習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『幸福都市』

2020-07-15 22:47:56 | 映画

最近、ほぼ毎日1本ずつ、Netflixで映画を見ている。あまりにいろんな映画やドラマがありすぎて、困る。あまり、考えないで選ぶ。最初はピンポイントで攻めていたけど、だんだんもうどうでもよくなってきた。あまりにいろんなものがありすぎるって、なんか、たいへんだ。

さて、この映画である。これは時間が遡る映画だ。不思議な感触の映画だ、3つの話は遡行する。最初は近未来の台湾から始まる。ここで描かれるのは、今の彼のできごと。ひとりの刑事のお話だ。最初は、これはなんとSFじゃないかと驚く。『ブレードランナー』を思わせるタッチは悪くはない。SFノワールなのだが、で、なんなんだ、と思うところで、話は終わる。これではSFである必要はない。そして、ここからはSFではなくなる。

そして、オムニバスだったのか、と思う、2話目は彼の若かりし日のこと。彼がなぜこんなことになったのか、そのきっかけとなる事件が描かれる。このエピソードは現代の台湾が舞台になる。3話目は少年時代。過去の台湾。10代の彼と、彼を捨てた母親との再会。どうしてこんなことになったのかを説明するためではないけど、今の彼がどういう経緯から生まれたかを描く。そこに何の意味があるのか。よくわからない。

自殺するシーンから始まる。高層マンションの屋上から飛び降りる。地面にたたきつけられる。3つのドラマを経て、エピローグの幸福だった幼年期の一コマまで。110分ほどの映画は、一人の男を凝視する。

タイトルとはうらはらに、不幸な男の人生が綴られていく。どうしてこんなことになるのか。本人にもわからない。わかるはずはない。運命だとかいうつもりはない。でも、ここまで不幸にならなくともいい。自分で引き寄せているのではないか、と思うくらいだ。2018年の台湾映画。こういう映画が作られていたのか。でも、日本では公開されるはずもない。地味だし、完成度は高くない。何を目指したのかもよくはわからない。でも、なんだか惹きつけられる雰囲気があり、最後まで見てしまった。ふつうなら埋もれるはずのこんな映画が、Netflixのそこかしこに転がっている。


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