
6話からなる短編連作。30代の子供のいない夫婦と、その家にいる大型犬シャルロットとの日々のスケッチだ。小さな事件を介して彼らの生活が綴られていくのだが、まるで犬が彼らの子供のようだ。(成犬で大型犬だけど、ふたりは小さな子供のように彼女を愛しんでいる)
僕は生き物が苦手だから、犬を飼ったことはない。だから我が家には今はペットはいない。(実は以前娘が連れてきたイグアナの女の子がいたのだけど、彼女は5年ほど前に亡くなってしまった。もちろん、イグアナの面倒を僕は一切見ていない。)でも、この小説を読みながら、彼らの気持ちがとてもよくわかる気がした。犬って小さな子供に似ている。言葉はわからなくても、ちゃんとコミュニケーションができるのだ。幼い子供はだんだん大きくなるけど、犬は大きくなっても小さな子供のままだ。
散歩していて迷子の犬を連れてきたり、お隣に引っ越してきた家族の飼っていた犬を巡るお話があったり、犬と一緒に泊まれるペンションに行ったり、なんとドッグスクールでシャルロットがアルバイトしたり、知り合いの子犬を預かったり、そんなこんなのお話にちょっとしたミステリの味付けがなされていたりで、楽しく読める。
ただし、それだけ。それ以上の「何か」はない。軽く読めて、楽しめるのだから文句はないけど、なんだか少しもの足りない。この夫婦とシャルロットの交流は素敵で、彼らが彼女を大事に思う気持ちは確かに伝わってはくるのだけど。