
他人に興味がない。人とつきあう必要も感じない。できないことはできないと言う。やりたくないことはしない。なんだかめんどくさい奴、と思うだろう。でも、そんなの彼女の勝手ではないか。別に誰かに迷惑をかけているわけではないし。でも、寂しくないのか、とか、可哀そうにとか、周りからいらぬおせっかいや干渉をされる。余計なお世話だ。ただ、自分のペースで生きていたいだけ。
すごいな、と思う。強いな、とも。なかなかそこまではできないだろう。どうしてもどこかで妥協してしまう。周りの目を気にしたり、少しは合わせなくてはやっていけない。心のままに生きるというのはカッコいいが、ただのめんどくさい人でしかない。必要以上の感傷は人生の荷物になるから、だから人とはつきあえない。別につきあいたい人もいない。いいのか、それで。余計なお世話だろうけど。では、ひとりで何がしたいのか? したいこともない。じゃぁ、何のために生きてるのか。
三葉雨音26歳。人に合わせられない(周囲の溶け込めない)から仕事をやめてしまった職場の後輩がいた。その後彼は失踪中。そんな彼を見て、自分も仕事を辞めてしまった。無職になる。
「お見舞い代行業」(どんな仕事だ? と思うでしょ)にスカウトされて働くことになる。そこで出会った人たちとの交流を描くハートウォーミング、かというとそうでもない。彼女は交流なんかしない。ただただ淡々t仕事をこなすだけ。クールというよりも、先にも書いたように人に興味がないだけ。生きていくために働かなくてはならないから一応働いているだけ。でも、それだって依頼がなければ、しない。
お話はそんな彼女が様々な人たちとの出会いから心を開いていく、とかいうよくあるパターンにはならない。もちろんずっと変わらない、わけでもない。変化はある。ただし少しだけ、である。そんな微妙な変化をどう受け止めるのか。この小説をもどかしいと思う人もいるだろう。だが、この微妙さが僕には実にリアルで興味深かった。