
なんと3か月ぶりの劇場である。もう芝居を見ていたことを忘れてしまうくらいに、長い空白になった。最近、見る本数が減ってきたとはいえ、月に10本は見ていたのだ。こんなにも長い期間見ないで生きるなんてことはこの40年くらいなかった。
そして、ようやく劇場に戻れた。もうそれだけでうれしい。あみゅーずがその先陣を切ってくれた。1日限りの公演で、ワンステージ20名限定。3回公演。上演時間は1時間。途中休憩5分を挟んで、換気、除菌、消毒(?)を行うというスタイル。演劇公演ではなく、リーディング公演。でも、これは毎回のこと。この時期はリーディングで、秋に演劇という年2回というスタイルを近年は固持している。今回は2本立て。萩原浩の『殺意のレシピ』と、筒井康隆『佇む人』。今回は、シンプルなストーリーラインを持つエンタメ作品。軽やかなタッチで少しブラックな世界を見せる。いつもと少し違う。
でも、作品自体はいつもながらの凝りよう。ただのリーディングではない。ここには演劇としての楽しみがある。役者たちの芝居をそこにちゃんと展開させること。あみゅーずは、リーディングだけど、それをどう見せるかにいつも腐心する。今回は、なんと最初全員マスク着用で始まる。恒例の役者紹介を兼ねる冒頭のダンスシーンだ。(もちろん、本編が始まると、マスクはないけど。)
『殺意のレシピ』はある夫婦の食卓の風景。会話劇、お互いがお互いを殺そうとしている。それを3組の男女が見せる。表面と影、さらには語り部である男女も彼らのサポートをする。リーディングなのに、芝居仕立て。『佇む人』も同じだ。夫婦のお話に2人の男(老人と郵便配達員)が絡む。反政府的言動をした人間は木にされてしまうというお話で、木にされた妻と夫の物語。なんとも切ない。
この小さな2つのお話を丁寧に見せる。至福の1時間だった。途中、フェイスシールド着用してのアクションも用意されていて、楽しい。そんなふうにコロナ下での上演という状況を踏まえた上でのお楽しみすら用意する余裕も嬉しい。
これから、少しずつ、また芝居が見れるようになればいいのだけど、まだまだなかなか難しいことだろう。でも、まずこの1本を見ることができてよかった。ライブはいい。役者が舞台に立ち目の前で演じる姿がこんなにもうれしいなんて。そんな当たり前が戻ってくるのが待ち遠しい。