とうとう7冊目になる。そしてこれで完結する。いつまでも続いてもいいくらいに甘くてかわいい、そして心地よい作品だった。軽い気持ちで読めるけど、ちゃんと心に残る。そんなスペシャリテ。のはずだった。だけどここでも意外な展開が待ち受ける。
先週七月隆文の渾身の大作『天使の跳躍』を読んだばかりである。この本もほぼ同時に出版された。2冊はまるで違う作品だけど、結果的に彼の個性が際立つ連作になっていることに驚く。こちらは以前からの彼。あちらは新しい可能性を開花した彼。別々の作品に流れる優しさは彼ならではの個性なのだ。天才棋士とロートル棋士の最後の戦い。それはこの作品の颯人のパリでの世界大会(パティシエのワールドカップ)での戦いに通じる。さらには未羽の大学受験とも。誰もがそこで自分と戦っている。そんな姿を今の七月隆文は描きたい。作家としての彼もまた今同じように戦っている。この区切りとなる2作品がその証拠である。
7冊目にして、完結編になる本作は彼のキャリアの第1期の締めくくりになる。ほぼ同時に読んでいた乾ルカ『灯』と同じでこれも受験がらみの高校生活の最後をクライマックスに置いて描いている。まるで違うタイプの作品なのに、ふたつがごっちゃになってくる。なんだかそんなことも楽しい。