習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

projectおふざけチャン『金羊毛と陰謀論』

2023-09-24 13:28:00 | 演劇

初めて見る劇団だ。いつものことだが、ドキドキする。先日見させていただいた「でめきん」のメンバーも参加している。

劇団としては4年振りの公演となるらしい。ちょうどコロナ禍に入り公演が出来ない日々を経ての今回の公演なのだろう。満を持しての公演だ。気合いが入っている。舞台からは作り手の想いがしっかり伝わってくる。90分を全力で駆け抜けていく。

 眠れない男がいる。羊を数えて夜を明かす。30万匹(たぶん、そうだったような)を数えた時、2匹の羊がやって来た。よくあるファンタジーの導入だろう。彼は羊たちに導かれて不思議な世界に旅立つ。ただ彼の旅は消極的でいろんなところから逃げているだけ。現実と幻想世界を往還しながら、不安な世界をなんとかしようとはするけどままならない。「羊は匹ではなく、頭だから、」と数え直す彼は現実逃避の手段であるはずの羊たちすら拒絶している。なんとなく仕方ないからついて行き、ドラゴンと出会ったり、金羊毛を探し出す冒険が描かれるが、彼の心は弾まない。

幻想でも現実でもそこには安心はないからだ。戦争をする現実世界から離れた幻想世界は現実を忘れさせてくれるわけではない。ふたつの世界の行き着く先には何があるのか。核兵器を発射した後にはすべてが終わる。わかっていてもやってしまう。愚かな人間たち。

一見エンタメ芝居の皮を被りつつも、実はシリアスな問題を真摯に扱うとても真面目な芝居だった。作、演出の太田裕介さんは冒頭に前説のために出てきて弾けるが、「チンゲが1本!」とか言ってる芝居なのに、作品自体は誠実で、決して安易でお気楽なエンタメではない。
 
 
 
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『二周目の恋』 | トップ | 『私の大嫌いな弟へ ブラザ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。