
1995年、宇都宮の高校生。黎明期のインターネットに繋がることから始まる物語。高校2年の達也と無邪気な父親。彼らの日々がさらっと描かれる。それを見守る。
特別な時代。世紀末、阪神淡路大震災、オウム真理教があって不安な時代に、彼らは日常を送った。これはそんな日々のスケッチだ。
家族のこと、街のこと、もちろんネットで繋がったゲイ・コミュニティ、父の仕事、アンプの制作、いろいろ要素が散見するが、それがどこにもたどり着かない。曖昧なまま終わる。
ただ、いつかきっと東京に行く。それは決まっている。そして、たぶんそれは高校を卒業して大学生になった時に、だろう。だけどそれまではここにいる。そんな当たり前のこと。
だが、彼はもう東京も宇都宮も判別はつかない。東京ですべてが起きている。(はず)だが、果たしてそうか? ここでの退屈な日々はもしかしたら、2年後の東京での日々と大同小異かも知れない。