『ペンタゴン・ペーパーズ』に続いて2ヶ月連続でスピルバーグの新作が見られるという幸福。しかも、シリアスな前作とは打って変わって今回はSFで、ジュブナイル。スピルバーグの持ち味を充分に生かし切った設定にお膳立て。だから、これに期待しないわけがない。ワクワクしながら見た。
ゲームの世界に入り込むという意味では先日公開の『ジュマンジ ウエルカム・トゥ・ジャングル』に近い面もあるけど、まるで映画としてのスケールが違う。こちらの壮大なドラマの前ではあんなのは子供騙しにすらならない。まぁ、別次元の映画なので比較するのが間違いか。でも、これは決して難しいお話ではない。それどころか、単純。なのに、壮大。冒頭のシーンが素晴らしい。何が起こるのか、楽しみだった。しかし、そこからの本題に入るとなんだか、わくわくが萎んでくる。
CGアニメでしかないゲーム内のシーンはあまり面白くはない。現実の風景の凄さの前ではCG映像はただのペラペラ。ドラマとしての奥行きはないから、少し退屈もする。映像も平板になる。だからそこには驚きはない。仮想空間が現実よりも現実で彼らはそこから出られない。少年たちの冒険譚、と言う意味では『グーニーズ』なんかに近い話なのだが、
ゲーム世界という閉塞空間をベースにするから、ここにはどんなに壮大なスケールの圧倒的なビジュアルが展開しようともロマンはない。見たことのない世界が広がるところにスピルバーグの面白さがあったのだが、この作品にはそれがない。確かに、これはこれで驚きの連続、ジェットコースターにでも乗っている気分。だけど、それだけ。
ただ、こんな映画が見たかった訳ではない。見ながら、面白いことは面白いけど、こんなのが見たかったわけではないのにという不満がどんどん膨らむ。実は微妙な気分なのだ。手放しで絶賛する気満々で見ていたのに、途中から乗り切れなくなり、映画との齟齬は深まるばかり。素直に楽しめなくなり、最後には少しガッカリした。