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映画・演劇のレビュー

『7500』

2015-07-30 19:25:37 | 映画

先日『呪怨 ザ・ファイナル』を見た時、こういう昔ながらの怪談を夏休みに上映するって、貴重な出来事だ、なんてことを書いてみたけど、またぞろ怪談映画が登場した。希少価値が損なわれた気がしてちょっとがっかりだ。『呪怨 ザ・ファイナル』は改めて考えると新種の怪談ではなく、あれこそが昔ながらのお化け映画のパターンを踏襲したものだった。わけのわからないものに祟られて翻弄される美男美女のお話である。

さて、今回のアメリカ映画は、実は本家『呪怨』の清水崇監督最新作なのだ。これが話題にもならずひそかに公開されたのである。ほんとうに、まるで宣伝もなく、ひっそりと劇場のかたすみに登場した。

B級ホラー映画で、わざわざ劇場公開するまでもないような作品である。これはただ清水作品だから、という理由だけで公開されたものなのだろう。一部のマニアはそれだけで見に行く。

そして、僕も見に行く。まるで期待なんかしていないけど、でも、あの清水崇が、ただのつまらないルーティンワークなんかするわけもない、と、書いたがそれって、なんだ、結局は期待しているじゃないか、である。79分という商業ベースに乗る劇場用映画にはあるまじき上映時間はこれが往年のアメリカのTV映画(あるいは、ドライブインシアター用の低予算映画)であることの証明か、とも思うけど、(というか、今時TV映画なんてジャンルもなかろうが)まぁ、出自なんかどうでもいい。これがどれだけ、衝撃的な作品か、否か。それだけが問題なのだ。低予算を逆手にとってアイデア勝負の傑作という図式はホラー映画の得意技だ。完全アメリカ映画のようなパッケージングだったけど、最後のクレジットを見て拍子抜けがした。また一瀬隆重! 彼が製作に噛んでいる。

ロサンゼルス発、羽田行き。7500便。いつものフライトのはずだった。しかし、異常な事態が続出する。この飛行機は呪われている。そんな感じの映画なのだが、なかなか話は進まないし、怖くならない。短い上映時間はジェットコースターのような映画だから、というのならわかる。でも、そうじゃない。乗客たちのエピソードを網羅しての群像劇スタイル。このテンポで79分はまずい。

嫌な予感は的中した。まるで、話は展開しない。もたもたしたまま、最後まで。オチもあまり怖くない。スピルバーグの製作した映画版『トワイライトゾーン』の空飛ぶ飛行機(当り前かぁ)のこれと同じように機内限定を舞台にしたワン(映画は4話からなる短編集)エピソード(ジョン・リズゴー主演の作品だった)の方が、ずっと怖い。

この手の作品には理屈なんかどうでもいいのだ。どちらかというとこういうお話は不条理の方が面白いくらいだ。こんな短い映画は一気呵成でねじ伏せるように見せるのがいい。なのに、これはまるでスリリングじゃないし、驚かせない映画なのだ。これがキング・オブ・ホラー清水崇なのか? がっかりした。


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