久々に軽くて楽しい小説を読んでいる。これは5話からなる連作だが、最初のタイトルにもなった『かもめジムの恋愛』がすべてを象徴する。これは75歳の西原さんの初恋を描いた短編である。かもめジムに通う西原さんは受付アルバイトの私(柏夢)に恋愛相談をする。58歳差のふたりはお互いの恋愛相談を通して友情を育む。このなんともいえない設定がいい。年齢差なんて関係ない。男女問わず。当たり前だけど特別。彼女にはそんな友人ができる。
僕は西原さんより10歳若いけど、もう恋愛はしていない。なんか損している気分だ。だったらあんたもしなさい,って言われそうだけど、問題はそこではない。若いとか年寄りだとか、そんなことではなく、いつだってときめきは大事ってこと、それだけである。西原さんが好きになる男性(!)は同じジムに通う44歳。「彼とやりたい!」と言うけど、目的はセックスではない。(でも、出来たらやりたいのかもしれませんが)そんなふたりが友人として仲良くなる。こちらも年齢差のある友人である。
つまらない常識や、世間の目なんか気にしない。自分たちらしい生き方をする。それだけでいい。というか、それがいい。
かもめジムを舞台にして独立した5つの話が繰り広げられる。4話のラストで、かもめジムは閉鎖され、最後の5話では再び柏夢がお話の中心に戻ってくる。一応連作長編というスタイルになる。ジムは廃業して、老人たちの居場所は無くなるが、柏夢の恋は叶う。これはこれでハッピーエンドなのか。