習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『イノセンツ』

2023-08-19 07:21:00 | 映画

なんとこれは大友克洋の『童夢』をモデルにしたという(原作ではない)ノルウェー製のサイキックスリラー映画だ。監督は『わたしは最悪。』でアカデミー脚本賞にノミネートされたエスキル・フォクトの監督第2作。

団地を舞台にした4人の子どもたちの夏休みの日々が描かれる。ここに引っ越してきた家族。9歳の少女イーダは、重度の自閉症で言葉を発さない姉と共にこの新しい街で暮らしていく。ただ母は姉さんにかかりきりでイーダは放置したまま。だから姉さんに意地悪することも。

団地の公園でひとりの男の子と友だちになる。彼はささやかな超能力を保つ。落下する石の軌道を変えることができるのだ。その能力はふたりの秘密。もうひとり、女の子とも出会う。彼女はイーダの姉の心が見える。ふたりの不思議な能力を持つ友人と姉妹は感応する。4人の夏が始まる。

映画はホラーではないし、エスパーによる超能力バトルにもならない。だが、ほんのちょっとした悪意が事故を引き起こし、殺人に至る。何が起きるか、わからないまま話は静かに進展する。特殊な能力を持て余す男の子。彼の内に秘めた暴力が暴走するのをなんとか食い止めるが何の能力も持たないイーダ。橋から突き落とすシーンは衝撃的だ。暴力には暴力で立ち向かうしかないのか。

終盤の展開がいささか弱くて映画は尻窄みになるのが残念だが、派手なだけのアクションや荒唐無稽なサイキック・バトルにはならなかったのはよかった。ただ納めどころが難しいのかな。ラストの持っていき方にもう一工夫が欲しい。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 千葉雅也『エレクトリック』 | トップ | 櫻いいよ『子戸森さんちはこ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。