札幌の高校生の女の子、相内蒼。他人とはつるみたくない。孤独が好きということではないけど、関わり合いを持つのが嫌。「この世界を,私はひとりで生きたい」と願う。そして、将来、夜間街光調査官になりたい。学校にはスカートでは行かない。頑なにスラックスを履く。みんなと私は違うというアピールではないけど、結果的にそうなる。
そんな彼女の高校生活を描く。関わり合いたくないのに関わりを持つことになり、苦しみながらもなんだかよくわからないまま高校生活をエンジョイしている。幼なじみとの再会。小学4年の時転校してから会うことがなかったふたり。彼女に夜間街光調査官のことを教えてくれた男の子といつも優しくしてくれた女の子。高校で5年ぶりに再会したこのふたりを通してまさかの高校生活が始まった。
クラスには仲良くしている子もいるし、グループの一員として認識されるし、なんと野球部に入部して、活躍している。チームのエースは幼なじみの男の子というまるで青春映画のような状況だから、まわりからはふたりは付き合えばいいと囃し立てられる。迷惑以外の何物でもない。文化祭、公式戦初出場、修学旅行(彼女は行かないという選択をする)とイベントが山盛りの日々を過ごす。もちろん本人には苦痛でしかない。
母ひとり子ひとりの家族である。父は生まれた時からいない。だけど寂しくはない。だってひとりがいいから。母だっていらないくらいに。母親は仕事が大事で娘より仕事。だからほっとする。だけどたまに構いたくなるみたいでうざい。ほっといて欲しい。
こんな屈折した女の子のお話をさらりとしたタッチで綴る。暗い小説ではなく、どちらかというと明るい。いや、かなり明るくてどこにでもある青春小説が描かれる。高校時代の3年間のスケッチである。自分が何をしたいのかを見つめる時間。大学受験までが描かれる。部員が8人しかいなかった野球部は地区大会念願の一勝をする。
こんな高校生活を通して彼女は旅立つ。夜間街光調査官なんて職業はない、と知らされても(自分でも薄々気づいていたが)やはり夜間街光調査をしていたい。彼女は自分の夢を見つめる(見つける)ために大学に行き、母親からも(北海道からも)離れる覚悟をする。