中学2年の時、クラスメートを殺した少年。10数年後、彼と再会した同級生だった女性。彼女はもちろんあの事件の現場に居合わせた。「なぜ彼は殺したのか」は、なかなか明らかにされない。今とあの時が交互に描かれていき、運命の瞬間へとカウントダウンしていく。
「守るべき命だ」というラスト1行まで、緊張感が持続する。何があったかはもちろんのことだが、事件を経た後の、その後のそれぞれの人生がゆっくりと描かれていき、再生につながるドラマの、その静かなタッチに魅了された。
宮木あや子の『校閲ガール トルネード』もおもしろい。シリーズの3作目となるが、ようやく編集の仕事にまわされた悦子の奮闘ぶりに元気を貰う。自分の好きなことならどんなに大変でも頑張れる、というわけではない、ということが描かれる。許容範囲を超えるハードワークは好きなことでも無理。そんなあたりまえのこともちゃんと描かれる。もちろん、それだけではないけど、ね。
ここからは、余談と言い訳だけど、なんと、この1週間で(上記の2冊を含む)8冊の本を読んだ。おかげで、感想を書くような時間はなかった。本は普段なら通勤の往復以外に読むことはないけど、睡眠時間を削ってでも、読書したのだ。
その原因は転勤だ。3月31日までに借りていた本を読み切るためである。内示から2週間、怒濤の日々だった。なのに、そんなバカなノルマを課したのは、今手元にある本は、今しか読めないかもしれないと思ったからだ。転勤に伴う仕事に忙殺されているのに、その上、本も読むなんて、と、自分でもどう考えてもバカすぎるとわかっている。でも、やってしまった。おかげで体はボロボロだ。しかも、この週末は芝居や映画もかなり見た。そんなこんなで何とか31日にすべての業務を終えたのであった。