習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『音楽』

2021-12-23 09:35:31 | 映画

こんな素朴なアニメ映画があっていいのだろうか。いや、もちろんあっていいのだ。それどころか、あって欲しいくらいだ。だから見ながらとても楽しかった。もちろんこれが凄いと大騒ぎするほどのものではない。それどころか、素朴すぎて「いいのか、これで、」と思うくらいだ。もちろん、これでいい。これがいい。

主人公の3人組は俗にいう不良なのだろうけど、別に悪さをするわけではなく、自分たちだけで、好きにしているだけ。学校の屋上でタバコを吸ったり、売られた喧嘩を仕方なく買ったり、買わなかったり。たまたま手にした楽器(それが何なのかも知らない。ギターではなくベースです、と仲間に教えられる)から、興味を抱いてバンドを組むことになる。ポロンポロンとつま弾く。誰かに教わるわけでもなく、ただ気の向くまま、優雅にかき鳴らしている。そんな3人の奏でる音楽は音楽とはいえないレベルだけど、本人たちはとても気にいっているから、それでいい。

たまたま、高校内に同じ名前(このバンド名だって拘りがあるわけではなく、なんとなく付けただけ)のバンドがあると知り、彼らと付き合うことになる。バンド名は「古武術」。同じ名前のはずのバンド名は「古美術」。勘違いだけど、そこからやがて、コラボしたりして、楽しい。町内会のロックフェスティバルに参加することになる。なのに、主人公の彼はもう音楽に飽きたから、やらない、という。

このいいかげんさ。というか、自由奔放。今、彼はベースを手放して、なぜか縦笛に夢中。だから、クライマックスはフェスに縦笛で参戦。というか、フェスは町の公園のかたすみで、10数人ほどのお客を集めて開催されている。(もう少しいたかも)

描かれるのは、そんなこんなでどうでもいいようなことだけ。たった71分の映画だ。だけど、この衝撃は半端ではない。こんな映画があっていいのだ。いや、あってくれて嬉しい。岩井澤健治監督が7年の歳月をかけて手作りで1枚1枚丁寧に手描きでひとりで作り上げた至高の作品。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『マトリックス レザレクシ... | トップ | 『過去はいつも新しく、未来... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。