後が、並行して描かれていく。やがて、京都だけではなく、パリを舞台にして、お話は展開していく。失われていくものへの郷愁。消えていく場所と人々の営み。それを見つめていく。
松雪泰子が双子の姉妹を演じる。その娘を橋本愛と成海璃子がそれぞれ演じる。母から娘へと引き継がれていくもの。古い都で秘やかに生きる人たちの佇まいを丁寧に綴る。それだけで、何かが伝わるのならいいのだけど、残念ながら伝わらない。この映画が何を描こうとしたのか、見えてこない。