
瀬戸内寂聴の最期の愛人だった男の告白。敢えて彼女のことをJと記載することで、ある種のフィクションを加味したことにする。ノンフィクションじゃない。小説だとアピールする。まぁ、あまり気にしないようだけど。
作家は(延江浩でなくてもいい)は母袋(語り部であるJの愛人)の話に耳を傾けながら、Jのこれまでの軌跡も追いかける。85歳の彼女と母袋が出会ったのは37歳の頃。それからの数年間が描かれる。
Jは怪物だ。彼は恋愛モンスターに取り込まれて彼女の虜になる。自分の祖母くらいの女性とのセックスが描かれる。おぞましい。だが、平然とそれも描く。精神的なものだけではなくちゃんと肉体的なつながりも描く。生々しい。
実在した大作家を背景にして、彼女と関わった男の告白を聞きながら、それを小説として構成していく。23の短い章が連なり、200ページほどの作品になる。実名と仮名の(実在する)登場人物がふたりの話に絡む。虚実皮膜のドラマが提示するのはJという化け物の真実だ。事実を超えた断片の連鎖がそれを剽窃する。