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スパイク・リーの新作が劇場公開もなく、Netflixオリジナル映画として配信されている。2時間半の大作である。しかも、ベトナム戦争を扱った戦争映画なのだ。そうこれはスパイク・リーによる『地獄の黙示録』だ。
埋蔵金と戦死した隊長の亡骸を探しにベトナムを45年ぶりに再び訪れた4人の元軍人たち。彼らが見た現実。平和になった今、のはずなのだが、そうじゃない。安易な想いで観光気分でやってきた。あの頃の悪夢がよみがえる。埋められたままの地雷がそこここにある。地獄は今もある。ベトナム帰還兵を主人公にした映画なんて、近年作られなくなった。70年代から80年代にかけてあれだけ作られたにもかかわらずそのなかには、黒人を主人公にした映画はなかったのではないか。今頃になって、ようやくスパイク・リーが立ち上がる。過去の話ではなく、「今」の話として。
最初のニュース映像の強烈さ。本気の映画だということが伝わる。これはスパイク・リーの怒りが全編にちりばめられた映画だ。だけど、その後、観光映画で、アクション映画のようなタッチで、軽快に始まる。バランスが悪すぎる。シリアスというわけではないけど、実はこれは重い映画だ。だから、タッチは軽快さを持続する。この混沌を見せたかったのかもしれない。金塊を巡る騒動や、いろんな人たちが入り乱れていくところから、やはりバランスの悪さは拭えないけど、この強烈な映画は一見の価値がある。今につながる現実を、平和に見えて、それどころかとんでもない現実がそこにはある。過去のものではない、ベトナム戦争から続く今はここに確かなものとして描かれる。傑作だとは思わないけど、凄い映画だ、ということは伝わる。