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アルノー・デプレシャン監督の久々の新作だ。何の前置きもなく説明はないまま始まる。どんどん話は進む。いがみ合うふたり。何があつたらここまで敵対心を持てるとか、と思うくらいにいがみ合う。
どうしてこんなに険悪な関係になったのかはわけがわからない。映画を見ていたらやがてはわかるのだろうと思うけど、なかなか答えは出ない。わからないまま話は進む。
それにしてもいくらなんでもこれは酷い。決定的な何かがなくてはここまで険悪にはならないし、相手を拒絶しないはず。映画の終盤になってもまるでわからないまま。
姉と弟。断絶した関係はまるで修復されないまま、ほぼラストまで突入していくまさかの展開。そして、まさかの二乗くらいのいきなりの和解。あんなにもあっさりと修復するのか、信じられない。「ごめん」。「いいよ」。そんな感じ。
誰よりも好きだったから、誰よりも許せない。何が原因かわからないくらいに根深くて、説明不可能。
両親の事故もあまりに突然。しかもこんなことがあっていいのか、というくらいに。事故を起こした彼女や、トラックの運転手はなぜそんなことになったのか、それは描かない。
ただ、最悪はあるようだ。それだけ。だから受け入れるしかない。母親の死の後の父親の自殺もそう。ふたり同時の葬儀に弟は姉がいるから参加できないけど、近くで見ている。そんな冗談みたいなシーンが描かれる。
コメディではない。シリアスな映画だ。だけど、嘘みたいな話である。それを問答無用で見せる。和解の後での自殺未遂とか、空を飛ぶシーンだとか、唐突に挿入される。エピソードは断片として描かれる。つながりがぎくしゃくしている。もちろん故意にした。よくわからないまま、自分たちにもわからない激情がふたりの心を支配する。そんな激し過ぎる感情のぶつかり合いに魅了された。